「ドラマよりパフォーマンス」国宝 KenJeeさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマよりパフォーマンス
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総じて高い評価を得ているようで、期待して見に行ったが、思ったほどではなかったというのが正直なところ。任侠の世界から歌舞伎の世界に飛び込み、女形として芸道を極めた男の一代記で、主人公喜久雄を演じている吉沢亮、ライバルとなる俊介役の横浜流星ともに、歌舞伎の所作・演技や舞踊に修練を積んでいることがうかがわれた。
ドラマとしては、血筋と才能のせめぎ合いが軸となるが、喜久雄が俊介を押しのけて『曽根崎心中』のお初役に、養父の花井半二郎(渡辺謙)に指名された時も、両者の能力の違いがそれほど分からず、単に半二郎にひいきされただけのようにしか見えない。その采配に落胆した俊介が、喜久雄の恋人であった春江(高畑充希)と十年間失踪してしてしまうが、春江の心が喜久雄から俊介に移った経緯がよく描かれず、失踪していた十年間を俊介たちがどう過ごしていたのかも分からない。
総じて「血筋(家)と才能」という構図を浮き立たせようとすると、両者の能力を差別化しなくてはならず、そうすると舞台上で二人が見せる芸が不調和なものになってしまうため、それができないというジレンマが全体を貫いているように思われた。主役級二人が見せる演技、舞踊は魅力的だが、ドラマよりもパフォーマンスを取るという選択がされているのは残念だった。
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