「歌舞伎の映像美は圧巻」国宝 nahahaさんの映画レビュー(感想・評価)
歌舞伎の映像美は圧巻
惜しい。
こういう形で歌舞伎の世界が映像化されたのは初めてではないだろうか?その迫力は凄まじく、演じる2人の熱演も素晴らしいの一言。印象的な場面も多く、実の息子を差し置いて師匠の代役に抜擢された主人公が、本番直前に恐怖のあまり口走るセリフなどは、まさに鳥肌もの。
だからこそ、脚本の荒さが目についてしまう。前半の修行時代はともかく、中盤以降は場面ごとの飛躍が大きすぎて、登場人物の心情が伝わらない。主人公が極道出身という極めて特異な要素も、途中で没落させる「ための」単なる伏線にしかなっていない。どん底時代に救いの手を差し伸べた田中泯(役名忘れた)が、そもそもなぜあのタイミングで主人公を呼び出したのか、全てが説明不足なまま強引に時代だけが進んでいく(そういえば途中でどん底時代に一緒になった女の子、結局どこに消えたんだろう?唐突に現れていつの間にかいなくなってた...)最後に再会する娘との会話も、本来であれば「芸を極める事の業の深さ」という、この作品の根本テーマを象徴する場面のはずが、そこまでの重みは一切なく、単なる「ちょっと良い話」にまとめてしまっている。
結局は豪華な娯楽作品に過ぎず、その娯楽の作り込みが甘い、と言わざるを得ない。歌舞伎の映像が圧倒的なだけに、結局は歌舞伎というコンテンツが持つ歴史と伝統の重みに寄りかかっただけの作品になっている気がする。「美とは何か」「その為に人はどれだけ業を背負えるか」といったテーマをもっと掘り下げていたら、傑作になったかも知れない。
最後にもう一つだけ苦言を言えば、晩年の主人公の老けメイクがあまりにも適当すぎる。今どきいくら日本映画とはいえ、もう少し何とかなるだろうに、何で朝ドラレベルでお茶を濁そうとするかな....だから日本映画はダメなんだよ。もっと本気でやれよ、まったく。
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