「不条理への反抗が、歌舞伎を「国宝」に昇華させる」国宝 あんばさんの映画レビュー(感想・評価)
不条理への反抗が、歌舞伎を「国宝」に昇華させる
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観終わって最初に感じたのが、「これは、人生を懸けて不条理に反抗する物語なんだろうな」ということ。
喜久雄の第二の人生は、父の仇討ちを失敗するところから始まる。身寄りのない極道の子供として育ち、夢や目標、幸福を掴みかけても、すんでのところでするすると手から離れていく。まさに不条理の連続のような人生。
しかし喜久雄は、常にその不条理の只中にいながら、境遇を言い訳にせず、唯一の武器である芸を研ぎ続ける。彼は、常に目に執念のようなものを滲ませ、人生の不条理に向き合い、反抗する。ストーリーが進むにつれて、彼の言動はもはや常軌を逸しているとしか言えないものになっていくが、気づけばいつの間にか、観客は彼に釘付けにされてしまう。
彼の狂気を際立たせるのが、この作品の空気感。
この作品の空気には、常に歌舞伎界の因習が纏わりついている。大抵のシーンが歌舞伎の世界か裏舞台。それ以外のシーンでも歌舞伎界を連想させる場面が多い。そんな作りだからか、3時間ほぼ全てに渡って、常に薄氷の上を歩くような張り詰めた緊張感がある。
しかし、それが一層喜久雄の狂気を鮮やかにする。後ろ盾もなく、いつ消えてもおかしくない世界にいながら、常に運命に反抗し続ける彼の一挙手一投足には、狂気的なエネルギーが宿り続ける。
そしてそのエネルギーは、舞台の上で「歌舞伎」として、艷やかに美しく解放される。
その集大成が、最後の「鷺娘」。
だからこそ、人間国宝は「美しいバケモン」なんだろうな。
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