劇場公開日 2025年6月6日

「これほどの作品には滅多に出逢えない」国宝 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これほどの作品には滅多に出逢えない

2025年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

人生は舞台、そんな言葉が脳裏に浮かぶほど、本作はあらゆる場所に舞台的状況を出現させる。観客がひしめく劇場はもちろん、雪景色の中では窓越しに惨劇を見つめ、稽古場のみならず川辺や病室にも舞台は現れ、かと思えば、場末の宴会場、それに誰もいない屋上でただただ自分のためだけに踊る場面もある。かくなる経験を重ねながら、才能に魅入られた青年が、血に見出され、血に呪われ、芸事の道をひたすら歩み続ける。その姿は圧倒的に孤独で壮絶。兄弟同然の二人が互いの存在に身を反らし、しかし鏡のように向き合い、照らし合う様も大きな感動を呼ぶ。何のために踊るのか。本作は3時間かけてその答えを探し求める果てなき旅路だ。圧倒的な存在感で役を生きた二人。その若かりし頃を担った二人。李作品の柱たる渡辺。それに手のひら一つで舞う田中。誰もがあまりに見事。歌舞伎の音階を損なわず、深いところでドラマ性を奏でる劇伴も胸を揺さぶってやまない。

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牛津厚信
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