「これぞジャパニーズカルチャーのオンパレード。」国宝 竜さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞジャパニーズカルチャーのオンパレード。
結論から言うと、最初の1時間で十分。
この1時間にこの映画の良さが全て詰まっている。
歌舞伎、芸者、反社会、入れ墨。
舞台も京都、大阪、九州。
外国人が日本を好きになる要素がふんだんに散りばめられている。
ストーリーもサクサク進んで、日本の古き良き文化がなぜ人々の心に響くのかがよく分かる。役を演じていては人に感動を与えないのだ。
魂が乗り移ることが大切。その人物の心情や時代背景など全てを捉えてこそ表現できる世界なのだと。渡辺謙が言うから説得力が違う。現に曽根崎心中でお初の魂が乗り移ったかのような吉沢亮の演技は鬼気迫る者あり、自然と涙が溢れた。
ここがクライマックスであったなら、★5で終わった。
しかし、今回の映画は
最初の1時間が一気に盛り上がった反面、次の1時間でどん底まで落とされてしまう。そして最後の1時間は、着地点をさぐるべくウロウロと迷走する展開。
何を言いたかったかと言うと、人間国宝になるためには、周囲の人々を犠牲にしてようやく辿り着けるものなのだよと言うこと。
そのために中盤〜後半にかけて2時間も使うのは勿体ない。
最初の1時間に紆余曲折を盛り込んで、最後は2人の主役が見事に国宝と呼ばれるような演技を見せて、ハッピーエンドで終えられたらスッキリした映画になったのに。
高畑充希が、アゲマンであると思う。
吉沢亮といるときはハッピー、流星に奪われるとツキに見放され下落へと突き落とされる。そしてミツキを手に入れた流星が活躍する。
歌舞伎の良さだけでは物足りないから、あれもこれも入れて、ドロドロ劇にしたのは、まるで見事な風景画を描き上げた後に黒インクで塗りつぶした感じように、後味の悪い作品になってしまった。
全てを含めても、歌舞伎というものの素晴らしさが伝わるので観る価値がある。魂と魂のぶつかり合い。一つの作品を作り上げるために誰もが真剣。これをこの短時間で、2人の主演が演じきっていること。本場の人たちが観ても、誰も文句が言えないほどの出来栄え。これを観るために最初の1時間を観に行って欲しい。
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