「絶賛、ほどじゃないけどとてもよかった」国宝 kab_mtrさんの映画レビュー(感想・評価)
絶賛、ほどじゃないけどとてもよかった
いまコミカライズの連載も読んでるので、ビジュアル解釈の違いに興味もあり、発表以来、楽しみにしていました。
とてもよかった。
ただ、レビューで書き込まれている絶賛ほどではないのは、映画版オリジナルの屋上シーンでピークアウトしたと感じたからです。あのシーンは本当に素晴らしい。ちょっと涙が出ました。だからこそ、その先に消化感が否めませんでした。
例えば綾乃のシーンはないほうが好み。
映画版は喜久雄に焦点をしぼり、かつ徳ちゃんがいないことで、喜久雄の孤独が際立ちます。別の血を持ち(梨園の血がないが強調されるけれど極道の血は流れている、それゆえのスキャンダル)、なのに才があるから排除され、それでも芸に没入した結果、“化け物”のようになった孤高の存在。それは観客以外に理解されなくていいと思ってしまった。徳ちゃんの「正月」セリフを誰かに言わせないといけないからなのはわかるんだけども。
鷺娘も劇伴がなんかやりすぎじゃないですかね。あそこは邦楽を大音量にしてもいいのではとか思いました。
あと、キャスト発表時から思ってたけど、渡辺謙に女形役はやっぱり無理があると思います。吉沢亮と田中泯が普段の所作から女形かもしてるから余計に感じてしまう。
とはいえ、全体には満足なのです。喜久雄のお初が強くて、そのシーンと俊ぼん、春江のシーンを重ねる演出は、消える二人の気持ちが私的に推し量りやすかった。歌舞伎の有名演目を登場人物の心情と重ねる多層の構成は映画ならではだと思います。
それにしても吉沢亮、つくづく顔がいいですね。横浜流星も美形なのに、それが霞んでしまう。あの顔だから万菊さんの「顔に喰われる」が刺さりまくり、彼もまた喰われそうな顔を乗り越えている俳優なのではと重ねてしまいました。
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