「喜久雄を取り巻く女たちに憤る」国宝 oimoさんの映画レビュー(感想・評価)
喜久雄を取り巻く女たちに憤る
歌舞伎のシーンはとても良かったです。
ただ2人の関係性の描写や、転機となるエピソードの内容描写があっさりし過ぎていて、原作を読んでいないと物足りなく感じるのかと思いました。
しかし、後々思い返すと余白がある分、色々と想像させられました。私は特に、喜久雄に付いてきた春江が俊介と駆落ちしてしまうのが許せませんでした。春江はただ目の前で弱っている男がほっとけなかっただけで、うまくいっていない男を支えるのが好きなだけの女だと思いました。喜久雄を追ってついてきて、喜久雄からの結婚しようかという言葉も断って日陰の女として支えるような事を喜久雄に言っておきながら、いざ目の前で俊介が弱みを見せると簡単に乗り替える女です。喜久雄だって頼れる親も歌舞伎仲間もいない不安の中なんとか己を奮い立たせ頑張っているのに、親や周りの環境に恵まれている俊介がうまくいってないからといって喜久雄を捨てて俊介に付いていき、子供まで産みいけしゃあしゃあと戻ってきました。俊介も喜久雄の女を奪っておいて悪びれもなく春江にも会ってくれと喜久雄に言います。俊介は戻ってきても母親や歌舞伎界に歓迎されます。喜久雄は俊介が出て行ったあと、誰からも支えて貰えず独りでたえてました。もし、春江が側にいてくれたら、春江が喜久雄のプロポーズを受けて結婚していたら、俊介に乗り換えなければ俊介も出て行ったとしてももっと早く戻ってきていたかもしれない。そう思うと春江が憎くてたまりません。
それと、芸子の藤駒も身勝手だと思います。最初から2号さんで良いといい喜久雄に真剣に向き合わず娘を産みます。娘はもちろんどうして父親が自分たちを大切にしないか疑問を持ち父親を憎みます。でもそれは母親の藤駒の責任だと思います。最初から正妻になる気もなく2号さんでいいからと喜久雄にいいよったからです。(自分では相応しくないという理由より芸子を辞める気はなく正妻になる覚悟もなく喜久雄という甘い汁だけ吸いたいという風にしか見えない。)子供はそんな母親の事情とは関係なく父親を求めます。そこで父親に相手にされず父親を憎んでしまう。でもそれは藤駒の身勝手さが生んだものなので喜久雄に怒りをぶつけるのはお門違いだと思います。
だから、喜久雄にいいよりながらも真剣に向き合おうとしなかった女たちに憤りを感じます。もし、喜久雄がきちんとした家庭を持ち妻や子に支えられていたら、もっと違う結果になっていたと思う。彰子へ汚い手も使いたくて使ったんじゃない。そうせざるを得ないまで追い詰められていたんだ。(彰子もその後どうなったか分からないので気になった。)
ただ男女の愛情ではなく喜久雄と俊介の2人だけの感情、簡単なライバル関係ではない絆には魅せられました。
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