「一般的イメージのファンタジー世界としての歌舞伎界」国宝 Kさんの映画レビュー(感想・評価)
一般的イメージのファンタジー世界としての歌舞伎界
なぜ松竹ではなく東宝の配給なのか?疑問は上映すぐ明らかになった。いくら60年代とはいえ歌舞伎と反社のつながりを描くとなると松竹的には及び腰になるだろう。
歌舞伎とヤクザ、厳しすぎる稽古、花柳界、お家騒動、舞台の上での死、浪速恋しぐれなどなど、歌舞伎界(梨園)のスキャンダラスな部分をまるでファンタジーのように3時間。ないのはホモセクシャルくらいか。
舞台裏、楽屋裏は相当リアルに描いていますね。松竹の後ろ盾なしでよくぞあそこまで描いたと思います。
舞台シーンも舞踊をメインにしたのは上手くいってます。細かいカット割で綺麗な形になった所をつないでいる様子。役者の努力もあるでしょうがごまかってました。映画の力ですね。
ただ、『曽根崎心中』のシーン、特に台詞はさすがに【国宝級】はおろか歌舞伎俳優のそれではなかった。徳兵衛がお初の足にすがりつくシーンの為の『曽根崎心中』は上手い演目選びだとは思いましたが、、、
渡辺謙が立女形というのはちょっとリアリティがなすぎましたね。ケンワタナベのお初は凄いだろうな。
女形が主役の作品なので女形の精神性に対する言及がもっとあった方が良かった。
万菊役の田中泯さんが女形の物腰の柔らかさとそれゆえのある種の怖さを見事すぎるほど体現していたので、なおさら吉沢亮が【国宝級の女形】というのは説得力がかけていたと思う。
一種の職業映画でもあるが、何年も現場を離れた人間が割とアッサリと戻ってしまう所も描写が足りない気がする。失った信用を取り戻す事は並大抵の努力ではできない。
半半コンビの復活の流れはモンタージュというには少々雑過ぎではなかったろうか?
気になる事は結構あったが3時間近く退屈せずに観られたし、海外に出しても恥ずかしくないレベルで歌舞伎が描けていたと思う。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。