「1人の男の生き様は重くても美しい」国宝 yumekoさんの映画レビュー(感想・評価)
1人の男の生き様は重くても美しい
思い入れが強くてなかなか感想書けなかった。
全てが美しい。そんな印象。
1人の芸の道にかけた男の人生。
苦しい生き様と相反する舞台の上の美しい女方。
歌舞伎が好きなので、公開前からとても楽しみだった。
だから公開すぐに観に行った。
ただ、歌舞伎が好きなだけに、心配だった。若いお2人が、どこまで歌舞伎役者に近づけるのか?そこに違和感があると、ストーリーに入り込めないのではないかと…。
そして2人の舞台で、そんな事が全くの杞憂だったと。この2人、いったいどれだけ血と汗が滲むお稽古を重ねてきたんだろう!と思うと、もう涙が溢れていた。お2人が素晴らしかった!歌舞伎ファンとして、ありがとうございます!って気持ちになった。
周りを固めるベテラン俳優陣も素晴らしい!キャスティングが最高!渡辺謙さんの存在感がワールドワイド。田中泯さんの存在感!何より寺島しのぶさん!歌舞伎のお家にお生まれになって、きっといろんな想いがあったに違いない!セリフのひとつひとつに人生経験の重みがあった。歌舞伎ファンの人は感じることができたと思う。
上映時間3時間に不安はあったけど、始まったら最後まであっという間!グイグイとひきこまれた。
始まりのカットが、背中の首元にに白塗りを塗るアップ!ここから始まるって!女方だし!いろんな想いが。
最初のお正月の長崎の宴会シーン。インテリアも素敵だし、雪の日本庭園も素敵だし、子供達の歌舞伎が、もう、本当に美しい!永瀬さんの眼差しカッコイイし、エマさんキレイ!
高畑充希さんも大好きな俳優さん。情にあつい九州女を上手に演じられていた。子供の頃の俊介と喜久雄のお2人の役者さんも、目線や姿勢がとても美しく、将来が楽しみ!
ストーリーは男2人友情や親子の気持ち、歌舞伎という特殊な世界、女たちの気持ち、うまく表現されていて良かったと思う。小説も読みたいけど、なかなか時間取れない。
春江が俊介と生きていくことを決めたのは、2人とも、芸の道が全ての喜久雄には、心は近づけないという共感があり、それも2人が慰め合い惹かれあった理由のひとつかもしれない。
そして最後の喜久雄と娘の思いがけない再会。彼女の言葉が、少しずつ流れるところが良かった!最初の辛いセリフから、父を認めるところまで、うまいな。
とにかく全体的に映像がとても美しい!新鮮なカット割り!ドアップがたくさん!そのアップに耐えられる美しい吉沢亮さんと横浜流星さん!もう美しい!すべて!
これは劇場で観ないと素晴らしさが全ては伝わらないから、見逃さないでほしい!いろんな人に伝えてるけど、映画館苦手な人も多い。もったいないな。人気だから見たくないって人も。観てから考えればいいのに。
インテリアやファッションも好き。細かいこだわりを感じた。
そもそも、私が歌舞伎が好きなのも、所作が美しいから。美しいものが好きなのだ!
エンディングの歌も、最初話に観た時は女性かと思った。美しい。メロディも素敵。
雪のシーンで始まり、舞台の雪のシーンで終わる。なんて素敵なの。鷺娘、お客様のエキストラで参加したかった!
これがきっかけで、歌舞伎人気が出ているのは嬉しい!
ある歌舞伎役者さんが、個人ブログで細かい点を批判されていたけど、ドキュメンタリーでもないし、アート作品のようなものなのに…。歌舞伎界の方という立場なのに、歌舞伎ファンとしては、とても残念な気持ちになった。
しかも中村鴈治郎さんがインタビューで話されていたけど、化粧が崩れたままの最後も、監督と話し合って、あのような演出になったと。あの鴈治郎さんが指導に入られてるのに、批判の気持ちは心にとめてほしかった。
特に、歌舞伎界の方々には、いろんな思いがあるにせよ、今、言うことではない。ここは批判的なことは心にしまって、盛り上げる方向を向いてほしい!そんな発言を心がけてほしい!観客の高齢化がすすみ、コロナの影響もあって、なかなか集客が大変な歌舞伎を盛り上げる絶好のチャンスなのだから!
と、歌舞伎好きの私は熱くなってしまう作品だった。
そして、間違いなく、吉沢亮さんの代表作になり、日本舞踊をここまで学んだ吉沢亮さん、横浜流星さんは、芸の幅が広がったし、美しい所作を習得して、今後のご活躍もとても楽しみ!
歌舞伎ファンとして、本当にありがとうございます。
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