「娘。」国宝 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
娘。
原作を読んでいないので、自分なりの補完としてこうだったら凄いと思う想像での解釈です。
映画として、解釈の余白を残してくれたものとして書かせていただきます。
父親に捨てられたと、憎しみで生きていたものの、その芸には感動せざるを得ず、その父と直接会話をする日を夢見てカメラマンの道を選び、やっと対面した父にその積年の複雑な感情を伝える事が出来たのだと思い、僕の心のダムは決壊しました。
芸の道、表現者の道はただただ厳しく、果てしない道。
実父の仇を討てなかったものの、芸で仇を討つという一心だけでひたすら前に進む。
その時々に手を差し伸べてくる女性には甘え、その人生を吸い尽くし、また前に進む。
芸とは命を削るもの、自分の生き様を表現するものだと思っている自分にはすんなりと入ってきた上に、普段は見ない角度からの歌舞伎。
演者としての世界を素晴らしい演技と、カメラワークで魅せてくれる。何より、編集が素晴らしい。
静と動。溜め。呼吸。丁寧な編集でのモンタージュ。
小説の世界を丁寧に紡ぎ、映画の中で1人の人生を描ききっている。
映画としてのあるべき形が詰まっていて、後半の三味線をリズムにオーケストラを重ねる粋な劇伴で感情が一気に溢れてくる。
僕は監督の過去作の「怒り」が好きで、あの時感じた映画作品としての巧さが成熟して奇跡とも言える形になったのだと思っている。
6/11追記
最後の舞台へ赴くシーンで、過去の大道具が映される事で、主人公の過去が緩やかにフラッシュバックするシーンは流石だと思いました。
大釣鐘、藤棚…
細かい所に添えられた美しい演出の余韻は忘れられません。
p.s.
昔付き合っていた女性に、貴方と似てるから観て感想を聞かせて、というのが今回観るきっかけ。
その女性と、その娘さんの3人で今度歌舞伎を観に行くことになりました。
人生って不思議なものですね。
コメントありがとうございます。
今作は編集が素晴らしいので端折られた物語が随所で補完されていると思っています。
映像で表現された部分がどれも濃縮された果汁の様で、濃厚ながらそれでいて余韻が素晴らしい。
良いシーンでしたね😌
侍味さま、初めまして🙂
「娘」というレビュータイトルの、ダブルミーニングに感激しました🥲
>父親に捨てられたと、憎しみで生きていたものの、その芸には感動せざるを得ず、その父と直接会話をする日を夢見てカメラマンの道を選び、やっと対面した父にその積年の複雑な感情を伝える事が出来たのだと思い、僕の心のダムは決壊しました。
綾乃(瀧内公美)が、36年振りに父・喜久雄と再会する場面。
“悪魔と取引”してまで母と自分を捨てた“歌舞伎”というものを知りたくて、舞台を観倒したのだろうと思います。そして努力して新聞記者(カメラマン?)になり、念願の人間国宝に取材させてもらえる機会が訪れます。
撮影のシャッターを押す前に、綾乃が喜久雄の襟元にそっと触れて襟を直します。長年の憎しみだけでなく、ずっと会いたかった“お父ちゃん”への愛情を感じました。
映画化するに際してカットされた長い原作の後半を背負う、大事なワンシーンでした。シークレット・キャストだった瀧内公美さんは、かなりのプレッシャーだったろうと思いました🫢
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