「酷法と果報」国宝 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
酷法と果報
世襲より、実力主義より、世襲が当たり前の世界での実力主義が最も酷だった。
俊介には血が、喜久雄には跡目を奪ってしまったことが、それぞれ呪いとなり役者に取り憑かれたか。
途中まではそうだっただろうが、最期はそうでなかったと思いたい。
演者のこの上ない表情芝居を、じっくりたっぷり見せてくれるため、心情の描写はとても丁寧。
しかし些か丁寧過ぎた気もする。
反面、描ききれてない部分はかなり多い。
春江が俊介を選んだ理由や竹野が助勢に回るきっかけ、藤駒とは籍を入れてたかすらも不明。
彰子に至っては想像する材料すらなくフェードアウト。
喜久雄と俊介の関係修復の流れも一切が省かれ、終盤の娘の愛憎は瀧内公美の芝居でギリギリ成り立ってた。
仇討ち失敗とかその時の相棒とかはその後にまったく関わらないので、あの辺は省いてよかったのでは。
とは言え、画面の切り取り方や抑えた演出、無音の使い方なんかは非常に巧みで見応えは抜群。
歌舞伎のことはまったく分からないが、素人目には所作も発声も違和感ゼロ。
役者の演技は文句のつけようもなく、吉沢亮と横浜流星は鬼気迫る熱演。
今年は何故か“予告に出ない女”化してる森七菜は、色気も醸す新境地。
田中泯は今まで好みでなかったが、声も高く口調も荒げないのに迫力と説得力を感じて素晴らしい。
黒川想矢と越山敬達も末恐ろしいほどの奥行きを見せた。
吉沢亮なら表情だけで伝えられるハズなので、最後の一言は完全に余計だった。
監督が役者や脚本や観客をもっと信用できていたら…そのぶん脇の補足が行き届いてたら…
名作だけど、傑作には半歩届きませんでした。
コメントありがとうございます。
確かに、振り返れば仇討ちはその後全く絡んできませんでしたね。
映像化にあたっての削り方、本当に難しいですね……
キャスティングと演者の熱量が、ダイジェスト的になった脚本の粗を補ってた感じです。補って余りある感じで、満足度は高かったです。
共感&コメントありがとうございます。
今作のレビューで面白いのが歌舞伎の知識がある人たちのモノで、ああ成程ねと思う部分があります。歌舞伎役者に演らせればってのは安易だと思いますがね。
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