「年に1本しか見ないなら、コレを見よう」国宝 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)
年に1本しか見ないなら、コレを見よう
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3時間近い長尺ながら、最初から緊張感のある場面、エピソードが続き、最後までスクリーンに釘付けされる映画である。
こんなのは滅多にないよ。年間100本見たとしても、あるかないか、のレベルだ。
ぼくは年に10~20本程度しか見ていない映画ファンだけど、数年に1本お目にかかれるかどうかという完成度だ、と思う。
吉田修一原作、李監督の過去作品も見ているが、過去作をしのぐ熱量だった。
役者の迫真の演技に加え、松竹が全面協力したんじゃないか、と思うくらい歌舞伎芝居の舞台裏の雰囲気もうまく出ていた。
映画の世界では、ライバルというべき東宝が配給だけれど、ミュージカルその他実演も多数手がける東宝だし、一時期は松竹に対抗して歌舞伎公演もやっていた。ある意味、歌舞伎の世界をこんな形で描いて、松竹の鼻を明かしたようにも映る。
純粋な歌舞伎ファン、演劇ファンが吉沢、横浜らの芝居をどう見たかは知らない。しかし、李監督による本作は、映画的にはかなり成功し、歌舞伎や日本舞踊の魅力をスクリーンを通して感じさせた。
主人公が「人間国宝」になる、というある意味ハッピーエンド、成功譚なのだが、それを編年体で追い、これだけの映像にまとめるのはすべてにおいて高い水準がないとできない仕事だ。
中途半端な映画をたくさん見るより、これ1本見ておけばよい、と言っておこう。
封切りから4日、休み明け月曜の昼間ながら、東京都心のシネコンは8割ほども客が入っていた。やはり映画好きはよい作品を知っている。
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