「フツーのキレーな映画」国宝 桜春さんの映画レビュー(感想・評価)
フツーのキレーな映画
全体に平坦で舞台シーンがキレーな映画という印象。以下ほぼ褒めていないのでこの映画をお好きな方は読まれない方がいいかも。
まず、映画の売りになっている歌舞伎の舞台シーン。メインキャラお二人が1年半かけて血の滲むような稽古をして挑んだとか。その努力を否定する訳ではないが、子どもの時から歌舞伎一筋で芸を磨く歌舞伎役者なる本業役者がいる以上、1年半で極められるものではないだろう。言葉がきつくなるかもしれないが所謂素人芸の域。譬えて言うなら部活の高校生が猛練習しました。その発表会するので見て下さいという感じ。猛練習した高校の吹奏楽部演奏は凄いし。それは否定しない。
だから若手の頃の舞台はそこまで気にならない。若い演技だから。しかし、中堅になった舞台シーンもさほど若手の頃と変わらない
レベルに見える。年月を経た深みはなくずっとメインキャラお二人が頑張って到達されたレベルの舞台。最後の鷺娘などはだからそれで国宝感はとても感じられない。申し訳ないが、それをプロの歌舞伎役者の舞台として見せられ感動せよと言われても鼻白む。演出で国宝感を出せたかもしれないが、ニュートラルな演出の色は変えられなかったのだろう。
ニュートラルな演出と言えば原作未読なので原作はもっと深いのかもしれないが、映画を見た限り、全てがあっさり通り過ぎ情念とか業は感じなかった。それをある程度は描こうとしていたようだが。
1つは女性達のメンタルがきれい過ぎる。義理の母や主人公の彼女達との関係は結構複雑なはずだが、義母は嫌味は言うがさほど意地悪な仕掛けもせず主人公の彼女達は立場を弁えている人ばかりで主人公を悩ませる事はほとんどない。それがメインの話ではないと言われればそうだが、主人公に都合が良過ぎる。
主人公と芸を競うという事で言えば師匠の実子が親友という関係で小さな争いがそこしか無く他の役者の妬みなどは全く無いので芸を極めることは壮絶とはいかずとても甘々な感じになっている。主人公の不遇時代も描かれてはいるが、女と間違われて暴力も振るわれているのに何故か危機感がさほどないあっさり演出。基本的にこのあっさり演出がさらりとした作品にしている気もする。
とは言ってもあまりドロドロになって歌舞伎の闇の世界を暴くような形になっては芸道の素晴らしさ凄さを描けないという思いかもしれないが。
それから試写会段階から絶賛コメが多過ぎて、この作品は褒めなくてはいけない圧を感じるのだが、本当に先入観無しにこの作品に感動した人が多いのか非常に気になる。個人的にとても期待していたし感動したかったから尚更。メインキャラ2人は今が旬の美形としても誉れ高く演技派で大河ドラマ主役経験者というこれ以上ない経歴の奇跡のような配役が作品の内容以上に人の感性に影響している気がする。
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