「役者一人一人のセリフが刃物のように心に突き刺さる」国宝 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
役者一人一人のセリフが刃物のように心に突き刺さる
フィクションであることを忘れて、目の前で起こる出来事に感情を押さえることができない。
劇中で曽根崎心中の「お初」になりきらないと、「お初」の言葉として相手に伝わらない。そう言った演技指導のシーンがあるが、まさに演者全員が、登場人物と同化していて、役者一人一人のセリフが刃物のように心に突き刺さる。
余興の歌舞伎から一気にヤクザの出入りと、たたみ込むようなプロローグで虚構の世界に引きずり込まれる。黒川想矢の演技力は、過去作品で折り紙付きとなっているが、あらためて驚嘆です。中性的な顔立ちをしていながら、狭客的な生き方に憧れ、行動する少年喜久雄のナイーブな表情がなんともいえない。
ジェットコースター的に立ち位置が、上下左右に入れ替わる展開。今、振り返ると作為的に感じるが、鑑賞中は、それが必然として進むため、ますます没入してしまう。
ヤクザの遺児でありながら、役者の才を認められて猶子のように育てられる喜久雄。同い年で実子の俊介。二人とも女形に必要な妖艶さを生まれながらに備えている。
歌舞伎という舞台装置。舞台の裏側にもカメラが回ることによって、現実と錯覚させる構成の妙。虚構と現実が一体化する。
音響・美術は極上。劇場で鑑賞する一択の作品でございます。
bionさま
共感ありがとうございます🙂
>まさに演者全員が、登場人物と同化していて、役者一人一人のセリフが刃物のように心に突き刺さる。
レビューのタイトルに、突き刺さった台詞から一つ選びました。ゾクッとした「悪魔と取引してたんや」が、ラスト36年振りの再会で伏線回収された時は、泣いてしまいました🥲
>ジェットコースター的に立ち位置が、上下左右に入れ替わる展開。
上下左右…自身のアップダウンと喜久雄と俊介のスイッチ、納得です🤔
>歌舞伎という舞台装置。舞台の裏側にもカメラが回ることによって、現実と錯覚させる構成の妙で、虚構と現実が一体化する。
いつものことながら、「bion文学」の筆致と語彙力に感動しています🥹
★5つでもレビューをどう書いていいか悩み、しばらく日数が経ってから追記しようか迷いました。この映画を観たかった理由を書いてみよう…でお茶を濁してしまいました🙄
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