盤上の向日葵のレビュー・感想・評価
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賭け将棋シーンも見物
原作は未読です
辛い人生を歩んできた主人公
少年時代の先生の温情には涙が出そうでしたね。
その主人公の悲しい過去を追っていくストーリー
それは冒頭で見つかる遺体の捜査
そして辿り着く最後の対戦と・・
特に好きな所は東明重慶(渡辺謙)と兼埼元治(柄本明)の賭け将棋シーン
鬼気迫る物を感じましたね。なんだろう・・福本先生の漫画味も感じました。
ラストのシーンも好きでしたね。向日葵と盤上でしたね
生ききれ、最後まで
『Miss King』を観終わったので、将棋つながりで観ることにした、坂口健太郎主演の映画ですが、完全に渡辺謙の映画でした。
佐々木蔵之介、音尾琢真、柄本明、渡辺いっけいといった、芸達者がそろって出演しているとこともあり、映画としてはとても面白く見ることができました。また、上条桂介(小野桜介→坂口健太郎)が将棋の道に進めるように献身的な支援をした、唐沢光一朗役の小日向文世には泣かされました。この人、やはりいいですね。
ただ、東北一の真剣師兼崎元治(柄本明)が今にも死にそうで「ゴホゴホ」咳をしているのに、その対局中にスパスパたばこを吸うのは、いただけないです。また、東明重慶(渡辺謙)には最後まで勝てなかったのがなんか変とか、上条庸一(音尾琢真)が言うのがどうもうさんくさいとか、いろいろ疑問が残りました。
ところで、刑事役の佐々木蔵之介は、いい声していますね。サザンの主題歌とともに、耳に残りました。
"3人の父親"
役者さんたちの演技力のすごさが物語をカバーしている作品
予告で見てなんとなく気になったので見てみたら思っていたのと違って、
予告のイメージで殺人犯とか逃亡犯的なものの作品なのかなと思ってたらちょっと違ってて、いろいろとある意味ぶっとんでいて
ぶっちゃけ物語自体は「なんじゃこりゃ?」って感じでした(笑)
なんで将棋にそこまで取り憑かれて最終的に将棋やって殺して山に埋めるとかよくわかりませんでした。ま、とりあえずは将棋というものに魅せられた2人の人生の物語といったところでしょうかね。
渡辺謙がクズすぎてイライラしますし
とりあえず音尾君演じるクズクソ親父をぶっ殺してくれて良かったと思います。
出てくるたびにムカつくことしかしないので早く殺されればいいのにとイライラしながら見てました笑
ま、それだけ音尾君の演技がすごいってことですがね!渡辺謙や柄本明の演技もとんでもなくやばいです、あの山形での勝負!
とにかくこの作品は役者さんたちの演技力がものすごいのでそれがあのヘンテコなストーリーを硬派な作品かのように見せることができているのかなと思います。
しかしサブスクで見るくらいでちょうどいいくらいの作品かと思います。
感動もへったくれもない作品です。
が、役者さんの演技がとにかくすごいんでそれはマジでオススメです!
あと特撮ファン以外はどうでもいいですが土屋太鳳ちゃんのお父さん役でジライヤが出てきます(笑)
昭和の香り
うーん、重い映画だけど深くない
今はもう消滅した将棋真剣師の世界をたっぷりと見せてくれて感激だが、将棋ファンとしては不満も
熊澤尚人 監督による2025年製作(123分/G)の日本映画。配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、松竹、劇場公開日:2025年10月31日。
柚月裕子による原作は未読も、将棋、特に真剣師の世界を映画にしてくれたのは将棋ファンとしては大感激。実在の真剣師・小池重明をモデルにしたと思われる東明重慶(渡辺謙)が何といってもやはり魅力的。金にだらしなく酒浸りで破滅的でありながら物凄く将棋に強いキャラクターは、今は存在しないだけに、良い映像になっていたと思えた。
女性と駆け落ちとかもあり存在自体が破天荒で、一方将棋はトッププロに勝利するほど強いという小池重明の実録物を映画にしたらとても面白いのではと、改めて思った。
アマチュアから奨励会を経ず将棋のトッププロになろうという上条桂介を演じた坂口健太郎も、知性に恵まれた様に見える爽やかなイケメン振りで、かなり好印象。こんな良い俳優だったんだと。あと、主人公の少年時代に将棋を教え込んだ元校長先生役の小日向文世、子供を大切にする優しい教育者としての彼の演技が実に素晴らしくて、涙ものであった。
ただ、プロの飯島栄治八段及び上村亘五段が将棋監修を担当し、盤上の局面もしっかりと構築していたはずなのに、それを観客に殆ど見せなかったのには、ガッカリ。どうせ見せても観客は分からないだろうという熊澤尚人監督の思い込みが、あらわに見えた気がした。藤井聡太のタイトル戦ともなると、盤面の映った映像を、400万人以上が同時視聴しているのを知らないのだろうか?
この将棋の局面を殆ど見せないことで、渡辺謙 vs 榎本明の大物真剣師同士の死闘が顔芸だけになってたのはとても残念。局面を見せてギャラリー等に解説させる等、別のやり方も考えて欲しかった。あと、主人公の元婚約者(土屋太鳳)のキャラが通り一遍でつまらないと思ってしまったが、柚月原作にはない登場人物らしく、なるほど熊澤脚本の弱さと思ってしまった。
映画を見た後、真剣師・小池重明の指した棋譜をAIも用いて解説しているYutube動画があったので見てみた。最初の方は全く強さを見せずむしろ少し弱そうに見えるのだが、それが後半に豹変し僅差で勝利をもぎ取る。真剣師たるもの、勝てそうと思わせて何度も戦ってもらわないといけない訳で、なるほどと思わされた。風貌もとても優しそうだし。ということで、映画における渡辺謙のいかにも強そうな設定は、リアル路線からは外れていそうではあった。ただ、お前も俺も結局同じ将棋に取り憑かれた人間だ!と言っていたのは、みじかにそういう人間が実際いたので、実感として凄く分かる部分はあった。
監督熊澤尚人、原作柚月裕子、脚本熊澤尚人、製作代表髙𣘺敏弘 門屋大輔 野村英章 堤天心 舛田淳 佐々木利正 坂本裕寿 安部順一 奥村景二 井田寛、エグゼクティブプロデューサー吉田繁暁、企画新垣弘隆 矢島孝、プロデュース矢島孝、プロデューサー石田聡子、アソシエイトプロデューサー佐原沙知、撮影江原祥二、照明杉本崇、録音田中博信、美術西村貴志、装飾
湯澤幸夫、衣装宮本まさ江、ヘアメイク持丸あかね、ヘアメイク(坂口健太郎担当)、廣瀬瑠美、VFXスーパーバイザー村上優悦、VFXプロデューサー赤羽智史、音響効果柴崎憲治、
編集熊澤尚人 杉本博史、音楽富貴晴美、主題歌サザンオールスターズ、音楽プロデューサー
高石真美、助監督石川勝己、スクリプター松村陽子、制作担当堀岡健太 村上俊輔
プロデューサー補安藤央、プロダクションマネージャー小松次郎、ラインプロデューサー
山田彰久
出演
上条桂介坂口健太郎、石破剛志佐々木蔵之介、奈津子土屋太鳳、佐野直也高杉真宙、上条庸一音尾琢真、上条桂介(幼少期)小野桜介、ジエン・マンシュー高川裕也、永岡佑、片岡礼子、橋本淳、吉澤健、吉見一豊、平埜生成、兼埼元治柄本明、角舘銀次郎渡辺いっけい、
壬生芳樹尾上右近、唐沢美子木村多江、唐沢光一朗小日向文世、東明重慶渡辺謙。
将棋のルールを知らなくとも、ついて行ける
盤上の形勢は、ふたりの表情で分かりやすくなってる。実際の棋士たちはこんなに顔に出ないだろうから、これは映画用の演出だろうか。
渡辺謙は何をやっても品が出てしまうのか。最悪な迷惑野郎とわたしは思うのだが…でも憎めない。この人なりの芯はあるんだよな。
しかし愛弟子(?)に、少なくとも自殺幇助と死体遺棄罪負わせてますから。自分は好きに生きて、病気で死ぬより前に自分のタイミングで看取られて逝けて良かったけど。
最後は、対戦前に逮捕されて良かったのか。
勝ってから逮捕されて引退じゃあ、対戦相手の立場が無いもの。
主人公は魅力的なキャラで、役者はピッタリ。逮捕されても、辛くても、生きてゆく人だと最後のシーンで分かった。
見応えありました
サザンの主題歌が、染みた 色んな意味で置き換えられる
もうちょっと、何とかならなかった!?
原作未読、将棋は将棋崩しのみのレベルの私です。
俳優さんたちの演技が素晴らしく、柄本明や渡辺謙、小日向文世は言うまでもなく、坂口健太郎、目の演技が上手になったねーと感心しました。
子役の男の子も素晴らしく、拍手!
翻って、ストーリーは、悪くはないんだけど、いまいちピンと来ない感じ。
何故なんでしょう?
他のレビュワーさんが砂の器を引き合いに出されていますが、納得です。
申し訳ないけど、浅い砂の器って感じ。
類まれな将棋の才能があるのに、生い立ちが恵まれず…というより不幸のどん底。
それでも救いの手は確実に差し伸べられていて、将棋以外にも自分の身を立てる術はいくらでもあって、ダークサイドの人々との関わりを絶とうと思えばできたのでは?と思ってしまいました。
お話のキモになる箇所でことごとく共感ができず、もし主人公に会う機会があったとしたら、私はきっと、こう声をかけるでしょう。
「いろいろ大変だったと思うけどさ、警察のご厄介にならない程度に、もうちょっと何とかならなかった!?」
美少年小野桜介くん堪能
2025年映画館鑑賞110作品目
11月17日(月)イオンシネマ新利府
ハッピーマンデー1100円
原作は『孤狼の血』『朽ちないサクラ』の柚月裕子
監督と脚本は『君に届け』『ユリゴコロ』『ごっこ』『おもいで写眞』『隣人X 疑惑の彼女』の熊澤尚人
粗筋
上条桂介少年は幼い頃に母の春子を亡くしギャンブル中毒の父庸一から虐待を受けていた
新聞配達のバイトをしていた桂介は将棋が好きでゴミとして置かれていた将棋の本をこっそり読んでいた
元校長で将棋好きの唐沢光一朗は桂介を気に入り将棋仲間になった
桂介が父から虐待を受けていることを知り光一朗は援助するからと奨励会に入ることを薦める
光一朗同伴で桂介は父に許しを乞うが猛反対される
泣き出す父を見捨てることができず奨励会を諦める桂介
東大生になった桂介はバイトで予備校の講師
バイトが忙しく部に所属していなかったが名門将棋部の猛者を破る腕前になっていた
将棋喫茶で伝説の賭け将棋指しの東明重慶と出会い親しくなる
大学卒業後外資系に就職したがすぐに退職
たびたび庸一がカネをせびるのだ
長野に引っ越し宮田農園で働き始める桂介は農園の娘の奈津子と婚約するなかに
しかし突然桂介は農園を辞め奈津子とは婚約を破棄し東京に戻りプロ棋士になった
桂介の本当の父親は庸一ではなく春子の兄だと庸一本人から聞かされる
春子も春子の兄も自殺していた
春子の一族は自殺で亡くなることが多い家系だった
そんな矢先に東明重慶の死体が発見される
さらに上条庸一の死体も発見される
警察は死体遺棄殺人教唆の容疑で上条桂介を逮捕することに
過去に何度も書いたが将棋は全くわからない
それでも役者とBGMの雰囲気で十分楽しめる
娯楽映画として十分に及第点は間違いない
アウトローの東明の最期は迫力がある
あの表情は世界の渡辺謙
気仙沼で若干高めな飲食店を経営しているちょっと剽軽なおじさんと同一人物である
桂介の少年時代を演じた小野桜介くんが素晴らしい
ショタコンではないが中性的な彼の魅力に一目惚れ
彼こそ令和の光源氏最有力候補
桂介少年と銭湯に入る光一朗
桂介の背中には複数の痣
驚く光一朗
涙を流しながら桂介の背中を洗ってあげる光一朗に貰い泣きしそうになった
ジーンときた
大人では小日向文世の芝居が1番良かった
片岡礼子はオッパイを出さなくなって久しい
オッパイを出すのが当たり前だった頃は気づかなかったが彼女は耳は明らかに大きい
春子役は台湾人
エンドロールでジエン・マンシューという名前に本来の意味で失笑
自分が無知だったのかもしれないがいくら外国人とはいえこんな面白い名前の美女が埋もれていたとは
配役
奨励会を経ずにプロになった天才棋士の上条桂介に坂口健太郎
幼少期に小野桜介
「プロは遊び」「賭け将棋こそ真剣勝負」と豪語する伝説の賭け将棋指しの東明重慶に渡辺謙
佐野と共に事件を追う刑事の石破剛志に佐々木蔵之介
奨励会に入っていたが26歳までにプロになれず退会し夢を諦め警察官になり今は石破と共に事件を追う刑事の佐野直也に高杉真宙
桂介の元婚約者で実家の宮田農園で両親を手伝う宮田奈津子に土屋太鳳
ギャンブルにハマり息子に度々カネをせびる桂介の父の上条庸一に音尾琢真
自殺した桂介の母の上条春子にジエン・マンシュー
東明と対局する東北一の真剣師の兼埼元治に柄本明
病気の父に付き添う元治の娘に片岡礼子
山形の愛棋家で旅館経営者の角舘銀次郎に渡辺いっけい
竜昇戦で桂介が対局する予定の天才プロ棋士の壬生芳樹に尾上右近
芳樹の幼少期に井上涼太
光一朗の妻の唐沢美子に木村多江
元校長で桂介の恩師の唐沢光一朗に小日向文世
桂介の新人戦の決勝戦の相手に橋本淳
バーの店主に吉澤健
賭け将棋の対戦相手のマムシの米内に吉見一豊
奈津子の父に筒井巧
奈津子の母に宮田早苗
桂介が働いていた予備校の校長に春海四方
予備校の女子生徒に火ノ口紗彩
テレビのインタビュアーに登坂淳一
将棋喫茶の対戦相手にテイ龍進
将棋喫茶の対戦相手に五頭岳夫
将棋喫茶の対戦相手に針原滋
将棋喫茶のサラリーマンに渡部遼介
桂介の賭け将棋の対戦相手の須藤に吉家章人
菊水月の所有者の娘に早織
プロ棋士におむすび
プロ棋士に吉村賢人
プロ棋士に鳥居功太郎
雀荘の店主に藤夏子
桂介親子を知るオバサンに田根楽子
新聞配達店の店主に清水伸
大学の将棋部の顧問に大西武志
大学の将棋部部員に八代崇司
新人戦の対戦相手にニクまろ
新人戦の対戦相手に金野美穂
新人戦の対戦相手に村松和輝
旅館の対戦相手に長岩健人
旅館の見物客に西郷豊
捜査員に原田大輔
捜査員に友岡靖雄
対戦相手に花ヶ前浩一
対戦相手に佐野啓
見物人に水野直
アナウンサーに宮瀬茉祐子
捜査一課の課長に高川裕也
刑事に永岡佑
刑事に平埜生成
共感出来なかった
4人の父親
事件の犯人を追いながら、一人の人間の生き様に迫った物語。
そこには、それぞれに大事なことを教えてくれた存在がありました。
状況に戸惑いながら、迷惑かけながら共に生活した存在。人間らしい生活へ優しく導いてくれた存在。才能を見抜き磨きをかけてくれた存在。そして、本当の母親と父親。
良くも悪くも、どの存在が欠けても彼、天才棋士は存在し得なかったはずです。
自分の人生に影響を与えてくれた人たちの顔が思い浮かびました。
波の大小はあるものの、誰しもそんな風にして今があるんですよね。
よくあるかたちだったかもしれませんが、ストーリー運びと終わり方が気持良かったです。
最後は彼にとってようやく訪れた安堵の瞬間だったはずですし、その後も我慢強く、優しく、勝負強い棋士として活躍されていてほしいと感じさせてくれました。
映画>小説
似てる
砂の器に似てます。
刑事が特急電車で地方に向かった辺りで既に感じていましたが、捜査状況と主人公の過去が交互に流れ始めて、砂の器を見たことあるかどうかで見方が変わるなと思いました。
砂の器を見たことない人であれば割と楽しめる気がします。
ただ、主人公の出生の秘密、向日葵、将棋がバラバラに存在していて、それなら、いっそ実は渡辺謙が父親だったくらいの方が良かったように感じました。
ただ、銭湯で小日向さんが泣きながら背中を洗ってくれたシーン、父親に奨励会に入りたいと言ったら「お前も置いていくのか」と縋られたシーンは3人ともかなり良かったです。
坂口健太郎さんの演技を拝見するのはヘルドッグス以来でしたが、父親が死んだあとの泣きの演技が良かったです。
宿命
山中で見つかった白骨死体には、この世に7組しか存在しない貴重な将棋駒が残されていた。駒の持ち主は将棋界に突如彗星のごとく現れた天才棋士・上条桂介のものと判明。捜査が進む中で上条の隠された過去が明らかになっていくという物語であり、彼の悲劇的な運命を軸に、人間の業や才能の残酷さを描いた話でもある。
この作品を貫くのは、「お前には将棋しかない」というフレーズだ。それは単なる台詞ではなく、桂介の人生そのものを表す呪いであり、また唯一の光でもあったと感じた。
絶望的な境遇と「将棋」という才能。自身の過去を容易に語れるような人生でないことは、物語を追うことで次第に分かってくる。
桂介の境遇はあまりにも過酷だ。近親相姦という出生の秘密、酒に溺れネグレクトと暴力を繰り返す義父。
さらには彼はその才能ゆえに重慶から利用され、将棋の試合のたびに連れ出され、あげくの果てには大切な将棋の駒を売られてしまうなど、将棋がなければ受けなかったであろう苦難をも引き寄せてしまう。才能を持つ人間ゆえの苦痛を描いていて見応えがある。
桂介の人生を形作った「3人の父親」という視点で見ることによって、桂介の人間像に新しいページを加えて解釈することもできる。
桂介の複雑な人格は、彼が出会った3人の象徴的な「父親」との関係によって形成されている。
1.上条庸一(血の繋がりのない父) 粗暴で虐待を繰り返す「父」だが、パインアメや忘年会の景品の将棋駒といった「ほんの一滴の愛情」も確かに存在した。彼にとってもまた、歪んだ形であれ「桂介しかいなかった」のかもしれない。
2.唐沢光一郎(将棋の師) 桂介を「まるで息子のように」扱い、将棋の技術と楽しさ、そして「道」を教えた、桂介にとっての光とも言える存在。
3.東明重慶(影であり、反面の師) 「鬼殺し」の異名を持つ天才的な技術を持ちながら、正規の道から逸れ、裏社会で生きる男。彼は桂介の才能を利用し、賭け将棋の旅に連れ回す悪魔(メフィストフェレス)的な側面を持つ。しかし、自らの死を悟ると、桂介につきっきりで「鬼殺し」の技を遺そうとする。それは、彼なりの「贖罪」だったのだろう。
本作において、将棋は単なるゲームではない。それは「生ききる術」でもあるし、「命のやりとり」であり「賭博」そのものだ。
康一に自らの出生の過去を明らかにされ、全てに絶望し、彼はマンションから身を投げようとした。その瞬間、彼を引き戻したのもまた「将棋の駒の音」だった。彼の人生は、良くも悪くも将棋から逃れることはできないことを示唆しているように感じる。
そして、将棋の駒に「表と裏」があるように、登場人物たちも強烈な二面性を持っている。
・庸一: 粗暴な「表」と、わずかな愛情の「裏」。
・重慶: 桂介を利用する「表」と、技を遺す「表と裏」の対比が、物語に深い奥行きを与えている。
桂介が自殺しようとするシーンでは、重慶は桂介の後ろ姿を見ても、「死ぬな」と安易に言葉をかけない。彼はただ、黙って「将棋の駒を指す音」を響かせる。
あの音で、桂介は我に返った。将棋はまさに彼の生き様そのものだ。数え切れないほどの人間と勝負してきたと思うし、重慶との賭け将棋の旅の病床から咳き込みながら死に物狂いで勝負に臨む男、命を懸けて一局に臨む「漢たち」の血と汗が、そこには詰まっている。
言葉ではなく、桂介の「生き様」そのものとなった「将棋」によって、重慶は桂介の命をつなぎとめたのだ。
「お前には将棋しかない」——。その言葉通り、桂介は将棋によって絶望の淵に立たされ、同時に将棋によって生かされ続ける。その逃れられない運命の軌跡を描き切った作品だった。
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