「今はもう消滅した将棋真剣師の世界をたっぷりと見せてくれて感激だが、将棋ファンとしては不満も」盤上の向日葵 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
今はもう消滅した将棋真剣師の世界をたっぷりと見せてくれて感激だが、将棋ファンとしては不満も
熊澤尚人 監督による2025年製作(123分/G)の日本映画。配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、松竹、劇場公開日:2025年10月31日。
柚月裕子による原作は未読も、将棋、特に真剣師の世界を映画にしてくれたのは将棋ファンとしては大感激。実在の真剣師・小池重明をモデルにしたと思われる東明重慶(渡辺謙)が何といってもやはり魅力的。金にだらしなく酒浸りで破滅的でありながら物凄く将棋に強いキャラクターは、今は存在しないだけに、良い映像になっていたと思えた。
女性と駆け落ちとかもあり存在自体が破天荒で、一方将棋はトッププロに勝利するほど強いという小池重明の実録物を映画にしたらとても面白いのではと、改めて思った。
アマチュアから奨励会を経ず将棋のトッププロになろうという上条桂介を演じた坂口健太郎も、知性に恵まれた様に見える爽やかなイケメン振りで、かなり好印象。こんな良い俳優だったんだと。あと、主人公の少年時代に将棋を教え込んだ元校長先生役の小日向文世、子供を大切にする優しい教育者としての彼の演技が実に素晴らしくて、涙ものであった。
ただ、プロの飯島栄治八段及び上村亘五段が将棋監修を担当し、盤上の局面もしっかりと構築していたはずなのに、それを観客に殆ど見せなかったのには、ガッカリ。どうせ見せても観客は分からないだろうという熊澤尚人監督の思い込みが、あらわに見えた気がした。藤井聡太のタイトル戦ともなると、盤面の映った映像を、400万人以上が同時視聴しているのを知らないのだろうか?
この将棋の局面を殆ど見せないことで、渡辺謙 vs 榎本明の大物真剣師同士の死闘が顔芸だけになってたのはとても残念。局面を見せてギャラリー等に解説させる等、別のやり方も考えて欲しかった。あと、主人公の元婚約者(土屋太鳳)のキャラが通り一遍でつまらないと思ってしまったが、柚月原作にはない登場人物らしく、なるほど熊澤脚本の弱さと思ってしまった。
映画を見た後、真剣師・小池重明の指した棋譜をAIも用いて解説しているYutube動画があったので見てみた。最初の方は全く強さを見せずむしろ少し弱そうに見えるのだが、それが後半に豹変し僅差で勝利をもぎ取る。真剣師たるもの、勝てそうと思わせて何度も戦ってもらわないといけない訳で、なるほどと思わされた。風貌もとても優しそうだし。ということで、映画における渡辺謙のいかにも強そうな設定は、リアル路線からは外れていそうではあった。ただ、お前も俺も結局同じ将棋に取り憑かれた人間だ!と言っていたのは、みじかにそういう人間が実際いたので、実感として凄く分かる部分はあった。
監督熊澤尚人、原作柚月裕子、脚本熊澤尚人、製作代表髙𣘺敏弘 門屋大輔 野村英章 堤天心 舛田淳 佐々木利正 坂本裕寿 安部順一 奥村景二 井田寛、エグゼクティブプロデューサー吉田繁暁、企画新垣弘隆 矢島孝、プロデュース矢島孝、プロデューサー石田聡子、アソシエイトプロデューサー佐原沙知、撮影江原祥二、照明杉本崇、録音田中博信、美術西村貴志、装飾
湯澤幸夫、衣装宮本まさ江、ヘアメイク持丸あかね、ヘアメイク(坂口健太郎担当)、廣瀬瑠美、VFXスーパーバイザー村上優悦、VFXプロデューサー赤羽智史、音響効果柴崎憲治、
編集熊澤尚人 杉本博史、音楽富貴晴美、主題歌サザンオールスターズ、音楽プロデューサー
高石真美、助監督石川勝己、スクリプター松村陽子、制作担当堀岡健太 村上俊輔
プロデューサー補安藤央、プロダクションマネージャー小松次郎、ラインプロデューサー
山田彰久
出演
上条桂介坂口健太郎、石破剛志佐々木蔵之介、奈津子土屋太鳳、佐野直也高杉真宙、上条庸一音尾琢真、上条桂介(幼少期)小野桜介、ジエン・マンシュー高川裕也、永岡佑、片岡礼子、橋本淳、吉澤健、吉見一豊、平埜生成、兼埼元治柄本明、角舘銀次郎渡辺いっけい、
壬生芳樹尾上右近、唐沢美子木村多江、唐沢光一朗小日向文世、東明重慶渡辺謙。
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