劇場公開日 2024年11月29日

「横浜流星の多彩な魅力」正体 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5横浜流星の多彩な魅力

2024年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

横浜流星が色々なタイプの人物に変装して逃げるという設定を活かして、演技力を発揮している作品で、彼の佇まいが最大に見どころになった作品だ。いきなり、口の中を傷つけるシーンから始まり痛々しいのだが、作品全体の読後感は痛々しさより、人の優しさが沁みるみたいな感じになる。この辺りは藤井道人監督の持ち味という感じだろうか。
横浜流星演じる主人公は、本当に人を殺したのか? 彼の正体はなんなのか?という点をミステリーとして引っぱる構成ではあるのだが、彼と接する人々がみんな割といい人なので、ミステリーやサスペンス要素はそれほど強くない。むしろ、ヒューマンドラマ的な要素の方が強い。結構、すぐにみんな主人公のことを信頼してくれるのだ。
それは、少し甘いのでは、と思わなくもないのだけど、良くも悪くも藤井監督の持ち味はそこにこそあるとは思う。人を信じるのが難しい時代なので、映画の中でくらいその甘さが成立してもいいかなという気分にはなる。

杉本穂高