「法というしがらみ」正体 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
法というしがらみ
こ、これはすごい...。
藤井道人監督、今年凄いです。「青春18×2」に引き続き、超高品質なヒューマンドラマを日本中に届けてくれた。映画ファンもうなる大傑作。サスペンスの皮を被ったこの作りに、不覚にも圧倒されてしまう。
面白い!最高だ!と周りから激推しされながらの鑑賞だったのにも関わらず、想像を遥かに上回る大感動。口では多くを語らず、息を飲む映像美で観客に伝える藤井監督特有のスタイルに、いつだって魅了されてしまう。あぁ、最高だ。大好きだ。間違いなく日本でいちばん好きな映画監督。なんでこんなにバンバン傑作を生み出せるんだよ。。。
役者の気迫にノックアウト。
みんな言葉にならないほど素晴らしくて、シンプルに監督の人物描写がうますぎるというのもあるんだろうけど、登場してから一瞬でその人物に引き込まれてしまうし、キャラクターの境遇がこの映画のメッセージとブレることなく合致していて、定期的に心がぐちゃぐちゃになってしまう。
みんなすごく人間的で劇映画にありがちな偽善者ぽさが全くないから、自分が同じ状況に立ったらどうするだろうと、見ている側は想像力を働かせてしまう。とてもスクリーンの向こう側の話とは思えない。他人事に感じられない、というのがこの映画のすごいところ。
思い返してよーく考えてみればツッコミどころもあるんだけど、それを考えさせる隙を与えないというのが本当によくできてる。他の映画では味わえない、ただならぬ説得力がこの映画にはあるもんだから、メッセージの重みが段違い。セリフの言い回しも秀逸だし、いい意味で映画を見ているように感じない。言葉に魂が宿っている。
それも、横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈と今をときめく日本映画を牽引する若手俳優が演じているもんだから、胸に刺さる刺さる。影で支える山田孝之を加えた5人に感嘆するばかり。なかでも主演の横浜流星。もう、とんでもないところまで来たな。演技という域を超えた表現技法。えぐい。
ストーリー展開も次から次へと軽やかに進んでいくのではなく、しっかりひとつひとつ丁寧に、余すことなく描ききっているのがものすごく好感をもてる。映画というエンターテインメントではあるんだけど、面白いだけで終わらせない、最後までやり遂げるという作り手の意地みたいなものを強く感じる。
死刑判決を受けた1人の男の逃亡劇を描いた作品ではあるんだけど、それを通して様々な社会問題に切り込みを入れており、とても身近な話ばかりであるため、本筋とは別に色々と考えさせられる。一筋縄ではいかないこの構成が、作品にグッと深みをもたらしている。名誉が一瞬にして消え去る。SNSがある現代最大の恐怖。言葉は武器になる。。。
出来るだけなんの情報もなしに鑑賞して欲しい。いまを生きる人々に送る映画だと思うし、今後とも語り継がれる傑作だとも思う。「青春18×2」がスゴすぎたばっかりに、この程度の点数にならざるを得なかったけど、今年を代表するといっても過言では無い作品だった。
横浜流星×藤井道人。何度もタッグを組んできたけど、間違いなく本作がベスト。ぜひともまた一緒に映画を作ってください。さて、未発表の監督次回作はどんなものになるのかな...?