劇場公開日 2024年11月29日

「彼はなぜ逃げたのか。」正体 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5彼はなぜ逃げたのか。

2024年12月4日
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鑑賞方法:映画館

役者としての横浜流星が悪いのじゃなく、キャスティングとして横浜流星ではない、と思った。それは、彼の端正な顔立ちが目立ちすぎて、いくら変装してもほとんど原型が崩れていない(工場勤務時の目元以外)から。それに、設定は二十歳そこそこ。横浜流星からにじみ出る雰囲気は分別ある二十代後半(横浜本人の年相応ではあるが)で、まったくもって物語に似合っていない。そもそもそんな若造があそこまで手配りよく逃げおおせるのか疑問がある。それでも、彼の行動のエネルギーや目的は何なんだ?の答えを見守る気分は捨てきれなかった。
だけど、最後の最後、「どうして逃げたんだ?」の問いかけの答えが、自分にはどうしてもきれいごとのようにしか聞こえてこなかった。
終始、山田孝之が彼の良心ゆえに、苦悶の表情が崩れず、時に行動に躊躇いがでるのが切なかった。

追記)
物語の展開に、物足りなさを感じてしまい、帰宅してからアマプラでドラマ版を見た。
こちらのほうが説得力があった。鏑木は32歳、これなら逃避行の度の知恵も行動も納得できる。冤罪被害の弁護士が鏑木を助けようとする動機も十分。そして目撃者が若年性認知症とはっきりと描かれているので、この事件の捜査の混乱はつじつまが合う。何より、テーマである「人を信じる」という思いが伝わってきた。ドラマは四話(×54分)あるのでディテールを描き切れるともいえるが、映画版は細部への気配りが足りないように思えた。

栗太郎