入国審査のレビュー・感想・評価
全215件中、101~120件目を表示
いいよ審査官、もっとやれ
ムーディーなオープニングから音楽ブツ切りでのタイトルの出し方が不穏で好き。
ディエゴの方はあからさまにオドオドなのに対し、エレナは強気。やましい事が無くとも極力フレンドリーに、心象良くしようとするもんだと思ってたけど、イミグレであんなケンカ腰な人も珍しいんじゃないか。
審査官が質問責めでジワジワと追い詰め、新事実が明らかになるたびに、おいディエゴよ...と。
ディエゴのやり口はありがちかなぁとは思うし、アメリカや日本のような、比較的自由な先進国では普通にあることだよなぁ。
留学中にアメリカ人と結婚した友人によると、結婚した後でも何度か面接はあるらしい。
結末は意外だったけれど、不要なサイドストーリーなどを削ぎ落とし、77分に収めたのはダレることがなくて良かった。
パンフ購入推奨
海外は観光ビザでしか行ったことがないため、楽勝で通過できるイメージしか無かった。
移民ビザだとあんなに厳しいんだな。まあ、米国内で不良移民になったら困るということだろう。
鑑賞中、カタルーニャ云々は全然ピンときてなかったが、政治信条の問題なのね。
パンフ読んで初めて分かりました。
一番印象的だったのは、男性審査官の「英語で話せ。」だった。
移民としてくるからには、英語ぐらい出来ないとだめだということ。同質性が試されている。
(ここで、女性審査官は顔のわりにすごい優しかった、ということが明らかに。)
一貫して米国で生きる覚悟が試されている尋問だった。
二人の関係は超複雑になって前途多難だけど
「合衆国へようこそ」→エンドロールの曲で「おめでとう!」は脳汁出た。
どんどん疑心暗鬼にさせられる
入国審査、何もやましいことがなくても止められたらどうしよう、別室に連れて行かれたらどうしよう、と思わせる空気感がありますよね。
まさにそれを疑似体験させてくれる映画。
尋問が進む中、パートナーのそれぞれの過去に何があったのか?相手の意図は?とどんどん疑心暗鬼にさせられます。
劇伴は冒頭とエンディングの音楽しかなく、それも緊張感が否応なく高められます。
最後の結末を迎えたカップルの表情が忘れられません(笑)
そしてあの音楽。なるほど!でした。
被害者視点での緊張感。描かれない国家の論理
公開1週間の週末に鑑賞。映画.comでの評価はあまり高くないので、空いてるかなと思ったら、有楽町の映画館はほぼ満席。賛否両論の映画なのかなと予想して見始めた。
観終わって、自分の中でも賛否両者が残る、どう捉えたらいいのか、モヤモヤする映画でもあった。
本作の監督はベネズエラ出身で、現在はスペイン在住。自身がスペイン入国審査で体験した出来事を発想の起点に、本作を作り上げたという。
主人公の38歳のベネズエラ人男性に、監督自身が投影されているのだろう。政情不安定な祖国を離れ、現在はスペイン在住だが国籍は取得できていない。
パートナーは34歳のスペイン人女性で、彼とは契約を交わした事実婚。この二人が移住先に選んだアメリカの空港で入国審査を受ける場面が、映画のほぼ全てである。
観終わった直後は、正直モヤモヤした。非人道的な扱いを受ける恐怖と理不尽さを訴える作品だと感じたものの、自分の経験や想像の範囲を大きく超える新たな発見がないと感じた。なんとなく監督が未熟に感じて、感想は書かなくてもいいかと思ったほどだ。だが一晩経って、なぜ引っかかったのか、少し整理できた気がする。書いてみたい。
入国審査は、多くの人にとって他国の権力と直接対峙する数少ない場だ。何も悪いことはしていなくても緊張する。自国とは異なる倫理やルールに晒され、何が“悪いこと”なのかが曖昧になるからだ。
入国審査の独特の緊張感は、自分も何度か味わった。何も悪いことをしていないのに、呼吸が浅くなる。あの感覚を思い出しながら観ていた。
過去の海外旅行では、多くの場合は職業的無関心。温かくサポートしてもらったこともある。逆に、理不尽で、あるいは差別的に感じる扱いを受けたこともあった。それを強く思い出した。
作中の二人は、国境を超える緊張に温度差がある。ベネズエラ人の彼は入国審査を前に恐怖を感じ始める。
スペイン人の彼女は無頓着だ。「私は世界のどこでも人道的に扱われて当然」という確信があるからだ。だが、その当然は裏切られる。
やがて彼女は、彼が過去に婚約していた相手の存在を知らされる。そして入国審査官たちは、それを手掛かりに「国籍取得やビザ目的で彼女を利用しているのではないか」と追及する。
彼の「君には僕のことはわからない。君には帰る場所があるけれど、僕にはない」というような、終盤のセリフ率直な彼の本音だ。祖国は帰る場所ではなくなり、スペインからさらにアメリカへと活路を探すのが彼の生き方。
しかしその言葉は彼女に、「利用されていたのでは」という疑念を決定的にする。二人は釈放されるが、残るのは「もう無理…」という感覚。「アメリカへようこそ」という皮肉な幕引きに宙吊りにされた気持ちになった。
改めて考えると、本作はきわめて現代的な物語だ。どの出自の人も等しく人間的に扱われるべきというリベラルな価値観は、いま揺らいでいる。
米国ではトランプ政権下で国境の壁や入国制限が強化され、ドイツではメルケル政権下の難民大量受け入れが社会を二分し、その後の選挙では極右政党の台頭を招いた。日本でも移民や国境管理の議論は敏感な争点になりつつある。
そうした現実から見れば、主人公カップルは無邪気にも映る。特に彼女は、国境の存在が薄いEU圏で育ち、「どこに行っても自分は自分らしく生きられる」という確信を持っている。しかし国家には国民を守る義務がある。そこには選別がある。その論理が最も露骨に表れる場所の一つが入国審査だ。
本作のもう一つの特徴は、描写の非対称性だ。
主人公の内面や背景は描かれるが、入国審査官たちは徹底して「人間性のない、役割の仮面」を被った存在として描かれる。彼らが何を背負い、どんな論理や倫理で動いているのかは全く描かれない。この非対称性が、観終わった後のモヤモヤの正体だったのかもしれない。
結果として本作は、理不尽さと被害者視点の緊張感を極限まで高める一方で、制度や権力の複雑さを省き、単線的な感情を残す作品になっている。
そこに掘り下げの浅さや未熟さを感じるか、意図的な作劇かと受け止めるかで評価は分かれると思った。
嫌な妙な後味
リアルな嫌な緊張感が半端なく、威圧的で不躾過ぎる尋問官に詰められる不安感に加え、どこまで夫を信用してよいのか段々と不安になってゆく展開も面白く、最後まで引き込まれました。
俳優陣も感情的になり過ぎない説得力のある演技で、緊張感や困惑が良く伝わります。
冒頭の仲睦まじい様子からラストシーンまで、ワンシチュエーションのサスペンスでコンパクトにうまくまとまっていたと思いますし、スパッと終わるラストの感じも個人的には良かったです。
疑うだけ疑って信頼関係壊してからウエルカムって言われても……。
結局無実扱いなのに不利益だけ被って、制度的にどうなんだと。
夫婦関係についても、結婚というのは多かれ少なかれ利害や打算のあるものだと思いますし、そこと愛情のバランスなのではと。
夫の打算を否定はできないけれど、愛情も全否定はできないような気がしますが、この状況で関係回復できるのか。
物理的にはハッピーエンドだが心理的にはバッドエンドというような、嫌な妙な後味が残るラストでした。
入国審査で暴かれる心のうち
私も、数十年前にカナダへの1人旅行の時に別室に呼ばれた経験がある。その時、私とインド人家族だけが「ちょっとこちらへ」と連れていかれ、ものすごくドキドキした。実際には映画のような高圧的で圧迫してくる感じではなかったが、それでも宿泊先や目的などいろいろ質問され、怖い経験となった。入国審査の緊張感はよくわかるからこそディエゴもそうなのかと思っていたが。
移民するためアメリカに向かうディエゴとエレナ。空港へ向かう2人はこれから始まる新しい生活に心を踊らせていた。しかし、入国審査でそれが一転、2人の内面があぶり出され、関係がどんどん危うくなっていく。
ワンシチュエーションなだけに、数名の会話だけで状況を明らかにしていく面白さがある。
今まで見たことのない本当の彼を知り、実際の入国審査はエレナに託されたのかも。
私の理解が足りないのかもしれないですが
なぜ出国するのか?様々な背景と理由があると思うのですが、平和な日本に住んでいるとそのあたりの理解が足りなくなってしまって、何が問題なのかついていけなくなる所がありました。そのため、ラストも少し???でした。わたしもう少しだけ色々な出国事情を勉強していたら、もう少し見え方が変わったのかもしれません。。
最後のオチが素晴らしい。
アメリカに移民として入国してきた夫婦だが、入国審査でスムーズに通れずに、別室に呼び出されてしまう。
個人的な経験では“観光”目的だった事もあり、イミグレーションはすんなり通れるイメージしかないんだけど、移民とかだとこういうこともあるのかなぁ。
それにしても酷い圧迫面接で、犯罪者の取り調べかと思わせるような厳しい審問が続くが、その中で夫の方に色々と隠していたことが徐々に暴かれていくのはなかなかスリリングだった。
2人の人間関係にヒビが入ってしまうような事実が取り調べによって明らかになってしまった最後の最後にあの残酷なオチ。
「これで入国審査は完了です。ようこそアメリカへ」
途中で少しもたつくところもあったけど、個人的には面白かった。
カップルに見て欲しい映画。
「バービー」じゃないが、見た後のお互いの感想次第ではその後の関係をどうするかの試金石になりそうな映画である。
9.11直後、アメリカはすべてのビザ審査を停止し、以降入国審査もかなり厳しくなった。その余波はアメリカだけでなく他の国々のビザ審査にまで及んだ。そのせいで留学や移住が延期、キャンセルになり、
人生が狂わされた人々も多い。
別室に連れて行かれ、審査官に入国の目的、家族や職業、どこに住むのか、他の国じゃだめなのか…など質問されるのはまだわかるが、携帯パソコンを没収され体中を検査され、水や薬も自由に飲めず、何故こんな人権侵害すれすれの扱いを受けなければならないのかと憤るカップル。
実際に海外で就労ビザを申請したことがある身としては移民審査官の質問に胃を痛めそうになりながら見た。
家族や職業などだけならまだしも、途中からカップルの片方がベッドのどっち側に寝るとか、過去の交際相手など、二人のプライベートにまでずけずけ踏み込まれ、しまいにお互いの知らなかった不都合な事実まで明らかになって二人の雰囲気は最悪に。
とはいえ、審査官の気持ちもわかる。ビザ目的の結婚(事実婚含む)は多いし、移住目的で入国する移民が多いからだ。海外に数年住んでいたが、移民を目指してた現地邦人の間でも、現地の人とカップルになるのが一番早いとか、仕事よりパートナー(彼氏or彼女)を見つけろとか、3万ドル積めばアジア系の現地人が偽装結婚でビザサポートしてくれる、とかよく言われたものだ。(本当かどうかは知らんが)
職業や給与、スキルと違って、愛は客観的に証明不可能だ。しかしビザを持つパートナーの証明さえ出来ればスキルも英語力も給与も必要ない。合法的にその国に住める。
そのため、移住目的の人間にとって、ビザを持っているパートナーは喉から手が出るほど欲しい存在なのだ、特にこの映画のディエゴのように、悲惨な母国からなんとかして脱出したい人にとっては。文字通り、ビザに人生がかかっているのだから。
本当のカップルでも、ビザ審査中は「パートナーが今朝履いていた下着の色」まで移民審査官に聞かれることもあると聞いて、「ビザ審査中は毎日下着をお互い黒に揃えよう!」と決めてビザ審査にのぞんでいる現地の移民カップルもいた。傍から見れば馬鹿みたいな質問だが本人たちは至って真剣にならざるを得ない。もちろん本人たちの証言だけでなく、生活費が引き落とされている共同の銀行口座の証明書、二人がデートや旅行で撮った写真、共通の友人の推薦レターなどの証拠書類を山ほど用意しなくてはならない。愛は証明できないがパートナーの証明は必要なのだ。
ちなみに別居しているなど共同生活の実態がない場合、例え籍を入れていてもカップルとはみなされない。日本の、籍さえ入れていれば単身赴任でも家庭内別居でも夫婦のベッドが別でも形の上では夫婦と見なされる制度とは違うのだ。この審査において、パートナーとしての生活実態がないとみなされる夫婦は山のように日本にいるだろう。良くも悪くも。(ちなみに南半球の某国では、別居2年以上経って夫婦としての生活実態がないと証明しないと正式に離婚も出来ない。良くも悪くも紙一枚で結婚も離婚もできる日本はある意味楽かもしれない)
より悲惨なのは、カップルの片方にとっては真実の愛だったが片方はビザ目的だったという場合。その場合、ビザや永住権が取れた瞬間に別れを切り出されて、故郷に本当の婚約者がいたというひどいケースもある。国によっては別れるときに財産を半分こしなければいけないので別れたパートナーに財産を半分持って行かれることになる。
そうなるよりは審査官に尋問で見抜いてもらうほうが傷が浅いとも言える。
だからこそ審査官も真剣だ。プライベートに踏み込んだ質問もして「相手はビザ目的ではないのか」「本当に相手を愛しているのか」「信用できるのか」と揺さぶりをかける。
まあこれも愛の試練と言ったところだろうか。パートナービザを申請したことのない自分としては他人事だったが、国際結婚や移住、パートナービザの申請を目指しているカップルは是非見て胃を痛めて欲しい。
あっけないラスト、そしてエンディングの歌といい、何とも皮肉が効いている。二人に爽快感はない。この二人がどうなるのかすら描かれない。
個人的には、抽選でグリーンカードが当たって、数時間尋問されただけでアメリカのビザが取れるなら正直羨ましい。何ヶ月も何年も何十年もかけてそれでも永住権もらえない移民が世の中には山ほど居るのだから。移民チャレンジしてた自分としては数日尋問されても良いので(アメリカではないが)永住権が欲しかった。セックスの頻度も答えるし審査官の前でサンバでもリンボーダンスでもいくらでも踊ってやろう。望む国の永住権がもらえるならそれくらいお安い御用だ。
どんなに努力しても、どんなにスキルがあっても、どんなにその国を愛していても、冒頭に述べたよう9.11で人生狂わされた移民が多く居たように、タイミング次第で得られないことがあるのがビザなのだ。
徐々に追い詰められていく緊張感
微妙…
シンプルな構図だが緊迫感があって面白かった
入国審査の際に連れていかれた別室で行われる尋問。本作は潔いほどにシンプルな構図だ。スペインからアメリカに移住しようとするカップルが抱える闇や嘘が徐々に暴かれていく。2人の出会いといった回想のシーンが挟まれることもない。状況を説明するのは、空港職員の尋問のみ。密室での会話のみで話が進む。男女を分断させ、各々に対して切り込んでいく空港職員。徐々に明かされる秘密で生じる疑惑。特殊な環境下でプライベートな質問を矢継ぎ早に投げかけられるストレスったら想像するだけで恐ろしい。
そしてラスト。正直ちょっと笑ってしまった。いや、これ本当に衝撃的な終わり方だった。監督の実体験を元にした脚本ってことだったが、とても現実味のある話だった。ここまでかき回されて、このカップルの今後はどうなるんだろう。 国家の都合でここまで踏み込まれてかき回されるなんてたまったもんじゃない。さりげなく匂わせていたが、この状況を生み出したのは紛れもなくトランプだ。国の指導者の考え方次第で末端の職員はここまで失礼な言動をとるということなんだろう。アメリカの未来が本当に心配になる。
眠くなるほど長く感じた。
冒頭のニュース、トランプ大統領が云々で大体の展開は読めた。邪な、もしくは違法な入国ではないかと疑う入管職員とのやりとりがダラダラと続く。それであのラストは何なんだよ、と思った。国は国民の生命と財産を護ることが、「国民国家」としての使命、そりゃ厳しいのは当たり前でしょう。移民やグリーンカード取得ほどでなくても、観光と偽って入国し、仕事をする人も多く、それを防ぐための入管での攻防は仕方ない。外国人が他国に入国して仕事をし、対価を得て海外に持ち帰ることは、入国した国の富を持ち出すことになりその国の労働者の仕事を賃金を奪う行為だと認識出来ないんでしょうね。何でダメなの?と個人レベルでしか考えないんだろうな。そういう人が観たら、ハラハラドキドキと面白く思えるんだろうなと想像します。「日本人ファースト」に違和感を持つ、反対の人たちの感想を聞いてみたいものです。これが自由の国アメリカの実情です。ラストは映画「卒業」のダスティン・ホフマンとキャサリン・ロスの二人のように、行く末が心配になります。
現実のホラー
移民ビザを得てスペインからアメリカに入ろうとした事実婚カップルに偽装移民の疑いを持った入国審査官が個室でネチネチと尋問するという密室劇です。「拒否すれば入国できないぞ」と脅され、プライベートな携帯やPCの中まで覗かれ、私生活のあれこれまで失礼極まりない質問への返答を求められます。でも、無事入国する為にはそんな不愉快にもひたすら耐えねばなりません。その圧力と忍従の構造がまるでホラー映画なのです。
これは或る種の寓話的物語なのかも知れませんが、今やアメリカではグリーンカード(永住権)を持っていても理由も明かさず国外退去を命じられる事が頻発していると聞きます。これが単なる「お話」ではなくなったと言う事が一番恐ろしいホラーなのです。
行き過ぎた正義は人を残酷にする
ちょっと前に英語もろくにできないのにイギリス旅行行った身としては他人事とは思えない内容。
作中の夫婦はコミュニケーションできるからまだいいけど自分が尋問される立場なら代理人呼んで天を仰ぐだけだど思う。
(ちなみにイギリスは無人でパスできるやつでした)
作中に戻って、移民審査なのに過去の女性遍歴やらセックスの回数やら根掘り葉掘り聞くのも実際にそうなのだろうか?
人権侵害であっても職務に忠実であるという正義の名の下で相手は重婚(しかけ)ていた政情不安定国籍の移民希望者であれば何しちゃってもオッケーな感じなのも強者の傲りみたいなのも胸糞展開。
そしてオチも落語のサゲみたいなカットアウト。
エンドロール後にその後談的なものもなく後味の悪さとモヤモヤのまま終了。
離婚したら入国管理官のせいだと言ってもバチは当たらないと思う。
氷河期世代前後の方なら共感いただけるかと思うけど就活で圧迫面接された後に内定もらったみたいな。
誰が行くもんかと思ってしまう。
そんなお話でした
ラストのあっさりしたエンデイングを見ると、改めてこの入国審査は何だったのかと憤懣遣るたかない気持ちに襲われました。
移住のためアメリカへやって来たカップルを待ち受ける入国審査での尋問の行方を緊迫感たっぷりに描いた、スペイン発の心理サスペンス。世界各国の空港で今この瞬間も行われている入国管理の手続き。設定を絞りこみ、知られざる国境往来をめぐる攻防をスリリングに見せてくれました。手に汗握る1時間17分!
本作が監督デビューとなるアレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケスが監督・脚本を手がけ、故郷ベネズエラからスペインに移住した際の実体験に着想を得て制作。わずか17日間の撮影、たった65万ドルで制作された低予算の監督デビュー作が、、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭2023に正式出品されるなど、世界各地の映画祭で注目を集めました。
●ストーリー
スペインのバルセロナからニューヨークに降り立ったベネズエラ国籍の自称都市プランナー、ディエゴ(アルペルト・アンマン)とスペインのダンサーのエレナ(ブルーナ・クッシ)の事実婚カップル。エレナがグリーンカードの抽選で移民ビザに当選し、パートナーであるディエゴとともに、新天地での幸せな生活を夢見てやって来ます。
しかし入国審査でパスポートを確認した職員は2人を別室へ連れて行き、「入国の目的は?」密室ではじまる問答無用の尋問。拒否権なしの尋問が始まりまるのです。鉄仮面の入国審査官は、回答距離なら、入国は無理です。さらに嘘をつくと逮捕、監禁もあり得ますと高圧的な態度で回答を迫ります。
その内容たるや、個人の思想信条にも踏み込む質問に始まり、やがてセックスの回数などかなり踏み込んだプライベートな事まで執拗に聞いてくるのでした。
予想外の質問を次々と浴びせられて戸惑う彼らでしたが、エレナはある質問をきっかけにディエゴに疑念を抱きはじめるのでした。
●解説
海外を旅するものにとって、やましい点は全くないのに、空港の入国審査にはいつも緊張されていることでしょう。パスポートをめくった審査官が、上目遣いに当方をにらむ。そして「目的は?」とくるわけですね(^^ゞ
アメリカでの新生活に気もそぞろのスペインのカップル、本作の主人公たちは、しかし、ここでいきなり冷や水を浴びせられます。
これはサスペンス映画といっていいでしょう。ただしちょっと異風です。人間についての考察が一筋縄ではいきません。
第二次トランプ政権下のアメリカで、移民の強制送還や不当な逮捕が日々報道されている昨今。似たような事件が世界各国を揺るがしていて、日本人にとっても決して遠い国の話ではありません。これは、海外旅行する人にとって、いつでも誰にでも起こりうる話です。
入国審査官は、義経主従を見逃す「勧進帳」の関守、富樫のような情はみじんも感じられません。ベネズエラ出身のディエゴが、スペイン生まれのエレナに伏せていた過去が暴かれていく過程におののきました。
ほぼ全編、待合室と、尋問が行われる狭い部屋での尋問の形で展開します。謎に包まれた密室のやり取りを視覚化した着眼点がいいです。形式的で単調と思われた入国審査から材を得て、非日常のドラマを引き出したところが秀逸です。
最初は女性審査官1人の、次いで男性審査官と2人がかりの。その尋問の冷酷で卑劣なことといったらない。性生活や内面にまでずいと踏み込むのだ。いくら国籍取得を目的とした偽装結婚を取り締まるという大義名分があるとはいえ、アメリカ入国を人質にして、何でも強権的に質問するのは、甚だしい人権蹂躙と言わざるを得ません。
またディエゴの離婚歴などかなり突っ込んだプライベート情報を審査官が入手していることにも驚愕しました。国際的に探偵でも雇って調べているのでしょうか。
その結果エレナの知らないディエゴの過去が暴露され、審査の意図が読めてきます。ディエゴはエレナを利用して、アメリカ移民を画策したのではないかと。
●感想
これは明らかに排外主義への抗議というそうです。同時に、本作では、官僚たちの権力ずく、逸脱ぶりに憤っています。さらにあんなに仲のよかった二人が険悪になっていくなかで、人間関係の脆さを愁えています。そして人種的偏見を嘆いているようにも見えてきました。
普通、物語は「始まりと、半ばと、終わり」で成りたちます。ところが本作は、終わりがすでに始まりになっているのです。
それにしても、ラストのあっさりしたエンデイングを見ると、改めてこの入国審査は何だったのかと憤懣遣るたかない気持ちに襲われました。
入国審査官の態度や言動は侮蔑的ですが、核心をつく質問もあります。国境という目に見えない境界のありようを考えさせ、移民政策が厳格化する時代を射抜いているのではないでしょうか。低予算の監督デビュー作ながら、各国の映画祭を席巻したのも納得です。
こんな気持ちで入国できるかよー
Passport
移住のために受ける入国審査でのトラブルを描いたという視点が気になりましたし、上映時間のコンパクトさも良さげだなと思い鑑賞。
尋問、尋問、尋問、といった感じで息が詰まるような77分でした。
自分はまだ海外に行った事がないのでこういう事が実際に起こっているのかなと思うとゾッとしますし、圧をかけられるのが苦手なのでとにかく気分がズーンとするのも特徴的でした。
初っ端からちょっとした違和感を感じさせつつ、なんやかんやで入国審査までたどり着く事実婚のパートナーの2人が検査で引っかかって個室まで連れて行かれての入国審査がスタート、ここまででも警備員やスタッフの圧が感じられるのですが、個室に入ってからはもう圧迫面接じゃないですか…ってくらい詰められるのでまぁ〜心臓に悪かったです。
飛行機に乗っているところから微妙に行動をしていたりするんですがほとんどは関係なく、密室で起きる外的要因なトラブルも特段関係無いので、映画的盛り上がりのためのアクションはちとイマイチだったかなと思いました。
これまでのパスポート含め、なぜ移住をしたいのかあたりまでを聞くのはそりゃ当然だよなと思いつつも、どんどん質問はエスカレートしていき、それでいてプライベートにもズカズカ踏み込んでは荒らしまくっていくので中々にタチが悪いです。
あんな事そんな事まで聞いて2人がギスギスしていったり、なんか踊らせてみたり、実体験でこんなもん経験したら移住するどころか旅行するのも嫌になってしまうよ…ってくらいキツいものがありました。
ラストはあっさりと、だけど強烈なまでに理不尽な終わり方。
これを狙いすましたかのようなラストだったので肩透かし感はありましたが、何気ない質問の連続で関係性がギクシャクしたまま入国とかいやらしすぎるわ〜となりました。
エンドロールにあっという間に突入していくので呆気に取られたのもまた事実です。
ワンシチュエーションものとしては短い上映時間のはずなのに体感がとてつもないくらい長く感じましたし、アンビリーバボーを見ているかのような淡々とした感じは好みが分かれそうですし、実際あんまし好きでは無かったんですが、一種の擬似体験と思うと良い経験になったかなと思いました。
いつかはアメリカに行ってみたいもんですが、別に大した隠し事は無いのでサクッと入国させてくれることを願います。
鑑賞日 8/4
鑑賞時間 16:05〜17:25
全215件中、101~120件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。