入国審査のレビュー・感想・評価
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むしろ不法移民を受け入れたくなった
「入国審査」を題材にした、よくできた密室会話サスペンスを想像していたら、全然違った。
「借りたままのボールペン」「妻の糖尿病」「ずっと鳴り響く工事の音」など、あからさまな伏線にしか思えない要素が、終盤に絡み合って事態が解決するんだろうなと思っていたが、最後まで観ても本筋と関係ない。
それが逆に新鮮だった。
この映画は「入国審査」をリアルに体験させるような映画だった。
ただし、普通の「入国審査」ではなく、移民を目指す人への差別的な「入国審査」を疑似体験させる映画。
ちょうど今現在映画館で上映している『アイム・スティル・ヒア』の、軍人による取り調べシーンだけを77分に引き伸ばしたような内容に感じた。
海岸旅行と縁がない人間なので、スマホのパスワードを教えるように言われて伝えたらIT部門の人間がスマホを徹底的に調べ始めたり、性行為を週に何回しているのかを尋ねられる場面を観ていて、「海外旅行なんて絶対行きたくない」という気持ちになった。
職員が性生活に関する質問をする場面で、伊藤詩織さんが性暴力にあって警察に行ったら処女かどうかを尋ねられた話を思い出した。
スペイン人は移民として認めるがベネズエラ人は認めない。
このままだとベネズエラ人の夫ディエゴが移民してきてしまうので、それを阻止すべく、移民ビザを持っている妻エレナと別れさせようと、アメリカの職員たちが奮闘する話。
そのために行われる、心を踏みにじるような尋問の数々。
観ていて職員たちのことが蹴りたくなった。
ネットで調べたら尋問とは「口頭で問いただすこと」とのこと。
職員たちが夫婦にやっていることは尋問というより洗脳に近いと感じた。
近年のトランプ大統領が行なっている大規模な移民排斥のニュースを見るたびに酷いと思いつつも不法移民ならしょうがないのかな、と思っていたが、この映画を観てその考え方を改めようと思った。
人を騙すことはダメなことだが、彼らの中には「不法移民となるか、いつ命を落としてもおかしくない環境に居続けるか」の二択しかない人もいるわけで、そういう人が不法移民になるのも仕方ないのでは、と思った。
例えるなら、ネグレクトの親に育てられている子供がまともに食事を出してもらえず、空腹のあまり食料を万引きしてしまった場合に、罪を犯していたとしてもその子供を責めるのは違う気がした。
職員側(さらにいえば移民難民に反発するような多くの人)の理屈としては「貧困で移民難民になりたがる人間は悪さをするに決まってる」ともしかしたら考えているかもしれない。
この映画に出てくるベネズエラ人の夫ディエゴは弱い人間だとは思うが、悪い人間には見えなかった。
職員が急遽いなくなり、部屋で一人きりになったディエゴの取る行動はダメすぎではある(ずっと重苦しい雰囲気が続くこの映画で唯一の笑える場面)。
しかし、彼はベネズエラからスペインに渡った後、一生懸命勉強し、真面目に働き、だからこそそんな彼を見ていたエレナは、国籍の違いを乗り越え、親の反対を押し切り、事実婚を結んだわけで、その時点で悪人には思えない。
世の中に蔓延する、国籍で人間性を決めたがる病魔にはうんざり。
最初は威勢の強かったエレナが、職員たちの尋問によって、震えながら涙が止まらなくなるまで精神的に追い詰められていく。
しかし、職員たちの最終的な要求に対し、エレナがどう応じたかは、この映画ではカットされている。
最後の場面で「入国審査」といえばお馴染みのあのセリフが出てくることで、エレナが職員たちに対してどう応じ、ディエゴに対して本当はどう思っているかがわかる演出になっていて、上手いし感動的だった。
一瞬そのセリフの真意が理解できず呆気にとられる夫婦の表情もたまらないものがあった。
オチが弱い?
もうちくっとスリリングなのかと想像してた。
入国審査の緊張感はよく理解してる。
今作は「移民」ってオマケつきだった。
あぁ、なるほどそういう流れになっていくのかと、フランス映画的な切り口に思えるも、そこまで深く抉ってはくれない。
男の方に、企てがあって、主に彼の秘密が暴かれていく。ほぼほぼ土足で踏み荒らすような詰問攻めである。
ソレもそのはずで、トランプ政権下の軋轢とかも絡めてあるんだろうとは思う。
が…100%会話劇で、抱えてる秘密が法には触れない事でもあるので緊迫感はどこへやらで…。
移民の為に、男は女を利用するみたいな事に。それを捜査官達が解き明かし女性を説得するみたいな展開に。
…面白くはあるけれど、メインの柱としては弱いような気もしなくはない。
最後のオチは不条理この上なく…この期に及んでコメディか?と、フッと笑えたりもする。
お役所仕事なんか、そんなもんだよねー
結局は入国を許可される。
んだが…男女間のゴタゴタは宙ぶらりんのまま終わった。
入国審査で試される夫婦の疑念
入国審査という誰もが少し不安に思う手続きを題材に、スリリングな密室心理サスペンスとして描いた発想と手腕がすばらしい。
スペインからの移住でニューヨークの空港に降り立ったディエゴ(アルベルト・アンマン)とエレナ(ブルーナ・クッシ)の事実婚のカップルが入国審査でパスポートを見せると何か問題があるらしく別室に案内される。そこから始まるのは冷徹な審査官によるプライベートを抉り出す尋問(職務を全うしているだけなのだが)。
夫のディエゴはベネズエラ出身でその過去が移民の目的が問題になったようだ。そして尋問される中で妻に伏せていたある秘密が暴かれていく。
この映画が初監督作だというアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスチャン・バスケス両監督は登場人物も少なく単調になりがちな密室劇をカメラアングル、サウンド、スマホ、英語・スペイン語の使い分け、あえて音楽を廃すること、編集などを駆使し、手に汗握るサスペンス劇に仕立て上げた。特に音の使い方、とりわけ夫の不安を煽るような工事音の使い方が秀逸。
移民の国アメリカが移民に厳格になる皮肉的な現況とそれでも夢を追いやってくる夫婦の愛が本当なのか手段なのか?入国審査という限られた舞台に社会性、夫婦愛を秀逸に描き込んだ本作が各国の映画祭を席巻したのも納得だ。
ん?え?あ?で?〇?✕?
他では起こらないドキドキする体験
ドキドキする体験の映画化ですが,入学試験とか入社試験の面接と違って,相手が圧倒的な情報を持っていて,合法的に,根掘り葉掘り,あーでもないこーでもないと聞いてきます.質問も一切受け付けません.
こういうことって,入国審査の場面以外,どこにあるのでしょう?そう考えると,この映画の着想の見事さに感心します.
尋問(審査)を受けていると,自分がなんとなく思っていたことが,しだいに,そうだったんだと気が付くこともあり,だんだん自分という人間が何者かがわかってきます.
最後の審査官からの一言を,主人公たちはどう感じたのでしょう?このあと,二人はどうなったのでしょう?そんな疑問を抱かせる,映画の終わり方でした.
ようこそ、アメリカへ!
こんな終わり方か…と思った。
そして、Congratulations♪と歌が流れ始めて、これはブラック・ユーモアだったのだと理解した。
アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケスという二人が共同脚本・共同監督のスペイン映画。このコンビは、これが長編デビュー作とのこと。
自主制作のような低予算・短期間で制作されているのだが、なかなか大胆な映画だ。(安普請であることは明白)
本国では配信用コンテンツだったらしい。
ある男と女がタクシーの後部座席にいる。男がパスポートを忘れたかもしれないと、タクシーを停車させる。夫婦らしきこの男と女は、二人でアメリカに移住しようとバルセロナを発つのだが、バルセロナのパートはこのタクシーの中だけが舞台で、既に男の挙動に違和感がある。
道中、旅客機の中だけが舞台。ここでも男の挙動を追うが、何かが起きそうで起きない。
そしてニューヨークに着く。ここからは空港内だけ、というよりほとんど入国審査の取調室と待合所が舞台。
徹底した節約ぶり。当然だが、ニューヨーク・ロケなど行われていない…と思う。
何が引っかかったのか、男と女は入国審査官に個室で尋問されることになる。審査官は男と女の2人。ほぼこの4人だけの密室会話劇が展開する。
…そういえば、2組の夫婦による密室会話劇『対峙』(’21)というアメリカ映画は傑作だった。
高圧的な審査官が繰り返す質問で男と女の背景が段々と見えてくるのは、前述の『対峙』も巧みなセリフ構成だったのと同様に、脚本が巧みだ。
男と女は事実婚の関係で、それぞれの国籍は違うのだった。
ビザの取得やグリーンカードの申請についての質問から、入国審査に無関係に思える内容、さらには男の過去にまで質問が至り、神経を逆なでして追い詰めていく。
本当に何もやましいことがないなら、こんな理不尽で恐ろしいことはない。
たが、必ずしも清廉潔白とは言えないのではないか、と見えてくるのだから、観ている側にとっても怖い。
男と女は途中で分断されて、1人づつ個別に尋問を受ける。
ここからがさらに怖い。
女が横にいる場であえて男に質問し、今度はお互いが見えない場で質問するという、狡猾な尋問で揺さぶり続けられる、男…と女。
最初に違和感があった男の挙動。ニューヨークの入国ゲートの列では過剰なほど不安げな様子だ。
列の前に並んでいた男も何かありそうだったり、別室に移動させられたその待合所で同じように待たされている人々が妙に無気力に見えたり、天井の何かの工事が行われていてその騒音が遠くにかすかに聞こえたり、なんとなく不安を煽る演出が随所にあって…怖い。
男=ディエゴ役のアルベルト・アンマンはアルゼンチンに生まれ、軍事独裁政権を逃れてスペインに渡ったという。
女=エレナ役のブルーナ・クッシはスペイン・バルセロナに生まれ育ち、モダンダンスンの経験があるという。
この二人の役者の背景が、役のキャラクターにそのまま反映しているようだ。
さてさて、この取り調べを受けたことで変化が起きた二人にとって、極めて事務的に係員から告げられた審査結果が、吉と出るか凶と出るかは映画の先のまた先にならないと判らない。本当に怖いジョークだ。
斬新ですね
こっちも緊張
誰もが経験する緊張感・・。
海外旅行の経験がある方なら、
誰もが経験するアレをうまく表現してる。
謎や衝撃展開を期待せず、
このシチュエーションの中での、会話の駆け引きや、
巻き込まれた人の心理描写を感じてほしい作品。
次回作も期待したい監督さん。
やられたーーー!
77分の小気味よい長さの作品。
しかし、この長さに関係なく大変濃密な会話劇を
見せてくれます。
ほとんどワンシチュエーションの舞台で繰り広げられる
入国審査というイベントを通した人間模様と、
「一体真実は何処にあるんだ?」
と、どんどんどんどん引き込まれていきます。
最初の目的が時間が経つにつれ変わっていく様が
見事です。でもって、そもそもその目的が形骸化して
結局もたらされる結果に大いなるサスペンス要素と
エンターテイメント性を感じることができる一本です。
派手じゃない、予算も少ない(ハズ)、けどね
こんなに面白い作品が作れるんですよ!の見本のような
作品でした。
どうぞ!ランチ前にディナー前に、時間がポンと空いてしまった
昼下がりにご覧いただきたいです!
見事なエンディングです。
この人何?を考え続けたい人におすすめ
事件が起きるわけではないが
こういう終わり方か! まぁ・・行政の判断はあくまで、書類に論拠する...
こういう終わり方か!
まぁ・・行政の判断はあくまで、書類に論拠するからね・・。
こんな感じで、別室に連れて行かれて、入国審査されたらビビるよなぁ・・。
以前・・オーストリアの出国時の税金還付の申請で・・拳銃をぶら下げた係官にキレられて・・怖かった思い出・・。前に並んでいた・・お隣の国のグループが騒がしくて・かつ・・係官の言う事を聞かず・・逆ギレしたりしてて・・係官もかなりナーバスな状態・・・そこに・・また、同じ東アジアの人間が来て・・「またかぁ・・」とイライラをマックスにさせた様で・・フラストレーションの捌け口にされた感じ・・。
まぁ・・怖いよね・・。入国、出国での、痛くない腹を探られる感じの・鋭い目でチェックされる感じ・・苦手・・。
審査官も・・映画のあんな感じだと・・性格悪くなるか・・性格悪い人間というか・・鋼鉄のハートを持った人にしか務まらないよなぁ・・。
どう展開するか、心理ドラマの様で面白かったです♪
あのあと、あのカップルはどうなるのだろう? どうなると思いますか?
上手く風刺を効かせた良作。
主人公カップルに浴びせられる無遠慮な質問。
本当にそんなこと聞く必要ある?入国審査と関係なくない?何この質問?
理不尽とも言える審問をされ審問官からは自国に帰ったらどうだと突っぱねられる。
アメリカへの入国は叶うのかどうか。厳しい審問によりボロボロになった主人公達に掛けられるラストの言葉。
『アメリカへようこそ』。
アメリカ(他国)に移住することで経験するであろう無遠慮さと無神経さを入国審査という形で主人公達に突き付けるという、上手く風刺を効かせた良作。
胸の暗幕にストンとナタが落ちたラストシーン。
息も詰まる緊張感の末にポイッと投げ込まれるオチが最高過ぎるマルチリンガル密室サスペンス
ベネズエラ人とスペイン人のカップルが移民ビザでNYの空港に降り立ち入国手続の途中で別室に連れていかれて想定外の目に遭う話を緊迫感たっぷりに描いた77分・・・これがベラボーにオモロイ!
私自身先々月ブラジルに行った際にも連邦警察とひとしきり揉めて帰ってきた人間なのでこの設定は非常にリアル。空港職員の横柄な態度もこないだ米国で見てきたのとクリソツ。スペイン語とカタルーニャ語と英語が乱れ飛ぶ物語を日本語字幕で観るというなかなかにエキセントリックな環境もまた外国人が自国から一歩外に出たらこんな目に遭うかも知れないっていう恐怖をガッツリ増幅してくれます。それでハシゴを軽快に蹴り飛ばすようなオチが最高過ぎてエンドロールが終わるまでニヤニヤが止まりませんでした。いやもうこれは日本人ファーストとか言うてる人間が正座して観なあかんやつです。しかしエンドロールが全部カタルーニャ語表記という映画は初めて観ました。
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