「【火のないところに】」入国審査 abuさんの映画レビュー(感想・評価)
【火のないところに】
77分という短さにもかかわらず、なぜか“何時間も取調室に閉じ込められている”ような感覚にさせられる。
監督自身の実体験がベースとのことだが、入国審査官のあの威圧感と理不尽さは一体なんなのか。
態度も顔も、ひたすら腹が立つ。
踊れと命じる権限があるのか?
そんな国なら、こちらから願い下げだ――そう叫びたくなる。
しかし、不満が爆発しそうになった瞬間、
凍りつくような“風向きの変化”が訪れる。
この一瞬で映画の空気がガラリと変わるのが見事。
ほとんどが尋問シーンだけで構成されているにもかかわらず、
脚本・演出・俳優の力だけで、ここまで濃密なサスペンスに仕上げてしまう。
スペイン映画らしい、しつこさと執念が画面の隅々に宿っている。
風刺の効いたラストも痛烈で、ある意味では爽快。
もちろん、自分ごとでなければ……の話だが
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