「ちぐはぐ感がある」入国審査 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
ちぐはぐ感がある
オープニングからラジオ音声でトランプが移民を厳しく取り締まるってのが流れるのね。物語の背景をさりげなく入れてくるのはうまいなと思ったの。
それで空港に向かうんだけど、旦那さんが、なんか迂闊な感じなんだよね。「パスポートどこやったっけ?」とか。飛行機の中で薬を飲もうとすると服の上にこぼしちゃったり、税関に必要な書類をなくしちゃったりね。
対照的に奥さんはしっかりしてるね。
この辺のキャラ描写もうまいなと思ったの。
でもさ、まずこの物語、トランプの背景あんまり関係ないよね。
徐々に明らかになる事情を聞いてるとね、これ、別室で尋問するのも当然だろっていう気がするの。
登場人物の性格描写も、ほぼ効いてない。
旦那さんの迂闊さや、奥さんの強気な性格が尋問を悪化させることはないの。
最初の部分で「うまい」と思ったところが後のストーリーに効いてこないから、なんだったんだろうなって思ったよ。
まあそれで、背景もキャラクターも関係なく、尋問が進むにつれて「実は……」「実は……」って、主に旦那さん側の事情が明らかになってくんだよね。
そこは「なるほどね」とは思うんだけど、「普通の人はやらないけど、この旦那さんならやっちゃうな」感がないから、そんなに感情移入もないの。
制作側が準備した事情を順番に教えてもらってるだけなんだよね。
明らかになった事情によって、旦那さんと奥さんの関係が怪しくなっていくんだけど、ここも「この二人なら、そうなるよね」ってのはないの。
「こういう風に事情を明らかにするから、こういう風に感じ悪くなってね」っていう感じなんだよ。
それでもラストは「どうなるんだろう……」と思って観るから、少しは良かったね。
“Welcome to U.S.A. !”で終わるけど、「なら最初から審査通してくれよ!」って感じはあった。
尋問を通じて、何かが明らかになったってことないもんね。はじめから通すか、通さないかのどっちかだったんじゃない。
そしてこの話、戯曲の作りだね。
尋問の別室でのワンシチュエーションでやれる。
その方がソリッドで良かったんじゃないかな。
面白いは面白いけど、なんかちぐはぐなところある作品だったよ。