劇場公開日 2025年8月1日

「松竹さんにもよく考えてほしい「物事の本質」」入国審査 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 松竹さんにもよく考えてほしい「物事の本質」

2025年8月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

夏休みと重なるこの時期、大概のシネコンは宣伝予算も大きめで客寄せしやすい作品中心の「魅力に欠ける番組」。そのため、私好みのインディペンデント映画はミニシアターに集中してスケジュールもタイトになり、結果的に劇場鑑賞を諦めることも少なくありません。なお、本作『入国審査』は配給が松竹であるにも関わらず、新宿ピカデリーは上映初日から一番小さいスクリーン10に追いやった結果、ファーストデイの本日は朝一番からフルハウスの客入りです。(丸の内ピカデリーに至ってはお隣のヒューマントラストシネマ有楽町に任せて上映予定なし)
ディエゴ(アルベルト・アンマン)は、彼のパートナーであるエレナ(ブルーナ・クッシ)を伴い、希望叶って手に入れることが出来た「移民ビザ」によって米国に向かいます。ところが、入国審査にあたり別室へ促される二人に待ち受けるのは…
本作は上映時間77分と短めの作品であり、その大半は入国審査における尋問シーンで会話劇のため、ネタバレを避けてレビューを書くのが難しいタイプの作品です。ちなみに私の観た回ではどこからかイビキも聞こえてきましたが、展開するごとに徐々に追い込まれるような巧みな構成で、ストーリーに集中さえできれば決して退屈はしません。
映画が始まって早々、出国前からどこか落ち着かない様子のディエゴに、観ているこちらもつられて感化されます。誰しも経験したことがあれば、たとえ何一つ疑われる余地はなくともついつい緊張してしまう「入国審査」。一方、新生活への希望から高揚感高めでやや過敏なツレ(エレナ)の態度も相まって、余計にドギマギが止まらないディエゴの様子に最早目が離せなくなります。そしていよいよ尋問が始まり、逃げ場のない状況に追い込まれて質問攻めにあう二人。隠された事実を詳細まで引き出すためにはディエゴ等が話しやすいようにスペイン語を使い、また、嘘や誤魔化しを許さず直感的に答えさせるためには英語を使わせたりと、百戦錬磨の審査官たちはテクニックとコンビネーションを駆使しながら、付け入る隙なく「物事の本質」へと二人を追い詰めていきます。
ちなみに、米国映画レビューサイトの高評価に対し、少なくとも映画.comでは現時点(8/1)においてやや点数低め。他の方のレビュー未読のため違っているかもしれませんが、本作、賛否を分ける要因はおそらく「オチ」かなと思います。そもそも日本のトレーラーはやや煽り気味で、エンタメ感すら想起させているため観終わって肩透かし感もあるかもしれません。しかし、私としては低予算映画ながら面白さは充分に担保されていますし、重要なのはその結果よりも「物事の本質」であって、それを見事に引き出したところで詰んでしまっており、後は蛇足と考えればこの「投げっぱなし」なオチもアリだと納得しています。私は充分に楽しめました。

TWDera
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