入国審査のレビュー・感想・評価
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実体験から写し取られた水際の攻防が浮き彫りにするもの
77分ワンシチュエーションという非常にコンパクトな作品だが、佳作のショートショートを読んだ後のような余韻があった。
比較的パスポートの信頼度が高く、内紛もない日本に国籍を持つ私には十分理解が行き届いていない面もあるかもしれない。それでも、あのように今後の生活を左右する公的な審査を受ける場で疑いの目を向けられた時の心境を想像するとおのずと落ち着かない気持ちになり、審査の顛末を固唾を飲んで見守っていた。
(なお、近年は日本人に対する入国拒否も増えているらしい。売春目的と疑われるケースが多いとか)
ディエゴとエレナが別室に通されてからの会話劇には、例えば審査官の側があからさまに悪役的な振る舞いをするとか、逆に2人に対する入国拒否が決定的になるような彼らの秘密がバレるとかいった、わかりやすい善悪の色付けやダイナミックな変化はない。
それでも、何の説明もなく威圧的に続く尋問、その中で次第に明らかになるディエゴたちの人物像、暴露されるディエゴの秘密、そこから崩れ始めるエレナのディエゴへの信頼、といった展開が無駄なく配置されていて、緊張感を途切れさせない。電気工事の騒音や消灯のアクシデントも、2人の不快感や不安を暗示するような演出として効いていた。
実際の入国審査であそこまで突っ込んだ尋問をするのかは知らないが、変に劇的な展開がないせいか、あるいは監督の実体験に基づくシナリオであるせいか妙にリアリティがあり、入国審査のやり取りだけで結構人間描写ができるもんなんだなあ、と思いながら観ていた。
アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケス両監督のインタビューを読むと、アメリカの入国審査の厳しさ、非人道的な側面への批判のニュアンスを感じるが、作品自体からは批判のメッセージを前面に出している印象は受けない。ディエゴが単なる無辜な移民かどうかという点が曖昧に描かれていることがその原因なのかもしれない。
序盤、2人のことを何も知らず審査官の態度だけを見ていた時は、仕事柄とはいえ理不尽な厳しさばかりが気になった。ところがその後のやり取りでディエゴたちの状況と審査官が彼を疑う理由がわかってくると、審査官側の口調はともかく、その疑念には一理ある気がしてきた。
そしてディエゴがエレナと付き合う前にネットでしか繋がりのない女性と婚約までしていて、それをエレナに隠していたことがわかり、その上審査官に対してエレナに説明したと嘘をついたことで、私のディエゴへの信頼が急落した。
審査官の疑いが事実だとしても驚かない……彼への評価がそこまで変質した直後、2人の入国が認められてサクッと物語は終わる。
色々な見方が出来る映画だと思う。権力を笠にプライベートな事情まで詮索し、2人の信頼関係を引き裂いた入管のやり方は非人道的だ、という主張を読み取ることもできる(監督たちの意図はこれなのかもしれない)。
または、そういう政治的なメッセージとは別に、心理スリラーとして娯楽的に楽しむこともできる。人生の節目で、ある意味究極に不安定な立場に置かれたカップルの寄る辺ない思い、そこに追い討ちをかける2人の関係の亀裂。基準の不明瞭な他人の判断に未来が壊される恐怖。
観客の視点で言えば、話が進むにつれ各登場人物の見え方、信頼度のようなものが変わってゆくのが単純に面白い。審査官は疑心暗鬼かもしれないし、的を射ているかもしれない。ディエゴの小さな隠し事と嘘はありがちで悪意のないものかもしれないし、あるいは審査官の推理通りの下心があるかもしれない。この変容や曖昧さがまたリアルで、描写のバランスが絶妙。
個人的には政治的主張より心理的スリルや人間描写に面白みを感じたが、それは当事者感覚がないからかもしれない。
入国審査する側の背景も考えると興味深さが増す
南米出身の夫とスペイン人の妻が、アメリカ移住をしようとして入国審査に引っかかる。それだけのことをじわじわと意地悪に描く約70分。ベネズエラ人である監督のスペイン入国時の体験がもとになっているそうで、決してトランプ政権下のアメリカに特化した話ではないのだろうが、自身もラテン系のマイノリティである入国審査官など、主人公夫婦だけでなくそれぞれの背景を考えながら観ると、より多層的にアメリカが抱えている構造的な問題が見えてくるように思う。ラストは好みが分かれるでしょうが、この映画で描くべきことはここで終わりですという覚悟が見えて好きです。
他人事ではない海外旅行あるある
海外旅行の経験がある人なら、入国審査の列に並びながら審査官との最低限のやり取りや、国によっては必要書類に怠りはないかチェックしたことがあるはず。目的地はドアを出たすぐこそなのに、別にやましいことはないのに、直前で待ち構える審査を無事通過できるかどうか心配になる。海外旅行あるあるである。
2人のベネズエラ人監督が実際にアメリカ入国の際に巻き込まれた災難にインスパイアされた本作、タイトルもズバリ『入国審査』は、誰にとっても他人事ではない審査の中身を、ほぼ取調室に限定して描く密室サスペンス(またはホラー)のよう。サスペンスたる所以は、取り調べのターゲットにされる主人公の男女の背後にある意外な事情が、2人の関係性が、冷徹な審査官の容赦ない尋問によって解き明かされ、微妙に変化していく点にある。そしてもう一つ、なぜそこまで審査官たちは彼らの入国目的を怪しがり、問い詰め、自尊心を踏みつけにするのか、その理由が不明なのもタチが悪い。不安感と威圧感、それがテーマであり、最後に待ち構える痛烈なオチに繋がる重要な要素。世の中には法に則った理不尽があることをこの際覚えておこう。
とは言え、アメリカへの入国審査で必要なのはESTA(電子渡航認証システム)が入力された有効期限内のパスポートのみ。審査官に口頭で聞かれるのは滞在期間と目的だけのことがほとんどなので、この夏、アメリカ旅行を計画している人は安心して旅立っていただきたい。
ショートムービーかな?
恋人たちの過去を入国審査官があからさまにする。というシチュエーション、男をスノッブ、女を家庭環境から自立していない設定。
シネマ鑑賞には、いつもスクリプトを読んでから観ることことにしています。
もちろん、英語翻訳ソフトでも著作権の問題で概略の内容にはなります。
本件はAIに検索したところ、約70%がスペイン語等で英語の部分は少ないものでした。
粗なストリー;恋人たちの過去を入国審査官が質問攻めでお互い隠してしたことが、あからさまになる。
というシチュエーション。男をスノッブ、女を家庭環境から自立していない設定でストリーが進んで行く。
女性審査官が男の深層心理を鋭く掘って行き、彼の本心を尋問する。別室で女の不安定な生活力を突いて行く。審査が終わった二人の心はそれまでの二人ではない。『この後の二人の関係は修復しようがない。』
と個人的に思った。特に女性側、男性はなんとかしたいという、役者の表情がとても上手かった。
Welcome to the United States!
7月が誕生月だったのでSMTから1回限り1,100円で見られる誕生月クーポンが来ていたのをすっかり忘れていた。有効期限は2ヶ月で8月29日まで。土日は使えないという事だ。他劇場からも誕生日クーポンが来ていたが、こちらは期限が誕生日から2週間だったので使わずじまい。
8月29日(金)
本日から上映5週目に入り1日1回上映になっている「入国審査」を誕生日クーポンを使用して新宿ピカデリーで。
グリーンカードの抽選で移民ビザを取得したエレナは、事実婚の相手ディエゴと移住するためにバルセロナからアメリカにやって来る。
ニューヨークの空港で入国審査を受けるが、二人は二次審査の別室へ連行され、女性審査官から尋問を受ける。何故入国出来ないのか?何の説明も無いままに質問される。「貴方が入国出来るかは私の裁量なのだ」と彼女は言う。質問に答えない訳にはいかない。
最初は女性一人だったが、男性審査官も加わり二人となる。理不尽と思われる尋問は何時間も続く。時には個別に。携帯電話の使用も許されず、トランジットの便の時間も過ぎる。
尋問が続く中でエレナが知らなかったディエゴの過去が明らかになって行く。
バルセロナを出発する時からパスポートを忘れそうになっていたディエゴ。飛行機のトイレで入国審査での応答の練習をしていたディエゴ。ディエゴは審査に必要な書類を失くし、審査前にエレナは書類を書くが隣のカタルーニャ語を喋る男性からボールペンを借りる。順番が来てボールペンは借りたままになる。(誰と会った?という質問もあったから)これが後で問題になるのかと思ったら、そこは何も無かった。
ディエゴとエレナ、入国審査に入る前とは明らかに二人の間の空気は変わった。
そして、…。
高圧的な態度の審査官も彼らの仕事をこなしているだけなのだ。ベネズエラ国籍のディエゴが何故スペイン国籍取得を目前にアメリカに移住して来たのか?
アメリカの永住権を与えて良い人間なのかを冷静に判断しているだけなのだ。暴力を振るう訳でもない。
入国審査ってこんなだったっけ?と思ったら、私は米国本土へ入国した事が無かった。
新婚旅行で行ったオーストラリアも、観光旅行で行ったシンガポールも、仕事関係で行った中国、香港等も別室に連れて行かれた事などない。
本作には音楽が無い。隣室の物音や話し声、廊下の工事の音等ばかりである。空港で二次審査の別室へ移動する際に廊下で照明の工事をしているのをさりげなく見せる。これが後の伏線にもなっている。
そして、ラスト。この後の二人の関係はどうなるのだろう。
わずか17日間で撮影された低予算の映画だが、金を掛けなくても、限定された空間の中でも面白い映画は出来るという良い見本だと思った。
おまけ
昔の村田英雄絡みのギャグで「Sex?(性別)」って聞かれたから「週2回って答えたよ」っていうのがあったのを思い出した(本当は「そんな事まで聞かれるの?」だったらしい)。
日本では技能ビザで入国し、延長を重ねて10年経過すると永住出来るらしい。誰の裁量なのか。
おまけ2
友人が1974年に羽田からハワイに行った時、当時入国審査はアメリカ国籍でも白人と黒人は審査ゲートが別で、日本人は黒人ゲートに並ばされて入国審査を受けたそうです。
合法でもグレーゾーンはある
自分の体験を思い出した。
どの俳優も見たことがないし、皆演技力があるので実にリアルだった。ヨーロッパに住んでいた時、一番多かった時は年間40回国外出張をしたことがある。日本のパスポートは最強でほぼフリーバス、入国審査は恐らく500回位経験しているが、僕も一度だけ別室に連れて行かれたことがある(100%悪いのは僕、1時間くらい説教されて20万円くらい罰金を払った)が、あの時のいつまで帰してくれないんだろうという不安感は今でも鮮明に覚えている。この作品を65万ドル、17日間で制作したのは凄いと思う。弱いパスポートの国から移民となって来る人達にとっては入国審査官は神様のように見えるのだろうか?エンディングは正直サプライズだったが、この後彼らはどうなるのだろうか?本当の意味でのハッピーエンドになるとは思えない。平日とは言え、200人入る劇場なのにお客さんが10人もいなかったのは残念。
背負っているもの
よし、人権侵害で訴えよう
実はコメディ? よくできた佳作だとは思うが 映画より短篇小説向きでしょ
まずは、私が個人的に聞いたお話から。出張中の北京でたまたま知り合った ある日本のビジネスマンと、日本に帰国するフライトの時間が近かったかなんかの理由で、空港までのタクシーに同乗し、車内で1時間ほどおしゃべりして過ごしたことがあります。彼は海外出張に関してはかなりの猛者で、日本を拠点にしながらも世界中をあちこち飛び回り、パスポートの有効期間中に入出国のハンコを押すページが足りなくなって増ページするほどの企業戦士でした。で、その百戦錬磨の強者ビジネスマンがアメリカでの入国審査で別室に連れてゆかれて、こってり油をしぼられたとのこと。実は彼は直近ではイランを相手にした商売のプロジェクトで忙しくてイランに何回か入出国を繰り返した後、アメリカに入ろうとしたのでした。”On business” の一言では許してもらえなかったんですね。この日本人、最近やたらと我々にとっては敵対国であるイランに行ってる、おまけに入国した国もやたらと多い、怪しい、といった感じだったのでしょうか。で、入国目的であるビジネスの内容をしつこく何度も訊いてきて矛盾がないか確認するような感じだったそうです。こっちは個人、相手は国の代表で恐らくはマニュアルあり。こっちにとっては英語は外国語、相手は英語ネイティブ。まあなんとか切り抜けて入国したそうですが、なんか嫌な体験だったみたいでご同情申しあげてしまいました。彼はアメリカ以外の国ではそんな嫌な思いをしたことはないとのことでした。まあ、でも、思い起こせば、9.11 からあまりたってない頃の話だったので、そんなこともあるだろうな、多少時間がかかっても仕方がないかとも思いました。
この作品では単なるビジネスや観光での入国ではなく、移民が絡んできます。合法的な移民に見えても実は計画的に法の網をすり抜けて入ってこようとする人たちもいるみたいで(そのことに関する是非については我々がとやかく言うことではないと思いますが)、それを取り締まるのも入国審査官の役目というわけです。本作ではそんなグレーゾーンにあると思われる入国者に対して、入国審査官が別室に呼んで訊問して揺さぶりをかけてくる様子が描かれています。訊問の対象者はスペインから入国しようとしていた男女のカップル。そのうちの男性のほうが言われてみればなるほど怪しいなあ、でも単にいちゃもんをつけられてるだけと言えなくもないよな、あたりのグレーゾーンにいて審査官に揺さぶりをかけられます。私が最初に例をあげた日本人ビジネスマンなら、どんなに揺さぶりをかけられようとも自分の出張目的を正直に淡々と説明するだけでよかったのですが(何回も同じことを説明するのは疲れるにせよ)、彼の場合は指摘を受けたことに対して多少は心当たりがあり(たぶん)、気弱な性格(たぶん)なこともあり、かなり動揺しているように見受けられました。そんな過程で連れの女性に意図的に隠してきた(たぶん)彼のある過去がその女性の知るところとなり、女性の男性への信頼が揺らぐこととなり……
そして、尋問は終わり、カップルの間には気まずい空気が流れ…… そうこうしているうちに物語は突然の大団円を迎えます。なかなかうまいオチのつけ方で、思わず「座布団一枚」と言いたくなります。ただ映画としてはどうなんでしょう。よくできたお話なんですが、実はもっと短くできたのに引き延ばして上映時間77分の劇映画にしたような印象を持ちました。これだったら、30分くらいの入国審査にまつわるお話を3篇ほど集めてオムニバスにしたらどうかと思ってしまいました。楽しんでおきながら、わがままでどうもすいません。
このお話って、つまるところ「語りもの」のような気がしました。それこそ、最初に例を出したような、旅の同行者に「昔、こんなことがありましてね」と語り聞かせるようなお話です。この映画で入国審査を受けたカップルの女性のほうが10年後に空港の待合室でたまたま居合わせた人に、10年前にニューヨークの空港で体験した入国審査の思い出話を語るというストーリーの短篇小説はいかがでしょう。この小説では映画では描かれていない、ちょっと気になる「その後」も描かれます。
「あれがあったから、私たちは……」彼女は飛びたってゆく飛行機のほうに視線を移して続けた。「そういうことってあるのよね」
理不尽
実際の入国審査はシステマチックで流れ作業。余程の不審者か渡航歴なヤバい国が含まれていなければトラブルは起きないはず。
とは言え、威圧感ありまくりな審査官に暴かれる事実婚の旦那の隠し事でどんどん話が悪い方にエスカレーションする様はブラックユーモア。
最後は不信感しかなくなり夫婦は破局。
ワンシチュエーションの勝利で短いので、ぐいぐい引き込まれた。
むしろ不法移民を受け入れたくなった
「入国審査」を題材にした、よくできた密室会話サスペンスを想像していたら、全然違った。
「借りたままのボールペン」「妻の糖尿病」「ずっと鳴り響く工事の音」など、あからさまな伏線にしか思えない要素が、終盤に絡み合って事態が解決するんだろうなと思っていたが、最後まで観ても本筋と関係ない。
それが逆に新鮮だった。
この映画は「入国審査」をリアルに体験させるような映画だった。
ただし、普通の「入国審査」ではなく、移民を目指す人への差別的な「入国審査」を疑似体験させる映画。
ちょうど今現在映画館で上映している『アイム・スティル・ヒア』の、軍人による取り調べシーンだけを77分に引き伸ばしたような内容に感じた。
海岸旅行と縁がない人間なので、スマホのパスワードを教えるように言われて伝えたらIT部門の人間がスマホを徹底的に調べ始めたり、性行為を週に何回しているのかを尋ねられる場面を観ていて、「海外旅行なんて絶対行きたくない」という気持ちになった。
職員が性生活に関する質問をする場面で、伊藤詩織さんが性暴力にあって警察に行ったら処女かどうかを尋ねられた話を思い出した。
スペイン人は移民として認めるがベネズエラ人は認めない。
このままだとベネズエラ人の夫ディエゴが移民してきてしまうので、それを阻止すべく、移民ビザを持っている妻エレナと別れさせようと、アメリカの職員たちが奮闘する話。
そのために行われる、心を踏みにじるような尋問の数々。
観ていて職員たちのことが蹴りたくなった。
ネットで調べたら尋問とは「口頭で問いただすこと」とのこと。
職員たちが夫婦にやっていることは尋問というより洗脳に近いと感じた。
近年のトランプ大統領が行なっている大規模な移民排斥のニュースを見るたびに酷いと思いつつも不法移民ならしょうがないのかな、と思っていたが、この映画を観てその考え方を改めようと思った。
人を騙すことはダメなことだが、彼らの中には「不法移民となるか、いつ命を落としてもおかしくない環境に居続けるか」の二択しかない人もいるわけで、そういう人が不法移民になるのも仕方ないのでは、と思った。
例えるなら、ネグレクトの親に育てられている子供がまともに食事を出してもらえず、空腹のあまり食料を万引きしてしまった場合に、罪を犯していたとしてもその子供を責めるのは違う気がした。
職員側(さらにいえば移民難民に反発するような多くの人)の理屈としては「貧困で移民難民になりたがる人間は悪さをするに決まってる」ともしかしたら考えているかもしれない。
この映画に出てくるベネズエラ人の夫ディエゴは弱い人間だとは思うが、悪い人間には見えなかった。
職員が急遽いなくなり、部屋で一人きりになったディエゴの取る行動はダメすぎではある(ずっと重苦しい雰囲気が続くこの映画で唯一の笑える場面)。
しかし、彼はベネズエラからスペインに渡った後、一生懸命勉強し、真面目に働き、だからこそそんな彼を見ていたエレナは、国籍の違いを乗り越え、親の反対を押し切り、事実婚を結んだわけで、その時点で悪人には思えない。
世の中に蔓延する、国籍で人間性を決めたがる病魔にはうんざり。
最初は威勢の強かったエレナが、職員たちの尋問によって、震えながら涙が止まらなくなるまで精神的に追い詰められていく。
しかし、職員たちの最終的な要求に対し、エレナがどう応じたかは、この映画ではカットされている。
最後の場面で「入国審査」といえばお馴染みのあのセリフが出てくることで、エレナが職員たちに対してどう応じ、ディエゴに対して本当はどう思っているかがわかる演出になっていて、上手いし感動的だった。
一瞬そのセリフの真意が理解できず呆気にとられる夫婦の表情もたまらないものがあった。
オチが弱い?
もうちくっとスリリングなのかと想像してた。
入国審査の緊張感はよく理解してる。
今作は「移民」ってオマケつきだった。
あぁ、なるほどそういう流れになっていくのかと、フランス映画的な切り口に思えるも、そこまで深く抉ってはくれない。
男の方に、企てがあって、主に彼の秘密が暴かれていく。ほぼほぼ土足で踏み荒らすような詰問攻めである。
ソレもそのはずで、トランプ政権下の軋轢とかも絡めてあるんだろうとは思う。
が…100%会話劇で、抱えてる秘密が法には触れない事でもあるので緊迫感はどこへやらで…。
移民の為に、男は女を利用するみたいな事に。それを捜査官達が解き明かし女性を説得するみたいな展開に。
…面白くはあるけれど、メインの柱としては弱いような気もしなくはない。
最後のオチは不条理この上なく…この期に及んでコメディか?と、フッと笑えたりもする。
お役所仕事なんか、そんなもんだよねー
結局は入国を許可される。
んだが…男女間のゴタゴタは宙ぶらりんのまま終わった。
入国審査で試される夫婦の疑念
入国審査という誰もが少し不安に思う手続きを題材に、スリリングな密室心理サスペンスとして描いた発想と手腕がすばらしい。
スペインからの移住でニューヨークの空港に降り立ったディエゴ(アルベルト・アンマン)とエレナ(ブルーナ・クッシ)の事実婚のカップルが入国審査でパスポートを見せると何か問題があるらしく別室に案内される。そこから始まるのは冷徹な審査官によるプライベートを抉り出す尋問(職務を全うしているだけなのだが)。
夫のディエゴはベネズエラ出身でその過去が移民の目的が問題になったようだ。そして尋問される中で妻に伏せていたある秘密が暴かれていく。
この映画が初監督作だというアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスチャン・バスケス両監督は登場人物も少なく単調になりがちな密室劇をカメラアングル、サウンド、スマホ、英語・スペイン語の使い分け、あえて音楽を廃すること、編集などを駆使し、手に汗握るサスペンス劇に仕立て上げた。特に音の使い方、とりわけ夫の不安を煽るような工事音の使い方が秀逸。
移民の国アメリカが移民に厳格になる皮肉的な現況とそれでも夢を追いやってくる夫婦の愛が本当なのか手段なのか?入国審査という限られた舞台に社会性、夫婦愛を秀逸に描き込んだ本作が各国の映画祭を席巻したのも納得だ。
ん?え?あ?で?〇?✕?
他では起こらないドキドキする体験
ドキドキする体験の映画化ですが,入学試験とか入社試験の面接と違って,相手が圧倒的な情報を持っていて,合法的に,根掘り葉掘り,あーでもないこーでもないと聞いてきます.質問も一切受け付けません.
こういうことって,入国審査の場面以外,どこにあるのでしょう?そう考えると,この映画の着想の見事さに感心します.
尋問(審査)を受けていると,自分がなんとなく思っていたことが,しだいに,そうだったんだと気が付くこともあり,だんだん自分という人間が何者かがわかってきます.
最後の審査官からの一言を,主人公たちはどう感じたのでしょう?このあと,二人はどうなったのでしょう?そんな疑問を抱かせる,映画の終わり方でした.
ようこそ、アメリカへ!
こんな終わり方か…と思った。
そして、Congratulations♪と歌が流れ始めて、これはブラック・ユーモアだったのだと理解した。
アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケスという二人が共同脚本・共同監督のスペイン映画。このコンビは、これが長編デビュー作とのこと。
自主制作のような低予算・短期間で制作されているのだが、なかなか大胆な映画だ。(安普請であることは明白)
本国では配信用コンテンツだったらしい。
ある男と女がタクシーの後部座席にいる。男がパスポートを忘れたかもしれないと、タクシーを停車させる。夫婦らしきこの男と女は、二人でアメリカに移住しようとバルセロナを発つのだが、バルセロナのパートはこのタクシーの中だけが舞台で、既に男の挙動に違和感がある。
道中、旅客機の中だけが舞台。ここでも男の挙動を追うが、何かが起きそうで起きない。
そしてニューヨークに着く。ここからは空港内だけ、というよりほとんど入国審査の取調室と待合所が舞台。
徹底した節約ぶり。当然だが、ニューヨーク・ロケなど行われていない…と思う。
何が引っかかったのか、男と女は入国審査官に個室で尋問されることになる。審査官は男と女の2人。ほぼこの4人だけの密室会話劇が展開する。
…そういえば、2組の夫婦による密室会話劇『対峙』(’21)というアメリカ映画は傑作だった。
高圧的な審査官が繰り返す質問で男と女の背景が段々と見えてくるのは、前述の『対峙』も巧みなセリフ構成だったのと同様に、脚本が巧みだ。
男と女は事実婚の関係で、それぞれの国籍は違うのだった。
ビザの取得やグリーンカードの申請についての質問から、入国審査に無関係に思える内容、さらには男の過去にまで質問が至り、神経を逆なでして追い詰めていく。
本当に何もやましいことがないなら、こんな理不尽で恐ろしいことはない。
たが、必ずしも清廉潔白とは言えないのではないか、と見えてくるのだから、観ている側にとっても怖い。
男と女は途中で分断されて、1人づつ個別に尋問を受ける。
ここからがさらに怖い。
女が横にいる場であえて男に質問し、今度はお互いが見えない場で質問するという、狡猾な尋問で揺さぶり続けられる、男…と女。
最初に違和感があった男の挙動。ニューヨークの入国ゲートの列では過剰なほど不安げな様子だ。
列の前に並んでいた男も何かありそうだったり、別室に移動させられたその待合所で同じように待たされている人々が妙に無気力に見えたり、天井の何かの工事が行われていてその騒音が遠くにかすかに聞こえたり、なんとなく不安を煽る演出が随所にあって…怖い。
男=ディエゴ役のアルベルト・アンマンはアルゼンチンに生まれ、軍事独裁政権を逃れてスペインに渡ったという。
女=エレナ役のブルーナ・クッシはスペイン・バルセロナに生まれ育ち、モダンダンスンの経験があるという。
この二人の役者の背景が、役のキャラクターにそのまま反映しているようだ。
さてさて、この取り調べを受けたことで変化が起きた二人にとって、極めて事務的に係員から告げられた審査結果が、吉と出るか凶と出るかは映画の先のまた先にならないと判らない。本当に怖いジョークだ。
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