ハロルド・フライのまさかの旅立ちのレビュー・感想・評価
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痛みと優しさが押し寄せるロードムービー
世界的ベストセラーの原作を、作者が自ら脚色した本作。まずもって引き込まれるのは、ジム・ブロードベントが手紙を投函するタイミングを失って、次のポスト、また次のポストと彷徨い歩き、気づくと旅がもう始まっているところだ。最初の前提条件や理由をすっ飛ばし「歩く」という行為へ踏み出させるこのナチュラルさ。歩くことはどこか祈りに似ている。また、歩を重ねることは思考や記憶の反芻にも通ずる。心や感情が動くことで、これまで断片的にしか考えられなかったこと、直視するのを避けていた現実とも、自ずと向き合えるようになっていく。そしてサウス・デヴォンからイングランドとスコットランドの境界近くにあるベリック・アポン・ツイードまで、移りゆくリアルな景色の雄大さ、美しさが、活字を超えた映像作品ならではの情緒となって感動を深めゆく。ロードムービーが生まれにくい英国の地で、またひとつ、痛みと優しさが同居する旅映画が生まれた。
徒歩の旅には願いと贖罪が込められていた。
あらすじをチラッと読んだときは、「手ぶらで、ふらっと歩き出した・・・」 それって、単なる思いつき!?なのかな と思ったけれど、それは違いました。 交通機関を使わない、 バスも電車もそしてヒッチハイクもしない・・・ それはハロルドが決めた事だった。 イギリス映画らしい手触りの、心に沁みる名作でした。 定年後を妻のモーリーンと2人で暮らすハロルド・フライ。 ある朝、旧友で元同僚のクイーニーから、手紙が届く。 800キロ離れた北部の町で癌のためホスピスに暮らしているとの 知らせだった。 短い手紙を書き、「ポストまで行ってくる」 そう妻に告げて家を出た。 しかしポストに投函できない。 郵便局まで行ってもやはり出せない。 ハロルドは、着のみ着る のまま歩き出していた。 お金は少し持っていました。 しかし携帯も着替えも歯ブラシも何一つ持たない。 「歩く事」それはクイニーへの 「生きていて‼️」 「死なないで‼️」 一歩一歩の苦行に、その願いが込められている。 ハロルドは先々で妻に電話をします。 妻のモーリーンは“置いてけぼりの妻“ 寂しさを隠せません」 それともう一つ、ハロルドとモーリーンのひとり息子デヴィッドの 回想シーン。 オックスフォード大学に受かるほど頭の良かったデヴィッド。 なのにドラッグと酒に溺れて行った息子のこと。 もう一つの悔いはクイーニーへの借りを返してないこと。 そして62日以上歩いて、歩いて、ハロルドの心も身体も清められていく。 息子の死から25年。 夫を責め続けていたモーリーン。 ハロルドの不在がモーリーンに気づかせる・・・ ハロルドの存在がどんなに大事だったか。 人生の苦しみを乗り越えてきたハロルドとモーリーンの絆が より深くなるラスト。 味わい深い良質な映画でした。 (途中で参戦した“四角い顔のワンちゃん“ (気儘な途中退場に、笑ってしまいました)
歩かなければ見えぬ物
妻と穏やかな老後生活を送っていたハロルドのもとに昔の同僚女性から「もはや余命僅か」という手紙が届きます。ハロルドは彼女と嘗てなんらかの曰くがあった事が伺えます。すると、ハロルドは彼女を励ます為に、800キロ先の彼女のホスピスまで歩いて訪れる事を決意するのでした。 彼女に残された時間が決して多くある訳でないのに何故800キロを歩くのかについて具体的な説明がある訳ではありませんが、その意味がこの歳になるとよく分かります。彼はとにかく歩きたかったんだよ。自分自身の老いを意識する様になると、歩く速さでないと丁寧に折り畳めない苦い思い出があるのです。車の速さだと、それらはまた未決棚に押し込まれて誤魔化されてしまうんだよね。 僕も無性に歩きたくなりました。
自分のための旅
誰かの旅であるようで 本質的には自分の旅という感じだった。 ストーリーはシンプルでわかりやすいが ハロルドの心境は複雑。 前に進みながら 気持ちは過去をみている。 彼自身の人生を振り返るための 懺悔のためのような旅なのかと。 鑑賞前にうけた印象とはかなり異なる印象になった。 意外と最後も、すっきりハッピーという感じでもなかったのが意外。
ある老人のロングトレイル-なぜ野宿で、装備なしで?
四国88か所のお遍路、約1300キロを歩いた経験からすると、800キロを60日以上かけて、というのはそんなにすごい距離ではないし、かなりのスローペース。しかしまあ、ほとんど運動もしていなかったご老人が、ロクな装備も持たずに野宿を続けながら歩くとすれば大変なのは間違いない。
ホスピスで最期を迎えようとしている昔の同僚をはげますため800キロ歩いて会いに行こうという思いつきは理解できる。ゴールに着いたあとの、もうほとんど意識がない状態の彼女との再会は、イギリス人らしい抑制されたシーンでとても胸をうたれる。主人公ハロルドの思いはたしかに届いたのだ。
そこに至るまでの800キロ、色々な人と出会いながらの長い歩き旅、というだけで十分にハートウォーミングな一篇になっただろうと思うが、この映画にはもう一つ、裏の物語が用意されている。
ハロルドは金がないわけでもないのに装備も整えず野宿をつづけながら歩く。ゴールまで歩くだけでは足りず、自分を罰しようとしているかのようだ。徐々に、彼が実は、平凡な老人というよりは、めったにない辛い体験をした人であり、自責の念を背負い続けていること、本人も妻も表面上は穏やかながら不幸な人生を送ってきたことがわかってくる。
ゴールにたどりつき、妻との関係にも何か良い方向への変化が生まれる予感が示唆されるけれど、それだけですっかり救われるわけではない。その意味では後味は苦い。
予想に反して、結構シリアス
一番好きだっったシーンは、冒頭。 手紙を出そうとポストまでいく、けど何か迷いがあって。 歩いて行こうと決心するところ。 ネタバレギリギリですが。 日本でいう「お百度参り」の要素=願掛けっぽい内容。 そして道中思い出す、昔のこと。 歩くってのは、無になるからね。 予想していた展開と真逆の、結構シリアスだったのが。 意外性があって、最後はシュッと綺麗に終わったのも良き良き。 ま正直、おうち映画でも良かった気もします。 ⭐️今日のマーカーワード⭐️ 「一歩が大事」
理想的なロードムービー
映画とはかくあるべし ・プロローグはいらない。背景は全て本編で語りきる ・主人公以外は引っ張らない。メインに見えた登場人物も30分以内に退場する ・最初は淡泊に始まり、エネルギッシュな中盤に入り、消沈しながら静かに終わる ・凡人が英雄になり、英雄は浮浪者となり、最後は俗人として家に帰る もう一度観たい。本当にお手本だった
希望は人を生かすのか?
かつての同僚から手紙が届いた主人公。そこには病気でもう命がないってことが!返事を書いて送ろうとしたがある想いがあってポストに投函出来ず。 そのままの歩きで800キロ離れた病院を目指して行く。自分が着くまでは生きて欲しいと病院へ連絡して。 道中に会う人たちやこの人がなぜ歩いてまで会いに行きたかったのかとか良い内容でした。人の嫌な部分も書いてあるのも良かった。
「彼はやり遂げる」
今年155本目。 ヒューマントラストシネマ有楽町で。 長い距離を歩く映画。 彼はやり遂げる。 そこで出会う人も人生を写す。 日常で1日10分でも歩く距離伸ばしたい。 思い立った日にすぐ行動に移すも大切。 最後が本当にいい。
普通に公共交通機関を使えばいいのに
本人にとっては、徒歩で向かう事が危篤の人の為になるという信念を持っているからしょうがないけど。
行く先で主人公が不幸な目に遭う様は、山野一のどぶさらい劇場を読んでいるようだった。お年寄りが虐められているのは、子どもが虐められているのを見るより辛いです。
原題は贖罪と内容そのままのタイトルでベストセラーとの事。自分は無神論者で神なんか信じている人は、身近に相談できる人がいない可哀想な人としか思っていないので全く主人公に共感できませんでした。
お爺ちゃんの演技が真に迫る神演技で全力で可哀想な人を演じていて、お爺ちゃんを虐める人も無茶苦茶憎たらしくて演出は素晴らしいので、そこは見どころです。
800km歩いてみようかと・・・
イングランド南西のサウス・デヴォンで、定年退職後、妻モーリーンと平穏な日々を過ごしていたハロルド・フライのもとに、北の果てベリック・アポンツイードから手紙が届いた。差出人はかつてビール工場で一緒に働いていた同僚のクイーニーで、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ終わりを迎えるとのこと。励ましの返事を書き、近所のポストから手紙を出そうとしたハロルドだったが、ガソリンスタンドで青い髪の少女に言われた事から考えを変え、800キロ離れた場所にいるクイーニーのもとを目指してそのまま歩き始めた。さてどうなる、という話。 サウス・デヴォンからベリック・アポン・ツイードまでどのくらい有るのか、Googleで調べたら、遠いところでも800kmまでは無かったが、750kmくらいは有ったので、まんざら誇大でもないのか、と納得した。 1日30kmくらい歩いたら休みながらでも3週間も有れば着きそうだが、家から車までしか歩かないって言ってたからちょっと無理なのかもしれないし、途中のどんちゃん騒ぎで1日2kmとか言ってた日も有ったから、62日は妥当な所かも。 ハロルドの突拍子もない行動によって妻モーリーンとの冷たい関係が改善されたり、息子を亡くした事のケジメも付けれたようで、凄く良かったと思った。 スロバキアから移民の医師がイギリスではトイレ掃除くらいしか仕事が無いと言ってたのも衝撃だった。能力が有ってもやはり異国では制度も違うだろうし、医師免許とかは簡単に取れないのだろうと。 あと、青い髪のタトゥー少女はすごいビジュアルだった。作品の中であれだけのタトゥーを入れる理由は無さそうだから、本物なのかな? 元に戻って、800kmだが、東京から西に歩くと広島県くらいらしい。 いつか東京まで歩いてみようかと、ちょっとだけ思った。
ありえないけど、素晴らしい。
ストーリーは、ありえないと思える徒歩の旅と、 25年前への巡礼の旅の二本立てで進む。 説明的でなく、とても自然に、主人公とその妻の後悔と懺悔が、 観ている私たちの身に沁みる。 旅の最中で出会う人たちの配合も素晴らしい。 得心の行く、観て良かったと思える映画です。
それでも世界は変わりはしない
大げさなお涙頂戴が無い所が良い 信じる心があろうと 奇跡なんか起きないし 誰かを救う事なんてできないし 人なんてそう簡単に変わらない けど 信じて行動する事で 確実に変わるモノもある そういう作品
徒歩のロードムービー
私が通っていた小学校は家から4kmくらいあって、小学生は毎日往復徒歩で通学。 通学路の最後の1/4が大きな川の土手で、カンカン照りの夏場、日差しを遮るものもないところ、干からびたミミズを踏ん付けながら、吹きっさらしで真冬の風をまともに受けながら、雨なんか降ると傘をさす手の感覚がなくなって、それでも学校へ行くにも家に帰るにも歩くしかないので黙々と歩くんだけど、その時に子供ながら悟ったことは、足を前に出し続けさえすれば、いつかは目的地に着く、ということ。 そして、ひとりでなら歩いている時間はそっくり「思考」の時間になる。 ハロルドは自分の中でもやもやしているものをひとりでじっくり考える時間を得た。 「歩く」ことの肉体的苦痛は、息子のこと、クィーニーに自分の罪をかぶらせてしまったこと、その恩返しもできていないことなど絡めて、そのまま自分への「罰」だったのかも 思考が進むにつれ彼は便利な持ち物を全て奥さんに託し、本物の巡礼の修行僧のようになってしまった。 ハロルドがひとりで勝手に出ていって大分自分勝手だとは思ったが、車で追いかければすぐ見つかるのに、なんだかんだ言い訳して追いかけようとしない奥さんの方にも、ひとりになることでたっぷり思考の時間ができた。 ふたりとも、半端にくすぶっていた様々な葛藤を自分の中で十分に熟成、あるいは発酵させて、ある程度の「真理」に行きついたよう。 ハロルドの行動は確かにクイーニーを助けることはできなかったが、死の直前の彼女に生きることへの張りをもたらしたし、道中で出会った若い同性の恋人がいる紳士、移民の元医師の女性、ガソリンスタンドのお姉さんに、クイーニーへのプレゼントのガラス玉の反射のように、人生に些細なきらめきは残してくれたようだ。 小さい「いいこと」がある人生は、ないより100倍も良いと思う。 息子に似ていると思って目をかけていた若者に裏切られ、しょぼい犬にも捨てられ、がっくり気力をなくして、妻に泣き言の電話を掛けてしまう気持ちは分かる。そんな日もある。 年寄りだからと言って何でも達観しているわけではない。 生きている限り、人生の「途上」なのだ。 隣人も含め、出会った人々が親切で良い人が多くてほっとした。 メディアで取り上げられた途端に有名人になり、勝手に一緒に「巡礼」してTシャツなんか作るミーハー集団なんかも現れたが、よくある「持ち上げて落とす」マスコミの餌食にはならなかったようで良かった ゴールについた彼は、相当臭ったと思う。 クイーニーに会う前にお風呂に入って身だしなみを整えられるくらいのお金やモノは取っておけばよかったのに、と思った。
こういうので泣ける人間で居続けたい
病院との二回目の電話ですーぐ泣けちゃう。 王道、お約束、ありきたり、そういうので良いのよねー! それを待ってるのよねー! こちとらねー!! 半生の振り返りは暗いし冗長だし、蛇足もあるし、無駄に長いような、欠点もある映画だとは思いますが、見たかったものは見れた。 歩き続けなければ。
ハロルド・フライの贖罪の旅
手紙を出すのを躊躇して、そのまま800Kmを徒歩🚶で歩こうなんて
思うかな〜!?という疑問が頭に浮かびながら
ハロルド・フライのロードムービーを鑑賞しました。
ハロルド・フライが会いに行く相手クイーニーに
自分が徒歩で会いに行くからそれまで生きていてくれ!と
ホスピスに伝言するわけですが、その動機が彼の旅とともに明かされていきます。
彼は息子との関係性がうまくいかず息子を亡くしていることと、
それが影響して夫婦仲が険悪となり、職場で荒れた彼の身代わりとなって
同僚のクイーニーが免職されるという、この二重苦と言いましょうか、
これらの発端が自分自身にあるという後悔から、贖罪の旅に出たというのが
本筋であろうと思います。
にしても、上映時間がちょっと長いかな〜と感じましたね。
彼の徒歩の旅がイギリス中でニュースになって、同行者が出てくるのは面白かったのですが、
それが彼の旅に与える影響はあまり描かれていない気がしておりましたが、
それでも妻が夫のことに想いを馳せ、実際に会いに来るところは、じんわり心に沁みました。
ハロルド・フライは旅を通して妻をも不幸にしてしまうところだった、と、
どこかのタイミングで気づいたと思うんですよね。
それがゆえのラストの二人で手をつなぐシーンに繋がったのだろうと思いました。
おそらく高齢のハロルド・フライが800Kmを歩ききるバイタリティがあるというのには
驚きをかくせませんし、たぶん自分の方がまだまだ若いので
負けていられないなと思いましたね笑
歩いて歩いて真のゴールへ
平凡なおじいちゃんが余命わずかな元同僚に会いに行く為ひらすら歩く歩く歩く イングランド横断というあまりにも無謀過ぎる800キロの旅…普段着にデッキシューズと過酷な旅に不似合いな姿で挑む予告編を見ちゃったら 道中も結末も気になるよなぁって事なのに 上映館が少なくないかい💦? あたふたしながら皆さんの高評価レビューを読んだらもう劇場へGOするっきゃないだろ!! 頑固者にしか思えずそこまでして何故?同僚との間に何が?憶測からのスタートでしたが スクリーン越しのハロルドと並歩するうちに徐々に彼の過去が明かされていく 過酷過ぎる一歩一歩が巡礼の様にさえ見えた あくまでハロルドが軸の物語ですが 妻モーリーの存在は大きい 彼女自身の葛藤哀しみは計り知れないが 箇所箇所で引き目に言葉少なくハロルドを見守る姿には切なさと愛しさを感じました 原作者も監督も女性だからだろうかラストの優しく淡く煌めく水晶光の演出が繊細で素敵でしたね あの光を仰ぐハロルドと関わった人達の表情も皆柔らかく穏やかに見えました スマホだけをながめ下ばかり見てる現代人に 顔を上げてみて…と伝えている様でした お向かいのおじ様もいい人過ぎた⭐️ 鑑賞料を上回る電車代を払っても本当に出会えて良かった作品です! 皆さんの推しレビューのお陰です! ありがとうございました⭐️
大分とっ散らかって
ますが、この手の“救われる”映画はとても欧米には敵いませんね。神は信じないと言い、絶望的な薬物依存が出ても、どこか宗教的なものが感じられる。 お金を持って出てたのがナイス! でも途中でカードとか戻したのは巡礼者だから? (フライ)は翔ぶとかけてたの? 又イヌが! 想起作=フォレストガンプ、白血病少女のお遍路のやつ(題名忘れ)、TheWhoの“TOMMY”。
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