「TVシリーズ放送後18年経って新作が観られる幸せ」ゼーガペインSTA モルチールさんの映画レビュー(感想・評価)
TVシリーズ放送後18年経って新作が観られる幸せ
1)ゼーガペインについて
まず、2024年の8月になってもゼーガペインの新作映画が観られる事にスタッフに感謝したいと思います。
2006年4月~9月にTVシリーズが放送されたこの作品は当時は珍しい国産の3DCGを使用したロボットアニメでした。アメリカでは1996年に3DCGを使ったビーストウォーズが放送された物の、日本では同じタカラがスポンサーの2001年放送の電脳冒険記ウェブダイバーのCGの作りがプアだった事に落胆した記憶があります。
それから5年経ち、ロボットアニメの老舗のサンライズが世に送り出しした作品がゼーガペインでした。
さすがに草創期の3DCGであるため、電脳戦機バーチャロンよりは解像度は高い物の、まだ拙さも目立ちました。が、ループを繰り返す儚い世界感や青春や三角関係などが素晴らしく、根強いファンがついた作品であります。
2)ゼーガペインSTAについて
今回の劇場版では30分間でADPとTVシリーズを振り返るレミニセンス編と、60分でTVの続編となるオルタモーダ編の2部構成になっています。
オルタモーダ編はほかの方が触れられているように、TV第1話のアバンタイトルで自爆したキョウver.1が主役の物語です。
ただ、キョウver.1も記憶喪失からADPで会話をしたルーパを初対面と認識し、観客もキョウのように戸惑いながら展開について行くような作りになっていました。
キョウver.1の復活については、賛否両論あると思います。
ただ、私としては大賛成。
スタッフはメインキャラクターに対して公正であろうとする態度が強い事はスピンオフ小説の『エンタングル・ガール』で感じていました。
自爆前のキョウがシズノとそうであったように、カミナギ・リョーコはカノウ・トオルに恋心を抱いていたのでした・・・というように、三角関係で押し出されていたキャラクターにもきちんと救いを与えてくれるのがゼーガのスタッフなのです。
というわけで、TVシリーズの後半では寂しい姿ばかり見せていた我らがシズノ先輩にやっと救いがもたらされるのです。
舞台挨拶でも川澄綾子さんが仰っていたように、これこそがダブルヒロイン物の最適解だと私も思います。
また、ロボットアニメで続編を描くときに前作の主人公をどうするのか、という命題にも新しい答えをもたらしたな・・・と感じています。
個人的にはもう一人の自分というモチーフは、ゼロ年代の作品で言うと谷川流の『学校を出よう!』が時間軸の違うもう一人の自分と出会って、自分同士なのに妙に噛み合わない掛け合いをして助け合っていくストーリーを思い出し、ノスタルジーをかき立てられます。
ハルの世界を調律するという台詞であったり、ミルヒの「なのです」口調などボンズのロボットアニメを思い出しました。
60分という尺に詰め込みすぎたとは思うのですが、オルタモーダたちの分身という設定や、キョウver.1が自己犠牲の傾向が強く、また自爆しようとするのをシズノが助けたりと必要なストーリーはしっかりと描けたのではないか、と2回見返した後にやっと腹落ちしました。
3)おしまいに
しかし、パンフレットが2200円って高すぎやしませんかね・・・?
同時期に上映していたデッドプール&ウルヴァリンは1000円せずにもっとページも分厚かったですよ?
無料で公開されているFebliやReal Soundの本作のスタッフインタビューなんかはパンフレットにそのまま収録してもよかったんじゃないですかね?
ただ、次回作の布石はしっかり打ったと思います。
リザレクションシステムは完成するのか? ガルズオルムの人工幻体にして復元者のナフシャのテクノロジーを入手すればキョウver.1とシズノのリザレクションも可能なのではないか? etc・・・。
STAとは、Statement Alphaを略した物だとタイトルロゴには表記されていました。Statement Betaとなるネクストエンタングルを楽しみに待っています。