「復讐と生存の狭間で―1942年の激動を生き抜くフィリップの選択」フィリップ ガジュマルさんの映画レビュー(感想・評価)
復讐と生存の狭間で―1942年の激動を生き抜くフィリップの選択
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ミハウ・クフィェチンスキ監督の作品は、ポーランドの風土とユダヤ人青年の生き様を鮮やかに描き出し、その新鮮さと感動は胸に迫るものがありました。監督は全てのキャストの表情を巧みに捉え、観る者にその場にいるかのようなリアリティを感じさせます。1942年の時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができました。
本作は、主人公フィリップの復讐劇にとどまらず、激動の時代を生き抜くために彼自身の信念を貫く姿を描いています。フィリップはフランス人を装い、ナチスの上流階級の女性たちと関係を持つことで復讐を誓いますが、その行動は一種の心理的な現実逃避や心の慰めであったのかもしれません。恋人や家族を失った彼の孤独さや苦しみが痛烈に伝わってきます。
リサとのラブシーンは、もし本物でなければフィリップは最低な男性と言わざるを得ません。それでも、この恋愛感情が彼にとって生きるための糧となり得る可能性が示唆されており、観客に深い思索を促します。
映画の最後、フィリップがリサを残して一人でフランス行きへ旅立つシーンでは、彼の選択とその後の運命が象徴的に描かれています。彼は計画通りにフランス行きの列車に乗り込みますが、その後彼がどのような生き方を選ぶのかは観客の想像に委ねられています。
人が時代を選べないという辛さを感じさせます。この映画は、観る者に深い余韻を残すことでしょう。
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