劇場公開日 2024年6月21日

「身を隠した男の全裸の人生」フィリップ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0身を隠した男の全裸の人生

2024年6月23日
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鑑賞方法:映画館

もちろん、
見つかればユダヤ人として、また同僚は同性愛者としてガス室なのだが、
ひっそりと身を隠して生き延びた幾多のユダヤ人とは異なり
敢えて禁断の域に踏み込んだ男の、危い行為を見せてもらった。
「ユダヤ人云々」と一括りにはすまいとする意図が、この映画のプロデュースには反逆的に描かれていたのだ。
ステレオタイプのユダヤ人でない存在を通してだ。
パルチザンの組織的抵抗活動ではなく、フィリップは個人的に、パーソナルに、彼の怨嗟を生きる。

全裸になれば、彼は割礼を晒すことになる。
「密告」は女次第だ。
ガス室選別の、運任せの尾根をフィリップは歩いてみせたのだ。

600万人のホロコーストの死があったと同時に、600万の独自で異なる生が存在していた筈だ。
当たり前のことだが、そこに焦点を当てている。
そして、自暴自棄と、異常な行動にも踏み出させる「戦争の狂気」を、僕に考えさせる。

恐怖と緊張に耐えられずに自殺した工場長と、エンディングの光景 ―
フランクフルトの深夜の駅では、「パリへ逃げる市民たち」と「前線に向かうユーゲントたち」と・・

街で、ホテルで、鉄道の駅で、
あらゆる場所での《死の選別》の光景に、言葉を失う。
純愛も、戦時には死の選別を受ける。

きりん
満塁本塁打さんのコメント
2024年6月25日

国の歌ですね。

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2024年6月25日

ドイツ国家の独善性に呆れました。イイねありがとうございます😊

満塁本塁打
きりんさんのコメント
2024年6月23日

ドイツ国歌、すごいな。
国を挙げていただく自国=ナチス・ドイツ帝国への礼賛と服從。その斉唱。
シャンパンのトレーのおかげで敬礼をせずに済んでいるフィリップが映ったが、こちらがガクガク震えた。
昔、大群衆と一緒に靖国の玉砂利の上で正座している自分の夢を見たことがあって
あの悪夢を思い出した。

きりん