ぼくのお日さまのレビュー・感想・評価
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主題歌は良かった
スクリーンが4:3の時点で独特なこだわりがあると思った。
実際には同性愛の要素はいらないと思った。
別の要素で紆余曲折あるようにしてほしかった。
何が面白いのか私には全く理解出来なかった。
簡単な映画だと思った。
エンディングの主題歌はめちゃくちゃ良かった。
この瞬間が永遠に続けばよいのに。 圧倒的な多幸感とほろ苦さ、表情を...
この瞬間が永遠に続けばよいのに。
圧倒的な多幸感とほろ苦さ、表情をガラリと変える光の演出がこれまた素晴らしい。エンドロール&そこで流れるハンバートハンバートの曲もまた•••。
今年観た映画の中で、トップクラスに好きな作品だった。
初々しさが最高!
タクヤとサクラの汚れのない無垢な演技に感動しました。幼少期からスケートの経験があって、これだけの演技が出来るキャストを探すだけでも、この映画の製作者の苦労が伺えます。始まってからすぐに気付きましたが、画面の縦横比がシネマスコープの2.35:1ではなくて4:3か7:6くらいの縦横比になっていたのには、何かしら製作者の意図があったのではないかと考察中。
ラストシーンで、タクヤが笑顔のサクラに自分の気持ちを伝えられたのか? 成長した二人の続編があっても良いんじゃないかと考えさせられる良作でした。
詩的に美しい画面
映画を紹介するあちこちのサイトに「池松壮亮を主演に」とあるが、さくら役の中西希亜良と、タクヤ役の越山敬達の少女・少年の2人が主人公だったと思います。
全体的に物語を見せる意図は少なく、夏に出会って、冬のひとときに輝く子ども二人の姿を詩的に映し出すのが目的だったように思えました。
感情や状況を光で意識させる演出・照明・撮影が生み出した画面の美しさは素晴らしい。
正直、この美しさや、スケートリンクでの楽しさに軸を置き、40分前後の中編になっていたら傑作だったかもしれません。
起伏の少ない状態で長めの尺を作り出したために、中盤に単調なタルみを感じて、起きているのがかなりキツい瞬間もありましたが、絵は本当に完成度が高かったと思いました。
後半、物語の動きは出るのですが、好き嫌いが分かれる展開だと思います。
私は、スッキリせず、悲しい気分になりました。
怒りに任せて投稿
9月、まだ夏の暑さが続く中、画面に映るのは壮大な雪景色。
なんか変な気分。
雰囲気は良い感じなんだけど、かなり終盤になるまで特に大きな葛藤もなく、話が順調に進んでいくだけ。
悪い映画ではないが、退屈さを感じつつ鑑賞。
終盤、ショッキングな事態が発生。
この場面を観て思い出したのは、元総理大臣秘書官・荒井勝喜氏の「同性婚、見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」という発言。
この映画がその発言を肯定するような内容であることに気付いてからは、観ながら心の中で怒り爆発。
違うというなら劇中、それと同じような発言をした人物は痛い目を見るなり反省するなりの描写があってもよいはずだが、そんな描写は一切無し。
フィギュアスケートを実直に頑張る少年を傷つけて終わり。
LGBTQの人は、周りに迷惑がかかるから表社会に出てくるなってことですか?
最低すぎる…
吃音設定も必要性を感じず、意味不明だった。
怒りついでにもう一つ苦言。
フィギュアスケートで足を広げて股を見せる技は、調べたら「ファンスパイラル」という名前らしいが、この映画の中で女子中学生がフィギュアスケートの練習中、この「ファンスパイラル」をするシーンがやたら多く出てくるのが気になってしまった。
「性的目的による女性アスリート盗撮」が社会問題になってる今の時代に、配慮に欠けたつくりだと思う。
股を見せなくてもストーリーの進行上、何も問題無かったはず。
もしかしたら監督はそういうのを見るのが好きなのかもしれないが、監督の立場を利用してそういう画を撮ることこそ「気持ち悪い」と思う。
少ない要素だが濃密。
カンヌの「ある視点」で選ばれてるからただの子供友情物じゃないな、、、と思っていたが、今現在の問題や生きづらさがきちんと提示された良作です。
実にシンプルで情報量もエイリアンに比べると(比べてはいけない)少ない訳だが、どの絵も濃密で美しく、風景だけのカットはほぼ無いのに北国の美しい自然が突き刺さる。少ない要素に観る者が誘導され人物の深部を堪能する感じだろうか、、、だからって濃い演技は一つもなく全てが実に自然だ。
ネタバレになるからあんまり書けないが、子供の一言で私も傷ついた事がある。子供は経験値高くないけど、生物の原型に近いからこそその言葉は鋭い。
先生はどこに行くんだろう?
何か前向きな方向を少し感じた。映画の終わり方も気が利いている。こんなに余白が多いのに、ある意味スキの無い映画だと思う。
でもタイトルはコレでいいのだろうか?
越山、中西主役の2人を池松の静かで確かな演技が支えている。スケートシーンは本当に美しいよ。
余談だが舞台が実家の近くで、色々美しく撮れていて嬉しかったなぁ。
なんか羨ましかったんだよ、真っすぐでさ。
まず、エンドロールについて触れなければ始まらない。エンディングでハンバートハンバートのメロディが流れてきて、あ、これ「ぼくのお日さま」だとすぐに気付いた。映画のタイトルと同じじゃないかと。そして歌詞が画面に。〽ぼくは言葉がうまく言えない。はじめの音でつっかえてしまう~。そうだ、この歌の主人公も吃音だ、そう思ったとき、ぼろっと涙がこぼれた。もしかしたら歌にあわせてシナリオを書いたのだろうか。だとしたら見事だ。しかも、吃音を苦にしながらも青春を謳歌している。その姿に、ついぽろっと涙が誘われた。
この映画は、スクリーンのサイズがほぼ四角(あのサイズをなんと呼ぶのか詳しくないが)。だから人物の上部が広く空いていて、空が高く見えた。それがなんとも解放感があった。おまけに淡い映像。それはこの映画の設定がおそらく20年か30年くらい前だからなのだろう。まるで、ポラロイド写真のようだ。だから、なおさらノスタルジックな気分にさせられるんだろう。
おまけにカメラがいい。やさしいまなざしのようだ。光を取り込む映像も、スケーティングする二人に寄り添うようなカメラワークも、とても愛情がこもって見えた。そのスケーティングといえば、子役(という歳でもないないか?)の二人はオーディションでその経験済みの役者を選べばいいだろうけど、池松も以前スケートの経験者なのだろうか?と思わせるほど、滑りもスムーズだしポーズもきれいだった。不自然さを感じさせないほどに、様になっていた。
なにより、湖で屋外練習をする三人の幸せな姿が、微笑ましく、羨ましく、美しかった。春になって雪が解けたらあんな大きい湖だったとは思わなかったが、そこがまた雪に閉ざされた冬の慎ましやかな出来事と思わせる効果があった。
そして少年の恋物語かと思わせておいて、同性愛をぶっこんでいる。池松(荒川)と若葉竜也(役名知らず)の距離感が親密で、ダブルベッドに枕が並んで見えた時には確信となった。だけど、サクラの洞察力はすごいな。アイスを食い戯れる二人で、それに気づくのだものな。それは、荒川に恋心を抱いていたからなのかな。「気持ち悪っ」の捨てセリフには、裏切られた感情がこもっているように思えた。でも、母親はおそらく辞めたい理由を、荒川からのセクハラとかと思っているのだろうけど。荒川は、そうした世間で生きてきたし、これからも生きていく。たぶん、この時代は今ほど同性愛に理解がない時代だ。土地から離れられない恋人の地元で生きていく覚悟をもってやってきたのに、なにかしらの理由で、その土地を離れていく。また、新しい理解者を見つけるのか、孤独に生きていくのか。それに慣れていると言わんばかりの、船上から港を眺める荒川の寂しげな姿に、胸が苦しくなった。
そうだ、この監督は「僕はイエス様が嫌い」の監督か。たしかに、通じるものがあった。
寡黙な少女の胸の内
吃音の少年が少女に一目惚れし恋心を抱く。
ただ、いきなりフィギュアスケートの真似事をすることの心のあやがうまくイメージできない。ひとりの少女をあんなにも美しく輝かせるフィギュアスケートってなんなのだろう?と感じて思わず動作を真似したということなのだろうか?
常識的で平凡な発想であれば、彼女との距離を縮めるために、ホッケーをやめてフィギュアスケートをしてみたい、と親やコーチ(池松さん)に申し入れるところから始まるはずだが、この映画ではコーチの方からアプローチしてくるし、これがひとつの伏線となっている。
タクヤくんの思いがまっすぐだから、という動機の説明はあるけれども。
少女はコーチへの密かな憧れ(恋と呼ぶにはまだ早い)は窺い知れるものの、その距離感は明確には描かれない。よくあるパターンの脚本であれば、あの教育ママ的な母親とのやり取りを通して、さくらの胸の内がそれなりの具体性をもって呈示される。たとえば、「タクヤくんとペアのアイスダンスなんかで本当にいいの⁈」と母親に責められて、さくらが反発する様子から複雑な心情が描かれたりする。私はコーチの期待に応えたい、とか、タクヤくんの努力に応えたいとかの母親への反発の言葉から、少女は自分の心の複雑な感情を自らに問い始めることになり、次の行動が出てくる。
が、この映画は少女の内面について驚くほど寡黙だし、次の行動も凛としたスケーティングだけだ。
結局、リアルさを伴う心理描写は、池松壮亮さん演じるコーチのものだけなのだ。
少女からタクヤくんへの不純な動機を疑われた時も、UFOや幽霊と同じで、不純さが〝無いことは証明できない〟ために弁解もしなかった。そしてもっと恐ろしいのは、思ってもいなかったはずのことも、言われてみれば、そういう思いがなかったとは言い切れない、という気持ちになることさえあることだ。コーチの方からタクヤをフィギュアに誘ったことが、少女のコーチに対する疑念を証拠不十分のまま、印象づけることになってしまうのだ。
少年の淡い恋心を叶えてあげたい。
キッカケはそんな素朴な思いでしかなかったのに、タクヤくんへの個別指導は、少女からは汚らわしい行為として断罪される。
もし、少女が目撃したのが女性の恋人とのイチャツキだったら、少女は自分に対するコーチの指導を汚らわしいと思っただろうか。嫉妬することはあっても汚らわしいとまでは思わないはずだ。
少女の本当の胸の内は最後まで明確には描かれない。コーチへの生理的な嫌悪感と投げ付けた「気持ち悪い」という罵倒への後悔も描かれないままだ。
さくらはあるひとりの少女の個性ではなく、荒川(池松壮亮さん)のようなマイノリティが感じる息苦しさの象徴なのかもしれない。表立った差別意識など無いし、悪気もなく素直で無邪気だけれども、ふとした時に漏れ出る生理的な反応は、正しくないとか良し悪しとかの理性的な判断とは別に存在する。
雪に閉ざされたファンタジーのような世界での荒川の夢は春の訪れとともに終わりを迎えたけれど、タクヤの夢はこれから始まる。
たくやの物語として観たらこれで十分
「映像がキレイ」と言われる映画は個人的にあまり好きではない。脚本よりもそれが印象に残る映画だったということになるから。でも、本作を観て私が抱いたのはやはり「映像がキレイ」という感想だった。特に光が印象に残る。スケートリンク、凍った池、ベッドの上。とてもキレイで見入ってしまった。
話としては若干微妙なところ。やはり終わり方がややいたたまれないから。運動が苦手なたくやが、さくらのスケートに魅せられ一人でスピンの練習を始め、コーチの荒川が個人的に指導するという流れ。少年少女の淡い恋心とアイスダンスがきれいにマッチした話だった。たくやが吃音というところもポイントだ。彼らが中学生になる前後という設定も絶妙だ。荒川のことを思う気持ちが変化するのもあの年代なら責められない。
エンドロールが始まったとき、あぁここで終わってしまったかと若干残念な気持ちになった。完全なハッピーエンドとは言えない終わり方。でも、流れてくるハンバートハンバートの「ぼくのお日さま」を聴いているうちに印象が変わっていった。そうか、あくまでこの映画はたくやのものなんだと。だから、あの終わり方でいい。いろんな意味で自分に自信がないたくやが成長していく物語ととらえればこれで十分だ。
apple musicでもう一回聴こうと思ったら、2014年リリースであることがわかった。この映画のために作られた曲ではなかったし、むしろこの曲にインスパイアされて作られた映画なのかもしれない。曲にインスパイアされた映画はあまり好きではなかったのに。自説が2つも覆される映画になってしまった。
北海道の冬の寒さと対照的な、春のパステルトーンの美しい風景を背景に、 少年少女の幸福に満ちたかけがえのない時間が見事に刻まれている
白銀の北海道の冬の寒さと、対照的な春のパステルトーンの美しい風景を背景に、
少年少女の幸福に満ちたかけがえのない時間が見事に刻まれている。
何より二人の自然な演技が素晴らしい。
そしてそれを引き出した奥山大史監督、池松壮亮、4人の信頼関係が結実した結果です。
まさしくその場に存在した二人の、それも永遠ではない時間。
ちょっとしたことから、もろくも崩れ去る繊細な時間。
しかし、大人の感情とは無関係に、
一人ひとりがちゃんと歩き出す、ラストシーンもまた温かい。
パンフレットの主演3人と監督の対談が、とっても微笑ましい。
撮影中の様子やカンヌ出席のエピソードを語る様子にも信頼感が表れてます。
子供に見せれますね
フィギュアを好む男の子とその応援をするコーチ、シングルでの競技を目指すが男の子のペアを務める女の子のストーリー。途中まであまりにも平和に進み、交通事故でも起こすのかと緊張しながら鑑賞。まさかのコーチのプライベートから関係が崩壊。それぞれの結末はいかにだが、ハッキリした結論を出さず考えさせられるストーリー。鑑賞して半日経つが考えさせられてしまう。
女の子のスケーティング場面は美しいけれど、エンディングは活かされているのか?
美しくフィギュアスケートを滑る女の子にみとれる不器用な男の子を、女の子の男性コーチが応援しようとコーチを始め、女の子は不満を抱えながらも、アイスダンスの練習に取り組んでいく。男の子は、父親とともに吃音であったが、楽しい雰囲気のなか、コンプレックスは徐々に薄まっていく。アイスホッケー仲間からの冷やかし視線はあった。女の子は、コーチが同性の恋人と一緒の場面もみつけて嫌悪を始め、アイスダンスの試合をすっぽかし、コーチ契約も解除してしまう。男の子は中学生になり、コーチと別れを告げ、コーチは同性の恋人とは一緒ではない。最後に男の子が女の子と道で出くわし、口を開こうという場面で終わる。エンディングテーマで、吃音の悩みが語られる。劇中でもっと描き込んでほしかった。
清らかな作品⛸️🌕
フィギュアスケートが好きなので、その場面がたっぷりあったのが嬉しかったです✨✨
「月の光」がよく合う作品だと思いました。
さくらにしたら、コーチが不潔に見えるのは仕方ない。誰にも彼女を責められないし、もちろん、コーチも、責められてよいはずありません。
それぞれの人生が交錯して、またすれ違っていく展開が自然で、とても現実的な映画だと思います。
タクヤとさくらを演じた二人が、本当にどこにでもいそうな子たちになりきっていて好感を抱きました。
池松さんの声がシブい✨✨スケート未経験だったので半年練習なさったそうですが、とても上手いので驚きました。
そこで切るの⁉️と思いましたが、エンドロールの歌を聞いて納得です。
ただ…豚まんを食べながら運転するのは、やめた方がいいかなと思いました😅
映像の質感、役者陣の演技
正直、ストーリーはドハマリってほどではなかった。脚本だけなら星3~3.5くらい。
設定や世界観は好きなんだけど、ストーリーは少しまとまりがなく散漫な印象を受けた。説明を極限まで省いたのは分かるのだが、突拍子もない印象を受ける言動がいくつかあった。
ただ、とにかく映像が美しい。終始夢の中にいるようだった。
個人的には映画の雪といえば『私の男』の映像が一番衝撃的で何年経っても忘れられないんですが、あの命あるもの全てを根こそぎ奪おうとするような暴力的なまでに激しく息苦しく冷たい雪、あれとは全く別の、優しい優しい雪景色だった。
スケートリンクのシーンも本当に美しい。淡く儚い光に満ちた氷の世界。
『ぼくのお日さま』というタイトルがぴったり合う映像だと思った。
あとは何より、キャスティングがあまりにも素晴らしかった。
子役(と呼んでいい年代かは分からないけど)のふたり。こんな顔つきも体つきも完璧な子ふたり、どこから見つけてきたん??と思わずにはいられない、立っているだけで説得力のあるキャスト。
サクラちゃんは、幼い頃からずーっとフィギュアスケート一筋にストイックにやってきたことを感じさせる、綺麗な姿勢と、しっかりした体幹、無駄なく引き締まった体型。そしてスケートもジャンプも見事だった!この子は役者さんなの?選手なの?役者さんだとして1からスケート練習したんだとしたらとてつもなく頑張ったんだろうし、選手だとしたらあまりにも女優さん的な魅力・オーラと透明感があって驚く。
中学生、大人の入口に立った年頃。そうそう、このくらいの女の子って確かにこういう、大人に対して常にちょっと気まずそうな態度とるよね〜と思った。演技うまい。
一方タクヤくんは、小学生、まだ身体ができあがっておらず、しかも運動はそんなに得意じゃなくてちょっと鈍臭い、そういうタイプの子そのものの体つきで、これもキャスティングすばらしい。あとひたすら可愛い。喋る口調もまだちょっと幼く、笑顔はあどけなく。仲の良い友達とじゃれてるときとかまさに小学生男児!って感じ。
まだ大人の入口に立ってない子ども子どもしてる感じだからこそスケートにハマったらとことんハマって。先生に対しても、サクラちゃんみたいにちょっと線を引いてる感じなく、一気に懐に入ってなつき、無邪気にはしゃぐ。ちょっと無愛想だったサクラちゃんの心まで溶かすくらいの天真爛漫さ。
それと若葉竜也さん。『愛がなんだ』は正直ストーリーも他のキャラクターもうろ覚えだけど、若葉さんだけ衝撃的に印象的ですぐに顔と名前を覚えました。以降出演作はほぼ全て視聴しています。
今回の役柄は、それほど顔がはっきり映るシーンもセリフも多くないんだけど、役としての説得力がありすぎてびっくりしました。若葉さんはもはや、演ずるに当たってセリフはおろか表情すらいらないんだな、佇まいや仕草、存在感のみで演じることができるんだなと感服しました。
あとはやはり池松壮亮さん。追っているというほどでもないですが出演されてると観たくなる俳優さん。この方は大衆向けのドラマや娯楽映画的な演技もお上手なのに、こういう作家性の高い芸術映画でもそれに合わせた演技ができるんですよね。すごいよなあ…役者としての嗅覚というか、作品の展望を嗅ぎ取る能力が突出してるんだと思う。今後どんな作品に出ていかれるのか楽しみ。
月光仮面
ハンバートハンバートの同名タイトルポップスから着想を得た作品だという。吃音の“ぼく”が語るモノローグ型式の歌詞は、北海道のとある町でスケートに打ち込む少女サクラに一目惚れした吃音少年タクヤの心象とピタリ一致する。是枝裕和をこよなく尊敬しているという奥山監督だけに、思春期の子供の単純な初恋物語なのか、というとそうともいいきれない奥深さを感じるのである。
サクラやタクヤを演じた俳優に、フィギュアスケートの経験者をキャスティングしたという奥山監督。サクラの方はともかく、とくにタクヤ役の少年がいまいちなのだ。荒川コーチ(池松壮亮)のプライベートレッスンを受けてだんだんと上達していくという設定ながら、スピンも満足にできないヘタッピなスケーティングがまったく様になっていないのである。下手くそなドモリの演技とともに、(是枝のように)役づくりにもちっと時間をかけるべきだったのだろう。
この映画の劇伴として、ドビュッシーの『月の光』が印象的な使われ方をしている。サクラがシングルで演じる時の課題曲として用いられるのだが、本作が映画祭でお呼ばれした地カンヌと、フランス人音楽家ドビュッシーの深い関わりをご存知の方は、思わずニヤリとされたことだろう。さらに、タイトルの“お日さま”とこの“月の光”が、対比的に演出されていることに我々は気づかなければならない。
ゲイばれしてサクラのコーチを解任された荒川がパートナーに「うらやましかったんだよ」と告白するシーンに是非ともご注目いただきたい。自分が吃音であることを隠そうともせず“好き”な気持ちをまっすぐに体現していたタクヤ=お日さまに対し、ゲイであることをひた隠しにして北海道の田舎町でスケートコーチを細々と続けている荒川=月の光。かつて野村克也が長嶋茂雄を羨んだように、お日さまのように裏表のないタクヤの恋路を思わず応援したくなったのではないだろうか。
自主制作映画『僕はイエス様が嫌い』が、もしもサン・セバスティアンで受賞しなければ破産していたかもしれなかった奥山大史は、その後広告代理店就職という保険を人生にかけるのである。大企業に就職したエリートでさえも副業をしなければ生活すらままならない現代日本で、映画監督とて例外ではないと個人的には思うのだが、奥山監督の場合“2足の草鞋”を履いていることに、ある種の後ろめたさを覚えている気がする。
アイスホッケーとフィギュアスケート、ゲイパートナーとスケートコーチ、サラリーマンと映画監督....どちらに決めようかウジウジと悩む男たちを尻目に、太陽の日差しをあびながら“月の光”を氷上で凛々しく演じきるサクラにはまったくブレがない。しかしねぇ、あの大谷翔平だって壊れやすい投手稼業にバッターとしての2刀流保険をかけていたからこそ現在の活躍があるわけで、そんなに悩む必要はないと思いますよ、ねえ監督。
人生はスケートの如く
東京テアトル×池松壮亮の信頼度たるやいなや...。あまりにいい。幸せ空間すぎる。「ルックバック」が大きな話題を呼び、2024年を代表する傑作だといわれている中、自分はこの作品を今年の顔として推したい。今後、宝物のように自分の中ですごく大切な映画になっていく気がする。鑑賞時より、鑑賞後にたくさんの思いが湧き出てくるような、尾を引くタイプの大傑作。
日本が舞台なのに、日本とは思えない圧巻の美しさと、その美しさ故に最高にマッチする洋楽。この映画を見ていると「PERFECT DAYS」同様、日常の些細なことに喜びを感じ、混沌とし生きずらい世の中だけど、この世界はまだまだ知らないことばかりで、素晴らしく美しいもので溢れていると、自信を持って言えるようになる。
極限まで削ぎ落とされているセリフ。おかげで、何気ない日常会話を含む言葉の全てが、深くこころに残ってしまう。それはまさに、楽しいことも悲しいこともどんな小さな言葉でも刺さってしまう、多感な時期を迎えた主人公・タクヤのように。この映画は『"ぼくの"お日さま』の名の通り、タクヤ目線で描かれていくため、日常がすごくキラキラと輝いて見える。
彼の目に映る、いつもの場所の新しい世界。印象深い言葉ばかりの本作の中でも、新しい世界に踏み入れることを決意したタクヤに対して、これまでと変わらず向き合い続ける友人のコウセイの優しいひとことに、じわ〜っと目頭が熱くなる。こんな友達がいるから、タクヤは飛び立てるんだろうな...。
霜の降りたような寒々しい窓辺に、じんわりと暖かいお日さまが差し込んでくる。人生の煌めきというのはいつも突然で、すごく愛おしい。真冬に使う厚い毛布みたいに、全身を包み込んでくれる情景と人の温もりが、本作最大の魅力。タクヤの真っ直ぐな目を見ていると、忘れていた子ども時代、失われた少年心を取り戻すことが出来る。心が豊かになっていくのが、沸き立つように全身に伝わってくる。この子のような純粋さとひたむきさは、いくつになっても持っておきたい。子どもに教わる、人生の教訓。外は凍えるほど冷えきっているからこそ、お日さまの光はより一層暖かい。
新鋭・奥山大史監督。商業映画デビュー作品して、この完成度は恐ろしいまである。見る前と見た後。90分で得られた幸福は何にも変え難い。大どんでん返しとか映画的な展開があるわけじゃないのに、たまらなく大好きなこの映画。少し大袈裟かもしれないが、映画を愛し続けて良かったと、そう思ってしまうほど。
整氷車を追いかけるあの構図は、間違いなく今年ベストの名シーンであり、スケート場ではなく、それ以外の場所で練習を積み重ねる子どもたちの様子もまた、忘れられない愛おしさがあった。お日さまの光によって照らされる、月の淡い光。極寒の中で繰り広げられる温もりいっぱいのアイススケートは、そんな月の光のように優しくて尊く、儚いものだった。
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