「ふわり、ひと冬の思ひ出。雪の結晶のように儚く繋がる心は、溶けてなお何を残す。」ぼくのお日さま おひさまマジックさんの映画レビュー(感想・評価)
ふわり、ひと冬の思ひ出。雪の結晶のように儚く繋がる心は、溶けてなお何を残す。
その先の明るさを予期させる終幕に好感。
繊細で美しい撮影アートがそれと同質な物語を包み込む、ほんのりビターなコーティングショコラ。口にしたそれはクラシカルなレシピ通りの仕上がりに思えたのだが、どこか新しい感覚があって不思議。邦画らしからぬ作風、ミニマルに割り切ったストーリーのためかもしれない。
心のベクトルは三者三様で、それぞれの「→ 矢印」が向いている先が「ぼくのお日さま」ということらしい。三角矢印がスケーティングの演目のようにクルクルと輪になって気持ちを通わせる湖のシーンが、なんともホッコリとしていて微笑ましかった。
表題に書いたように、季節の変わり目と、チームが解散してしまう理由そのものは無関係だが示唆的であり、映画的だ。とても上手な描き方だとおもう。
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本作では、言葉というコミュニケーションにスポットがあたる。
私にとって最も印象的だったシーンがある。土地を去る荒川とタクヤが交わすキャッチボールの場面、気持ちのぶれた荒川がタクヤの身長を飛び越えたボールを投げてしまったところ。荒川が言葉をかける「タクヤ、ごめん」。
物語では終始、あえて言葉足らず・主張足らずなコミュニケーションに抑えられていて、嬉しいシーンでもそうでない場面でも、その気持ちを表すセリフがあえて避けられていたように感じた。気持ちがとても通い合っていても、説明はだれもしていない感じ。
日常では当たり前のような「ごめん」だが、劇中がずっと感情をフワッと表現していたせいで、相手に自分の気持ちを表すセリフにコントラストが生まれた名シーンとおもった。
最大級の賛辞を送ることすらもどかしく優しい物語。
ミニマルで美しい本作は世界中どこにいっても評価されるに違いない。
ハンバートハンバートの同タイトル主題歌が、実は原作ということに驚き。
共感ありがとうございます。
ハンドルネームがぴったりの作品ですね。突き放してるようで優しそうなお兄さんとか、ポンポン母さんとか、空気父さんとか深掘りしてなかったのも、逆に効果的だったと思いました。