「ポカポカと温かく、ヒリヒリとほろ苦い」ぼくのお日さま tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ポカポカと温かく、ヒリヒリとほろ苦い
最初は、スケートを通じた少年と少女の小さな恋の物語なのかと思ったのだが、男性コーチが少年にフィギュアスケートを教える話になって、少し予想をはぐらかされる。
ここで、コーチを演じる池松壮亮が、本当にスケートの経験があるのではないかと思えるほど的確(少なくとも、そう見える。)に指導を行っていて、思わず引き込まれるし、それに応えるように少年がメキメキと上達していくのも嬉しくなる。
その一方で、男性と同棲しているコーチが、手取り足取り少年を指導する姿に、何やら良からぬことが起きるのではないかと心配にもなってくる。
やがて、少年と、彼が思いを寄せる少女がペアを組んで、アイスダンスのバッジ取得を目指す展開になると、コーチと少年・少女の二人三脚ぶりが更に楽しくなってくるし、ほのかに恋の雰囲気が漂い始めるところも微笑ましい。
中でも、凍結した湖に練習に出かけた3人が、雪上や氷上でふざけ合う姿は、この上もない多幸感に満ちていて、このままハッピーエンドになることを願わずにはいられなくなる。
しかし、この幸せなひと時は、やはり、バッドエンドのフラグになっていて、ずっと感じていた嫌な予感が的中することになる。しかも、その予感も、少年・少女の親が騒ぎ出すのではないかと思っていたのだが、少女自身がコーチに反発する展開になって、何だかやるせない気持ちになってしまった。おそらく、少女は、コーチに好意を寄せていて、裏切られたと感じたのだろうし、多感な年頃なので、「気持ち悪い」と思うのも仕方がないのかもしれない。
それでも、3人でアイスダンスの練習に打ち込むシーンがあまりにも魅力的だったので、最後は、皆に和解してもらいたかったと思わざるを得なかった。
その点、春の日差しの中で、少年とコーチがキャッチボールをしたり、少年と少女が見つめ合うエンディングは、せめてもの救いになったし、それに続くテーマソングも、画面に映し出される歌詞が少年の心情にピタリとハマっていて癒された。