「【”聡明な妻が、読み書きの出来なかった夫が一生懸命書いたラブレターに笑顔で63点と言った訳。”今作は常に相手を想い、労り合い、支え合う夫婦の長きに亙る愛を描いた心に沁みる物語である。】」35年目のラブレター NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”聡明な妻が、読み書きの出来なかった夫が一生懸命書いたラブレターに笑顔で63点と言った訳。”今作は常に相手を想い、労り合い、支え合う夫婦の長きに亙る愛を描いた心に沁みる物語である。】
■小学生2年で、貧しさと家庭環境により学校に行けなくなった保(重岡大毅、笑福亭鶴瓶)が、社会に出て必死に寿司屋で働く姿。そして、彼を雇ってくれた店の主人(笹野高史)の頼みで見合いをした美しき女性、皎子(上白石萌音、原田知世)との出会い。
クリスマスに妻がくれた万年筆。けれど、字が書けない事を言い出せない保。妻はその事実を知っても怒る事なく、”私があなたの手になる。”という優しさを示す。
そして、定年退職を迎えた保は、妻のために夜間学校に通い字を覚え、ラブレターを書くと宣言する。保を支える先生(安田顕)やクラスメイト達の優しい姿・・。
◆感想
・実話であるという事にも驚くが、登場人物達が皆、人間性が豊かで、明るくて優しい所が良い。
・その代表が、保であり、皎子である。皎子が保の良い所三つを、”優しい””いつも一生懸命””かわいい”というシーンがあるが、”かわいい”と妻に言って貰える夫って、素敵だと思うな。
・保は非識字者であるが、寿司屋でも、夜間学校でも人気モノである。それは観ていれば分かるが、彼が供えた豊かな人間性に基づくものだと思う。そこに、皎子は惚れていたのだと思う。
夜間中学に来た、人の目が気になりカーテンで覆われた席に座る少年と、最初に普通に会話を交わすのも、保である。
・夫婦の娘達(徳永えり、ぎぃ子)が、良く夫婦の家に夫と孫を連れてくるのも良いな。中々いないのではないかな、あれだけ仲の良い家族は。保と皎子の育て方故であろう。子供は親の背中を見て育つのである。
・娘達が小さい時に”何でお父さんは字が書けないの?”というシーンで、皎子が答える言葉が良い。”お父さんは、一生懸命働いて来たでしょ。だから、貴方達は学校にいけるの。”俯いた保が、恥ずかしそうに、けれども誇らしげに顔を上げる。皎子の聡明さが良く分かる。
・皎子が脳の血管の病気で入院し、退院後も精神が不安定な時に、タイピストであった時から大切にしているタイプライターで文字を打っているシーンとタイプライターの音。皎子は、”タイプライターを使わないと機械もだめになっちゃうから”と言っていたが、ラストへの展開が素晴しい。
<そして、皎子は保が二度目のラブレターを書き終わる前に亡くなってしまう。ショックを受ける保を娘二人が労わる。そして、ラブレターを書き終えた保は、夜間学校に戻る。
そこで妻が密かにタイプライターで打っていた自分へのラブレターを原田知世さんが読み上げるシーンも素晴らしい。ラブレターは難しい文字は使っていないが、妻の夫を想う気持ちに溢れている。そして、何故一通目のラブレターに63点と言った理由も、記されているのである。このシーンは涙を堪えるのが難しい。
今作は常に相手を想い、労り合い、支え合う夫婦の長きに亙る愛を描いた心に沁みる物語なのである。>