蛇の道のレビュー・感想・評価
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わかりやすくなった
本作のオリジナル版は、昔VHSを持っていた。何気なしに買ったらめちゃくちゃおもしろくて、今でも黒沢清の最高傑作ではと思っている。それを舞台をフランスに置き換えてセルフリメイクするという。本作は復讐を描くが、誰がなんの目的で復讐しようとしているのかよくわからない。でも、そこが面白かった。今回は、フランスを舞台に日本人の精神科医が出てきて、子供を巡る復讐劇というわかりやすいプロットになっている。それによってドラマの筋書きが理解しやすくなっているが、得体の知れなさは薄れた。単純に画面がオリジナル版に比べて明るいからかもしれない。あるいは哀川翔と香川照之の何を考えているのかわからない雰囲気のなせるワザだったのか。
リメイク版も面白く見たけれど、やっぱりオリジナル版の異様さは抜ききんでいる。オリジナル版は、わかりにくいんだけど、わからないから余計怖い作品なので。
でも、このオリジナルと本編を比べるとやっぱり映画って面白いなと思う。同じ題材でもこんなに違う。同じ作家が作っているにもかかわらず。映画は何にでも変化できるんだなとその可能性の広さに気がつける。
得体の知れないシュールな不気味さに推進力が加わった
私の中でオリジナル版『蛇の道』は、シュールな繰り返しによって観客を得体の知れない不気味さへと導いていった作品として記憶に焼きついている。このシンプルなれど核心を突く構造が国境を超え、かくも巧みに言語や文化が変換、翻案されたことにフレッシュな驚きを禁じ得ない。題材が噛み合ったのも意外だが、その分、映画の印象はガラリと変わり、物語のベクトルや力学すら大きく変わった。主演が柴咲コウ(流暢なフランス語の台詞回しに驚愕!)とフランス人俳優に置き換わったことで作品が持つ表情や人間味も増したように思う。オリジナルのシュールさや笑いは減ったが、代わりにどこかメルヴィルを思わせる硬質な色味、倉庫感、観客を突き放す孤高のタッチを迸らせ、そこにやはり黒沢清ならではの、肝心なものを見せずして感じさせる演出が際立つ。オリジナルかリメイクかで好みは分かれそうだが、これすなわち双頭の蛇として、いずれも等しく堪能したい。
To the Ends of the Underworld
Serpent recalls Creepy in terms of grisly rural captivity. This time the good guys find themselves in Mr. Vengeance predicaments as they get to the source of a child's murder. The director's signature style might remind one of the chilling abstractions in his horror film Cure. French actors Almaric and Dazi's performances show Kurosawa's destined for international ensembles. Not a happy one.
黒沢清監督の巧みなセルフリメイク。柴咲コウのアクションも意外に良い
ポスターとフライヤー用の縦長の画像(当サイトのフォトギャラリーでは14枚目)のアイデアにまずうならされる。本編を観た人なら、小夜子(柴咲コウ)とアルベール(ダミアン・ボナール)が引きずっているのが拉致した男を押し込めた寝袋だとわかるが、この黒い寝袋が禍々しい大蛇に、そして草むらを引きずった跡が「道」に見えるではないか。
高橋洋脚本・黒沢清監督のオリジナル版「蛇の道」は、たしか2000年代前半に知人から哀川翔主演「DEAD OR ALIVE」シリーズを推薦されたのがきっかけで哀川出演作をVHSでレンタルして観まくった中の一本。それっきりなので細部は忘れたものの、復讐のため拉致した男たちを廃屋に監禁してビデオを見せ精神的に追い詰めていく閉塞感が、今回のセルフリメイク版でも効果的に再現されたように思う。
かつて哀川が演じた役を女性に置き換えて柴咲コウに演じさせるというのは、黒沢監督にとっても柴咲にとってもチャレンジだったはずだが、結果的にうまくはまったと感じる。フランスの病院で働く精神科医(夫は日本に戻り別居中)が幼い娘を惨殺されたアルベールの復讐の手助けをするという設定は、ホモソーシャルなコミュニティーにおいて男性に頼らず自立した女性という面で現代的なアップデートにもなった(さらに推測するなら、外国人男性からは日本人女性がより謎めいて見えるという効果もありそう)。柴咲コウがアクションでも健闘していて意外だったのだが、フィルモグラフィーを見たら2008年の「少林少女」でカンフーアクションを披露していたのを思い出した。それでも現在40歳代前半でこれだけ動けるなら、シャーリーズ・セロンやジェシカ・チャステイン、あるいはだいぶ年上だが「エブエブ」のミシェル・ヨーらの出演作のように、熟女アクションを目玉にした企画がこの先続いたとしても不思議はない。
黒沢監督にとって初の海外作品「ダゲレオタイプの女」は、新しいことにチャレンジする意気込みが伝わった反面“よそ行きの顔”を見せられたようなさびしさもあったが、今回の「蛇の道」は海外作品でも“黒沢清らしさ”が随所に感じられてとても嬉しい。
おフランスのポリスはなにやってるざます。
サイコ × 洗脳 という視点
復讐劇をセルフリメイク… ですか…
何とも言えない雰囲気の作品
謎めいていて妄想せざるを得ないものの、その種明かしは妄想とは大きくずれていた。
それはまあよかった点ではあった。
視聴者に容易く読まれてしまっては面白くない。
さて、
初めから不可解な物語だが、物語の途中からいくつかの着地点があるように思った。
まず考えたのがサヨコ自身がサイコパスであるということ。
アルベールを洗脳して、最後にすべての犯人が自分であるということを彼に見せつけ、彼を完全に破壊するパターン。
そして、
デボラはサヨコと同一人物で、彼女が守ってきた子供たちと守れなかった子供たちがいた。
それは人身売買グループだったが、そこには組織のようなものはなく、売買目的で拉致するグループがあるだけという設定で、そのフランス組織を潰すという目的のパターン。
その他いくつか考えながら見ていた。
そもそもアルベールはドクタードラントルの患者であり、精神疾患者だった。
彼女は患者を横取りしたことが伺える。
患者の吉村と同様に、サエコはアルベールを洗脳した。
彼は少なくとも自分が娘にしたことに対する良心の呵責があったことを発見したのだろう。
アルベールの娘は実際には生きていて、死んだことを植え付けたのかなとも想像した。
彼を仲間に引き込んで、売買グループに対する復讐する物語だと思っていた。
しかし、
実際は、サヨコの娘が犠牲者だった。
それはビデオの中で連続して語る声がサヨコのものだとわかることで読める。
ただそれでも一般的な解釈として理解できないことが多数あって、それが矛盾していることから、物語の全体像がブレてしまっているように感じる。
矛盾に対する解釈が追い付かない。
例えば、
何人もの男を拉致できたこと。
多勢に無勢 素人が次々に見張り役を射殺できてしまうこと。
臓器目的で拉致されたにも関わらず、ローラの周りに集まる子供たち。
中でも疑問だったのが、サヨコの「復讐」という概念と「やり遂げる」意志の徹底的なこと。
物語の動機の根幹でもあるこの部分
従来から変わらない「動機の型」
そこに仕掛けたトリックは、人間の執念の怖さを演出する。
この作品は更に、夫への復讐心も描かれている。
最後のシーンは、サヨコが東京へ戻ることを示唆している。
当然目的は復讐だ。
矛盾はまだある。
アルベールにしても、サヨコの夫にしても、子供を売るという概念を持っていることがどうしても理解できない。
これが事実ではないと考える方が自然だろう。
ローラにしても、新しいパートナーのジェイクが死んだと聞かされ膝を落として嘆くが、周りの子供たちの様子が意味不明で、今から臓器を取られるんじゃないの? と首をかしげたくなる。
あの現場で、モニターを設置していた人物が、サヨコ以外考えられなく、サヨコがしたのであれば、どう考えてもデボラはサヨコ自身なのではないかと思ってしまう。
表面上示唆される物語と、実際の現実には大きな乖離があるように思えてならない。
これこそが監督が仕掛けたトリックなのではないだろうか?
この物語の流れそのものが実際の物語である場合、
私だったら、このセルフリメイクで内容を大きく変更するだろう。
まず、サヨコは自身の不注意で誘拐されて殺された娘が臓器売買されたと思い込んでしまっている設定を作り、最後に自分の夫が売ったと思い込むが、実際にそう思わなければ生きていけなかったという感じにする。
ただこれではどこかで見たことのある内容になってしまう。
この矛盾こそ最大の謎であり読みとかねばならない箇所だと思う。
さて、、
モニターを仕掛けた張本人は間違いなくサヨコだ。
彼女は男どもを拉致しながら、新しい敵をでっちあげさせ、それをアルベールに信じ込ませていた。
しかしそれではどう足掻いても真実になどたどり着かない。
サヨコはいったい何がしたかったのだろう?
関係者はミナール財団 サークル仲間
そこに無理やり臓器売買と子供の拉致を結び付けている。
子供の臓器売買は中国でされているが、フランスでは考えにくいいし、そのニュースや新聞記事、そしてマリーの死因に臓器が抜かれていたなどとは書かれていない。
サヨコの夫の雰囲気から、娘を亡くしてしまった事実はあったのだろう。
その理由を、サヨコはまったく別物に置き換えることで、自分自身が忙しくて娘に何もしてあげられなかったことへの贖罪にしてしまったのではないだろうか?
責任転嫁による復讐 これこそ、サヨコがサイコとなった原因だろう。
実際には自分自身へと向けられなければならない責任を、彼女はすり替えたのだ。
それを、この物語を我々は、サイコのサヨコと、洗脳されたアルベールの視点で見せられているのではないか?
だから何もかもがおかしいのだ。
現場の見張りもただの見張りで、拳銃などは持っていなかったのかもしれない。
ただ、二人にはみんなが武装しているように見えているだけ。
誰もが入ってこられる場所
モニターを仕込んだのはサヨコで、彼女はアルベールを洗脳しながら先回りして事実を作り上げている。
彼に特定の事実の存在を思い込ませることで、サヨコは彼女自身にも自己暗示をかけていたのではないだろうか?
彼女はアルベールにスタンガンを使う。彼をアジトに幽閉しアパートへと戻る。
彼を生かす理由こそ、自信の暗示をとどめておくことなのではないか?
つまりこの物語は、二人の精神異常者によって表現されている「現実」ということになる。
ゲランが「蛇の眼」というセリフをいうが、それはサエコの執念を表現しつつ、その間違った考えこそが蛇の道へと誘うのだと、監督は言いたいのだろう。
私の妄想は飛躍しすぎかもしれないが、そう考えなければ何もかも成り立たなくなるように思う。
どなたかご意見お願いします。
竜頭蛇尾
黒沢清監督の作品ってやはりどうしても玄人好み。批評家筋からの評価は高いが、一般観客のレビューは鈍い事がしばしば。
次の米アカデミー賞国際長編映画賞日本代表に選ばれた『Cloud/クラウド』もおそらくキネ旬なんかでは黒沢清印でベストテンに入るだろうが、見た一般客のレビューは鈍い。(ちょうど今日オスカーショートリストが発表されたが、早々と落選)
さて本作だけど、やはりレビューは賛否だけど、これ、批評家からもウケ良かったの…??
何か、久々につまんねー映画見たなぁ、と。
フランス人男性が娘を殺され、出会った日本人女性精神科医と犯人を探し復讐を誓う。
やがてある財団の人身売買を突き止め、女医にもある目的が…。
…って話なんだけど、あらすじを見てなければちんぷんかんぷんだったと思う。
疑わしい人物を捕まえ、廃屋で拷問。名優マチュー・アマルリックが気の毒な水責め…。
似たシーンや展開続き、退屈極まりない。
朝のワイドショーで本作が紹介され、柴咲コウの身体を張ったアクション!…なんて言ってたけど、ただのぐだぐだ取っ組み合い。アクションが聞いて呆れる。
チープなアクションがちらほら。って言うか、二人でたった一丁の銃で財団と闘う気なの…?
柴咲コウ演じる女医の目的。ラストシーンの鋭い眼光と台詞、真意が明らかになっていくのがスリリングなのだろうが、全体を通してスリルも何も盛り上がらない。
1998年のVシネをセルフリメイク。
全編仏ロケでフランス人キャストを招きフランス語で撮った意欲作なんだろうけど…。
何故これをセルフリメイクしたのか謎。
見映えは一級に見えて、中身はスカスカ。まさに竜頭蛇尾。
黒沢清って時々過大評価されてる気がする。
実際に娘を殺された男よりも柴咲コウの方がよほど冷酷で残忍に感じた。...
終わらない復讐の歌を歌おう
柴咲コウと黒沢清を売り込む為の…
ルンバが怖い
なぜもう一度?
フランス映画の皮を被ったVシネマ
ある作品を境に今まで熱心に追いかけていた監督の作品にハマれなくなる。そんな経験はないだろうか。
今回はたまたま調子が悪かっただけと思いつつ、作品を追うごとに違和感が増し、やがて追うのを止めてしまう。
自分の例を挙げると、「フィフス・エレメント」、「ラスベガスをやっつけろ」、「ジャッキー・ブラウン」、「ミスター・ガラス」と枚挙に暇がない。
本作の監督黒沢清はどうかといえば「回路」からハマれなくなり、「リアル ~完全なる首長竜の日~」で止めを刺されて、以降追いかけるのを止めてしまった。
なので期待と不安半々で観に行った本作だが、これは良いんじゃない。
ストーリーは基本オリジナルを踏襲しているので驚きはなかったが、主演の柴咲コウとフランスのロケーションが素晴らしかった。
本作の楽しみ方としては、何を言ってるかわからないフランス語を聞きながらスクリーンに身を委ねるが正解であって、ストーリーに面白さを求めたり、過度に刺激的なシーンを求めたりすると、途端退屈な映画になるのではないかと思う。
なので、映画の雰囲気やトーンが合わない人はキツイので、予告編でチェックしてみて欲しい。
残念な点としては、クライマックスの倉庫のロケーションが凡庸でオリジナルの廃工場に比べて見劣りがするのと、組織のボスの件が蛇足に見えた所かな。要はアクションも含めてクライマックスがイマイチだった。
こちらも蛇足だけど、最初に挙げた監督の作品にハマれなくなる問題、時々考えるんだけど最終的にはいつも、やっぱスピルバーグってスゲーって結論に落ち着くね。結論になってないけど。
本当に苦しいのは、終わらないことでしょう?
主演のサヨコが怖かった。。
期待通りの後味の悪さ!!
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