「音楽は残り、寄り添う」映画 ギヴン 海へ sallyさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽は残り、寄り添う
テレビシリーズから映画2本、OVA1本を経ての最終章。残念ながら何の前情報もなく本作を観たら、共感できることはないと思う。主人公である真冬の迷い、葛藤、過去のことにはできない想い、そして今、未来を見つめる怖さ。セリフのひとつひとつに深い意味があり、登場人物の誰もが、それぞれにそれぞれの想いを抱えて、未来へと踏み出していこうとしているさまが丁寧に描かれ、丁寧だからこそのもどかしさが何とも切ない。まだ未来の見えない十代後半から二十代前半の彼らが、何度も立ち止まりながら、それでも音楽に背を押され、自らが道を選び、前を向いて進んでいく。
単にBLだからという理由で、この作品を避けている人がいたら、せめて音楽にだけでも耳を傾けられないかと願う。ライブシーンは映画館の音響で聴いてほしいし、歌詞にこめられた想いをじっくりと味わってほしい。
原作を忠実に踏まえた上で、テイストを決して損なうことなくアニメならではの音で表現してくれたことに、ただただ感謝したい。
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