「意味深な設定が深く活かされておらず、ラストは蛇足に次ぐ蛇足に思えてしまった」知らないカノジョ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
意味深な設定が深く活かされておらず、ラストは蛇足に次ぐ蛇足に思えてしまった
2025.2.28 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(121分、G)
2019年の映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋の終わりから』のリメイク作品
ベストセラー作家とその妻の関係性が逆転する世界を描いたファンタジーラブコメ
監督は三木孝浩
脚本は登米裕一&福谷圭佑
物語の舞台は、東京都心のどこか
大学生の神林リク(中島健人)は、作家になる夢を持っていて、「蒼龍戦記」という物語を書いていた
荒廃した世界で生き残りを賭けて戦う主人公を描くものの、それ以上のアイデアは浮かんで来なかった
ある日のこと、授業中に執筆していたことがバレてノートを取り上げられたリクは、研究室に忍び込んで、そのノートを取り返すことになった
だが、警備員に見つかってしまい、必死で逃げることになってしまう
何とか逃げ延びた先には講堂があって、そこから誰かの歌声が聞こえてきた
その声を辿って中に入ると、そこには同じ大学の学生の前園ミナミ(milet)がいて、彼女もミュージシャンになるための努力を重ねていたのである
物語は、リクとミナミがその縁をきっかけに恋人になり、リクは文芸賞を獲って作家になっていく様子を描いていく
リクの作品の中にミナミのアイデアの相棒シャドウを組み込んだことでヒットに繋がるのだが、そう言った縁も多忙の中で消えていき、いつしかミナミはミュージシャンになる夢を諦めていた
リクはミナミを幸せにしたい一心で小説を書いていたが、やがて心は荒んでいき、夫婦関係も悪化してしまう
そして、決定機となったのが、シャドウを作中で死なせてしまったことであり、それが起因となって、リクはパラレルワールドに入ってしまった、という流れになっていた
このねじれ現象的なところはさほど問題ないのだが、個人的には無理やりハッピーエンドにしたところが微妙かな、と思った
リクの小説は完成され、それがミナミの元に届くのだが、彼女が読み終わる前にリクはそれを捨てるという流れになっている
コンサートの途中で立ち上がるというのもどうなのかと思うし、原稿を読み終えない理由も田所(眞島秀和)に見つかって捨てられるという方がマシに思う
さらに、その先のハッピーエンドを描くことになるのだが、そこまできちんと描かなくても良かったのではないだろうか
コンサートが終わった段階でリクは姿を消し、それを知らないままミナミが原稿の続きを読んでいて、その表情によって、どうなったかということはわかる
なので、わざわざ良いとこ取りの人生に変わりましたよという描き方をするよりは、元の世界に戻った先で、彼が見つけた「出せなかったオーディションの封筒」を見せて、その世界で夢をもう一度やり直すという方が自然だったように思えた
また、意味深に登場する祖母(風吹ジュン)の日記もあまり活かされていないように思えた
そこに描かれている内容が「リクとミナミが夫婦の世界の日記」で、その内容が記されているとか、実は祖母=ミナミという構図で、パラレルワールドに飛んだのではなく、はるか先の未来に行ってしまった、というのでも良かったかもしれない
話の流れとしてはうまくまとまって見えるものの、ちょっと強引すぎるところがあったし、サプライズというものを感じないので、これで良かったとは言えないように思えた
いずれにせよ、夫婦やり直し系ブームがあるのかわからないが、後悔を何とか正そうという物語の着地点としてはそこまで特異な部分はなかったと思う
何の根拠もなく、ハッピーエンドの原稿を読めば元の世界に戻れるというのも微妙な感じがして、何があっても起こったことは変わらなかったけど、その時点からやり直せるというのがベターのように思う
また、国民的アーティストなのに街頭で普通にデートをしたり、関係者でもないのに楽屋に自由に出入りできたりする流れの粗さも目立ったと思うので、もう少し物語の作り込みをした方が良いように思えた