劇場公開日 2024年7月19日

「「脱力系」の面白みは味わえるが、アニメーションとしての見せ場もほしかった」化け猫あんずちゃん tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「脱力系」の面白みは味わえるが、アニメーションとしての見せ場もほしかった

2024年8月6日
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あんずちゃんが原付バイクに乗って登場する場面をはじめとして、妖怪達が、なんの違和感もなく日常生活の中に溶け込んでいる絵柄が、何ともシュールで味わい深い。
特に、警察が、あんずちゃんを無免許運転で取り締まる場面では、観ているこちらとの感覚のズレが絶妙で、思わず吹き出してしまった。
そんな、人を食ったような脱力系の物語も、かりんとあんずちゃんが、かりんの母親に会うために地獄へと向かうあたりから、一気にファンタジー色が強くなってくる。
ただ、地獄がまるでホテルのようで、死んだ母親が、そこで客室係として働いているという設定は面白いのだが、あまりにも地味な印象が強いので、もう少し、アニメーションならではのイマジネーションの飛躍やスペクタクルがあっても良かったのではないかと思ってしまう。
それに続く、現実世界でのカーチェイスや、仲間の妖怪達が助けに駆け付ける場面なども、まさか、こうしたアクション・シーンまで、ロトスコープの手法を用いている訳ではないだろうが、その割には、今一つ躍動感や迫力が感じられないのは、物足りないとしか言いようがない。
家庭環境に恵まれない少女が、寄り添ってくれる存在に出会って、自分の居場所を見つけるというストーリーそのものは心に沁みるだけに、ラストは、もう少しアニメーションとしての見せ場がほしかったと思う。
ところで、地獄から帰ってきたらかりんに取り憑くと言っていた貧乏神は、どうなってしまったのだろうか?
地獄の掟を破ったにもかかわらず、かりんやあんずちゃんには、何のお咎めも無かったので、貧乏神が、かりん達の分まで罪を背負って罰せられたということなのだろうか?
だとしたら、貧乏神は、実は、凄く「いい奴」だったということになるのではないだろうか?
かりんの母親が、地獄でどんなに酷い罰を受けるのかということと共に、とても気になってしまった。

tomato