「展開がよい」化け猫あんずちゃん まいにちさんの映画レビュー(感想・評価)
展開がよい
たまに会う、何をしている人なのか分からない親戚みたいなあんずちゃん。
ロトスコープで撮られたこちらの作品、細かい動きの描写と上手いデフォルメ。
あんずちゃんの動きや声はどの場面もよいが、とくに盗られた自転車を探す場面がリアル。アニメ史上もっともリアルなのでは。
森山未來さんの声は、たしかにゆるく、大人なあんずちゃんに合っている。
未來さんは似た役を二度とやらない、と聞いた。また化け猫役見たいけどな。
かりんちゃんの父ちゃんはクズだ。
かりんちゃんはそんな父ちゃんと共に母ちゃんのいない日々を過ごした。子どもなら、母ちゃんの思い出を昇華できず、父ちゃんに苛立ち、つっけんどんに心を開くことをしなくなるだろう。かりんちゃんはそんなガキンチョなのだ。
そしてかりんちゃんの母ちゃん。
地獄から脱走し、どんな目に遭う覚悟もできている!と閻魔さまに。
閻魔さまとあんずちゃんチーム、どう勝つんだ!?ってくらいボコボコにされる。けれど、最終「勝つ」ではなく話し合いで終着する。大人だ。ご都合的な助っ人も来ない。みんな弱いのだ。そうだよな、普通に暮らしてる人だもん。ボコボコが仕事の人には敵わない。そこがリアル。
この地獄や地獄チームが現世に来る描写が楽しい。閻魔さまが霊柩車で追いかけてきたり、鬼たちがやわらぎのバスで迫ってくる。
霊柩車に乗れるサイズの閻魔さまが「覚悟は」と母ちゃんに聞く場面は色の使い方が見事で、閻魔さまは人間と変わらないサイズながら、圧があって怖い。その見せ方が上手くていいアニメーションを見ている満足感があった。
母ちゃんの覚悟。
自分が死んで、地獄で娘に会う。3年前の娘で記憶がとまっていたのに、3年後の娘に触れられて、声が聞けて、現世を逃避行(原付で)する。これ以上のことがあるだろうか。母ちゃんが「覚悟できている」と言うのは、そういうことだろう。
こんないい思いをしたのだ。死にながら、また娘に会えた。地獄で何が待っていようが構わないんじゃないか。
こんな冒険があり、あんずちゃんに心を開くことができたかりんちゃん。
そこに帰ってくる父ちゃん。帰るぞ、と言う。
ハァ!?やっと落ち着いたのにか……
ラスト、かりんちゃんの決断にも納得した。綺麗でファンタジーな作品ながら、脚本にリアルを感じられる。いや、そうだよな、と大人が思える展開が多い。ご都合主義や勢いで乗り切る脚本ではない。そこに好感がもてた。
ロトスコープ撮影のほうも見せてくれないかな〜🐱
絶対にまた見たい作品だ。