雪の花 ともに在りてのレビュー・感想・評価
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ワクチンの真実
福井へ天然痘の予防接種を普及させた町医者
江戸時代末期、当時は治療法がなく、かかると高確率で亡くなっていた痘瘡(天然痘)が数年ごとに流行していた。福井藩でも例外ではなく、町医者・笠原良策は、その痘瘡に有効な種痘(予防接種)という予防法あるらしいと知り、京都の蘭方医・日野鼎哉に教えを請い、私財を投げ打って必要な種痘の苗を福井に持ち込んだ。しかし、天然痘の膿をあえて体内に植え込むという種痘の普及には、奉行所や他の医者の邪魔など、困難が立ちはだかった。それでも良策は、妻・千穂に支えられながら困難な状況を克服し・・・そんな、実話に基づく話。
見所満載。
まず、主人公の笠原良策の志が素晴らしい。そして、医師としてだけじゃなくて武術も素晴らしいこと。そのため暴漢に襲われても退治できた。こんな全国的には無名の人物を取り上げて作品にしたプロデューサーや監督にも敬意を表したい。
妻千穂も自分の持ち物を質屋に持っていき夫に協力する姿勢が素晴らしい。また、武芸の心得が有った事も良かった。
雪の中の峠越えのシーンは、がんばれ、と手に汗握って応援してた。
主演の松坂桃李が良かったのはもちろんだが、妻・千穂役の芳根京子が美しくて強くアクションも披露してくれて凄く良かった。日本髪も似合ってた。
役所広司、吉岡秀隆、三浦貴大らもキーマンとして活躍してた。
元子役の新井美羽も観れたし、はつ役の三木 理紗子は演技も良かったし歌も上手かった。
素晴らしい作品だった。
プロジェクトX(NHK) 時代劇版
最後急に半沢直樹くらいスカッと
2025年劇場鑑賞28本目。
エンドロール後映像無し。
実在の無名の町医者(まぁ実在で名前残っている時点で無名ではない気もしますが)が当時かかったら隔離して一か八か生き残るしかなかった疱瘡を、オランダの蘭学から学び福井に持ち帰ろうと奮闘した話。
正直役所広司が演じていた京都の医者も結構すごい方でしたし、この映画のヤマの一つ冬山越えも別にこんな時期選ばなければもうちょっと安全に楽にできただろ、と思いましたし、芳根京子はなんかセリフセリフしてるし、引きの画が多くてこの役者誰でしょうクイズがしょっちゅう始まるし、こういうチャンバラじゃない時代劇あるあるのメインテーマの曲ヘビーローテーションだし、そんなに評価高くなかったのですが、福井に着いてからの展開が急に痛快になりすぎて、そこだけでお釣り来ました。
神社や町の小さな祠に疱瘡神と云う石塔を見たことがありませんか。
疱瘡(天然痘)は江戸時代では死病とされていて、これを撲滅するために奮闘した福井藩の町医者笠原良策に吉村昭さんが光を当てました。
私は原作を2年前に読みました。
今回の映画では主人公の笠原良策を松坂桃李が熱演していましたが、良策の妻千穂を私の大好きな芳根京子が演じ、良策を導く蘭方医日野鼎哉を役所広司が演じました。
江戸時代末期には笠原良策や師匠の日野鼎哉、大阪適塾を開塾した緒方洪庵、妻や実母を実験台にして日本初の麻酔手術を行った華岡青洲、福井藩には医者ではありませんが、幕末の志士橋本左内は緒方洪庵の適塾で医学を学んでいました。
この映画でそう言う人達が改めて名前を知られることになったのであれば、今回笠原良策が映画になって良かったと思います。
優しく描いている教科書みたい・・
感謝✨✨
お金をもらってやる仕事ではない。
ジェンナーが牛痘による種痘を始めたのが1796年。この作品の主人公、笠原良策が福井県で種痘を始めたのが1849年末。実に50年以上の時間を有しますが、しかし彼らが頑張ったおかげで日本では1976年に種痘をやめたそうな。日本は天然痘自体は1956年以降発症していないとか。
なお、日本で牛痘ではなく人痘による種痘は1789年に成功し、また牛痘による種痘は1824年に成功したそうな。この映画を見たら、どうしてもこの映画の例が最初のように勘違いしてしまいますが、四半世紀も前に日本でも牛痘による種痘が行われたそうです。
ただ、この作品は日本で種痘が広まっていく苦労や経緯がよくわかり、決して笠原良作とその妻の偉業を否定するものではありません。しかし・・・種痘を受けるって本当に勇気が必要だったでしょうね。基本的に「ワクチン」って現代でも同じなわけで、コロナワクチンに対しても反対論があっても当然だと思います。もちろん副作用で大変な目にあった人も多かったですし。
「お金をもらってやる仕事ではない」というセリフに胸が熱くなりました。
「雪の花」というタイトルは普通に雪深い北陸福井のシンボルとして感じていましたが、全く違ったので感心させられました。
己のに恥じない生き方を
江戸時代の末期に流行した疾病に挑んだ町医者の物語。まだワクチンも無かった時代に独りの町医者が残した功績は勲章に値するように感じる。
「己に恥じない生き方をしたい」という台詞が印象的で昔も今も疾病と闘い続ける医師に感謝したい。
2025-10
名を求めず、利を求めず、胸熱時代劇!
江戸時代末期に疱瘡(天然痘)を種痘(ワクチン)で予防していく町医者の話ですが、
この時代に、いわゆるワクチンの発想が海外から持ち込まれ、
それを理解し、実現しようとする当時の医者に脱帽ですし、
素晴らしいと思いました。
やはり日本の医学を飛躍的に進歩させたのは、蘭方医であり、
杉田玄白と前野良沢によるターヘルアナトミアの翻訳書「解体新書」でしょう。
そのくだりも描かれ、
主人公 笠原良策(松坂桃李)が大武了玄(吉岡秀隆)との出会いにより、
開眼していくところや、
そこから京の日野(役所広司)に師事して、種痘に出会うところは胸熱でしたね。
いや、全編にわたって胸熱なんですよね。
冬の山越のシーン、城下町でのチンピラとのアクションシーンなど、
どれをとっても胸に突き刺さりましたね。
良策の判断軸が日野から教わった「名を求めず、利を求めず」であるところはグッときました。
良策の妻 千穂を演じた芳根京子も、良策への愛情が迸る、
また、男まさりな格闘シーン、太鼓シーンなど、みどころも多々あり、
素晴らしかったです。
その他の脇も、三浦貴大、益岡徹が良かったですね。
まさに時代劇の王道を地で行っている作品で、とても楽しめました。
松竹さんには今後も良い時代劇をつくり続けて欲しいです。
※案の定なのですが、客層がジジババがほとんどで、劇場内がお茶の間化していたのは
とてもとてもとてもとても苦痛でした。
話しのみならず、咳エチケットもなく、スマホも見放題。
普段劇場にいらっしゃらない諸先輩方の振る舞いにはうんざりです。
The日本映画
イノベーションを阻む三つの要因
『吉村昭』の原作は
江戸末期の福井藩に実在した医師『笠原良策』をモデルにしたと聞く。
藩内のみならず、近隣諸藩にも種痘を広めた経緯と努力は
映画でも描かれている。
彼は過去に天然痘の患者に何の治療も施せなかった過去があり、
何とかしたいとの強いこころざしから、
私財を投げ打ち、無私の思いで奔走する。
が、それを阻む勢力が存在するのはお約束。
現代風に言うと
イノベーションを阻害する幾つかの要因に当てはまるか。
個人的には、
「企業文化」
「過去の成功体験」
「社内政治、縄張り意識」
を挙げたい。
夫々は本作でのエピソードにも類似する。
「企業文化」は世間の因習に読み替える。
種痘との新たな予防法に対するアレルギーは、
「接種すると牛になる」との根拠のない噂に集約される。
「過去の成功体験」は蘭方医に対する漢方医の反発。
勿論、自分たちの立場が脅されるとの畏怖はあり、
頑迷な姿勢は庶民を救うよりも
過去積み上げて来た医術を守ることに固執する。
「社内政治、縄張り意識」は封建主義や官僚主義。
事なかれで、徒に結論を引き延ばしたり、
黙殺することで見て見ぬふりを決め込み
嵐が通り過ぎるのを座して待つ。
全ては自身の保身のため。
それにより他者が被る不利益に思いは及ばない。
主人公を阻むもう一つのファクターに
北国の厳しい自然がある。
痘苗を植え継ぐため、
厳寒の栃ノ木峠を、豪雪をかきわけ暴風に耐え、
幼児を連れて越える。
『笠原良策(松坂桃李)』は諦めずに敢然と挑み、
知恵も駆使して克服する。
もっともこれには
蘭方医『大武了玄(吉岡秀隆)』との会話の前振りが。
自然と対峙する西洋式の考え方が、ここで生きて来る。
とは言え、権威の側の多くが居丈高だったり
策を弄するばかりなのとは裏腹に、
草莽の人たちが
皆々意識や志が高いのには少々鼻白む。
これは原作が、
元々は子供向けの読み物として書かれていたことが
影響しているのかもしれぬ。
本作のもう一つの柱は、
『良策』と妻の『千穂(芳根京子)』との関係性。
徒におもねることなく、
一個人としての考えを尊重する。
互いに理解し信頼し合い、
苦難も共にしようとの強い絆と
影日向に夫を支える芯の強い姿も描かれる。
二人の会話や佇まいを見ているだけで、
心がふうわりと温かくなるのは、
苦難が渦巻く中での一服の清涼剤。
史実が地味なんだろうね。
まるで絵画を観ているような美しさ
感染症に立ち向かう江戸時代の町医者の話で、
新しい治療法に偏見の眼を向けられたり、既得権益者から圧力をかけられるなど、
現代にも通じる部分はあって、
冒頭ではコロナ禍の初期を思い出して少し泣きそうにもなったけれど、
基本的に素直なストーリーで、奇抜な展開やセリフはない。
しかし、登場人物たちの心がしっかりと伝わってくる映像表現になっていると感じた。
四季おりおりの景色を含む構図は
安藤広重の浮世絵みたいな部分もあってとても美しい。
人物を含む構図は長めの固定が多く、
単一の人間をクローズアップしすぎず、複数人の全身を含めた映像が多い。
そのため、顔の表情やセリフだけでなく、
立ち居振る舞い、背景、複数の人物たちの関係性も含まれて表現が多元的になるため、
心情や緊張感、空気感などがすごく良く伝わってきた。
また、どの部分にフォーカスして、どのように見るか、
観る側の自由度も高く、絵画鑑賞のようにも楽しむことができた。
演者さんでは主役の松坂さんの眼差し、佇まい、よく響く声が、
気持ちの真っ直ぐな役とぴったり合っていたと思います。
題材・役者は良いが、脚本・演出に大いなる疑問
今や実力派俳優の地位を確立した松坂桃李主演、NO,1男優役所広司も出ているということなので期待を持って観賞。
【物語】
舞台は江戸末期の福井藩。疱瘡(天然痘)の大流行によって多くの庶民が命を落としていた。城下町に暮らす町医者笠原良策(松坂桃李)は、ただ患者を隔離するのみで何も治療することなく患者を見捨てている自分に深く絶望していた。そんなとき、たまたま旅先で出会った蘭方医(吉岡秀隆)から蘭方の先進性を聞き、そこに光明を見出す。
漢方医だった笠原は蘭方も学ぶことを決意。 京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の門下生となり教えを請う。貪欲に蘭方を学ぶ中で、日野から西洋では疫病の予防法として種痘が広まっていると聞かされ、笠原は福井にもこれを広めようと決意する。
地元に戻った笠原は、妻・千穂(芳根京子)に支えられながら、地元の人々を救うため、種痘導入に向けてさまざまな困難に立ち向かう。
【感想】
正直いささか期待ハズレ。
私財をも投げ打ち、命を賭けて、全身全霊人々の命を救うために尽力した、正に医者の鑑と言える人物が居たと言う話。一般の人には知られていない偉人にスポットを当てたことはとても良いと思うし、彼の半生は興味深かった。
つまり映画の企画としては秀逸だと思う。キャスティングも全く問題が無い。ガッカリなのは脚本・演出の部分だ。
1つ1つの展開が不自然で、違和感を覚えた。
一番良い例は、笠原と笠原に協力した町人たちが命懸けで雪の峠を越えるシーン。“命懸け”を演出したかったのは分かるが度を過ぎていた。あれでは“八甲田山”の雪中行軍だ。現代の雪山装備ならともかく、あの時代のあの軽装では間違いなく死人が出る。しかも翌日は全員ピンピンしていて「苦労掛けて悪かったね」くらいの軽い労い。 あの峠越えが史実だったら彼らの中の「何人かは凍死、また何人かは手足を失うような重い凍傷で床に臥せている」でなければおかしい。 「危ういながらも全員無事に峠越えを果たした」が史実であれば、「突然の吹雪で視界も利かない中の峠越え。幸い積雪は3~4cmだったが、もしあと1時間遅かったら積雪で峠を越えられなかったであろう」という演出が妥当だ。 そもそも地元の人間なのだから冬の峠越えが命懸けなのは知っているはずだから、なぜこの時期に峠越えしたのか説明が必要。笠原が村人の話を聞いて「もう雪が降ったのか」というセリフで例年により雪が早かったことは分かるが、それのみ。弱過ぎる。
「本当はもっと早い季節に越えるはずだったが、予期せぬ障壁で初冬になってしまった」とか「今大流行中でたくさんの人がどんどん亡くなっており、春まで待てない」とか。命を救うことに全身全霊の笠原が、命懸けのリスクを軽く考えているように見えるのは大いなる矛盾。
それだけでなく、藩の協力を得るのに苦労していたのに、次の展開であっと言う間の解決。呆気にとられるばかりで説得力に欠ける。 周囲で誰も経験していない医療行為に慎重派・反対派が出るのは理不尽ではなく行政としては至極当然のこと。だからこそ「なるほど」と藩の幹部も納得した説得力ある展開が必要だろう。
そう感じる納得できない展開が随所に。「偉業の実話」ということに甘えてそういう観客を説得する脚本・演出を提供する努力を怠ったのではないか、そんな風に思えてしまう。題材、役者が良かっただけに残念。
静かで穏やかで善良
形だけ模して‼️❓侮る勿れ‼️❓
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