雪の花 ともに在りてのレビュー・感想・評価
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もっと町医者の苦労を見たかった
題材は良いし、初めて知れたことも多く興味深い歴史だった。松坂桃李くんの演技もいい。
なのになんでこんなに退屈なんだ。
前半はうつらうつらと眠気まで襲われた。
まずテンポが悪い。ここのシーンでそんなに時間使う?と思うところもあれば、逆にそこをもう少し丁寧に描いてくれよと思うところは一言のセリフで終わらせたりする。
天然痘に苦しむ人々を救おうと奮闘する町医者の奮闘ぶりがいまいち伝わってこない。ツッコミどころもたくさんある。
なのであっさり目標達成したように思えて最後も感動が薄まってしまった。
これは原作がそうなのか、実写化でこうなってしまったのかがわからないが、実在の町医者の話のはずなのに、とても作り物に見えてしまった。
もっとうまく描けたのでは?というモヤモヤが残る作品でした。
古色蒼然とした美談か、アグレッシブな実験作か
もうすごいから。なにがすごいって、黒澤明の実直な弟子みたいなイメージが強かった小泉堯史監督が、ここにきて独自の世界を完成させてきたから。
「自分が会いたいと思う胸のすくような立派な人物に、映画を通じて会ってみたい」という小泉監督のいささか無邪気なアプローチは、およそ監督がみたいと思わないものはすべて排除されてしまうため、見方によってはとても一面的で、薄っぺらくさえ見えてしまうと思う。
しかし、映画なんて突き詰めれば究極の絵空事であり、その絵空事をリアルに見せることに多くの映画作家や俳優たちは腐心してきたわけだけれど、リアルであることよりも心がこもっていることを優先したらどうなるかという試みのひとつの完成形が、『雪の花 ともに在りて』なんじゃないかという気がしてくる。
徹底的にまっすぐなセリフと、それをてらわずに演じきるシュールなくらいまっすぐな演技。それでいてときおり娯楽映画ならではのサービスをぶっ込んでくる小泉監督の実直さと、正面から応える松坂桃李と芳根京子! 特に芳根京子は見せ場がありすぎてヤバイ。
古色蒼然とした古臭い映画、のはずが、なにか新しいものが生まれていて、ジワジワと良さが沁みてくるし、考えたら結構な回数笑わせてもらってサービス満点。同じように感じてもらえるかはわからないが、小泉組の高齢化によって黒澤組から伝わる伝統芸もなくなっていくでしょうし、ひとつの日本映画の形としてこれが作品として保存されたことも良かったと思います。
こんな歴史秘話があったとは
白石和彌や入江悠ら中堅世代が次々と独自の時代劇に挑む一方、黒澤明時代からの伝統を知る小泉堯史監督が真っ向から紡ぐ本作には、これまた静謐さを凛と貫く凄みとこだわりを感じずにいられない。観客の中にはいささか古臭く新鮮味に欠けると感じる向きもあるだろうが、現代劇とは発声や所作の異なるまっすぐな演技に松坂&芳根が真摯に向き合う姿には好感が持てる。さらに私を虜にしたのは、本作が描く珠玉の題材だ。江戸時代の医師たちはいかにして疫病へと立ち向かったのか。もっと言えば、いかにワクチン接種という発想を知り、広め、根付かせたのか。己の小さな枠組みに囚われることなく、従来の常識を転換させ、私利私欲には目もくれず、愚直なまでに奔走する。そんな主人公と協力者らが織りなす命をつなぐバトンリレーに衝撃を受けた。役所広司の起用も中盤で絶妙な風を吹かせる。派手さはなくともいぶし銀の見応えと知の喜びが自ずと沸き起こる一作だ。
個人評価:3.7 シンシンと雪が降り積もるような、ゆっくりとした演...
なるほど雪の花
芳根京子と松坂桃李 そりゃみるでしょ
天然痘は 1980年に世界でも根絶したとなっており
国内でも1976年を最後に定期接種は終了してる。
ジェンナー様様である。
症状としては天然痘 水疱瘡 さる痘が 似ており 我々予防接種世代はサル痘の免疫を持つ場合があるらしい。
児童書の伝記のメンバーには ジェンナーはレギュラーであとはリンカーン キュリー夫人 ヘレン・ケラー 北里柴三郎 野口英世 などなど
マザーテレサ や ガンジー コロンブス などは 昨今の研究により 削除の方向に行くのだろうか?(知らんけど)
話は天然痘に戻って
我が国に種痘が入って来たのはてっきり明治以降だと思い込んでいたので 江戸時代にこれを行った医師がいたとは知らなかった。
漢方医が主流の時代に西洋医学を取り入れるだけでなく予防医学に達した医師がいたこと、それを実際に使い民衆を救った実在の人物がいたことに 驚いた。
新型コロナの予防接種での現代人ですら あんな反応だったのに当時の人々がよく受け入れたものよ とも思う。
新型コロナに関しては 当初の殺傷能力の高いあのウィルスと、変異を繰り返し弱毒化した今のそれを同等に語るのはおかしな事であるという認識がまず必要。
ただし 若年層において死亡リスクの低いウィルスに対し、老人への罹患対策として未成年にまで接種すべきだったかは甚だ疑問に思うところではある。
この映画のモデルである笠原医師なら なんと考えなんとしたのかを知りたいとも思う。
誠実な記録映画です。
脚本と演出が酷すぎ。こんな映画づくりしたらあかんでしょ。
時は黒船来航の十数年前、
天保の飢饉に見舞われ、
大阪で大塩平八郎の乱が起こり、
水野忠邦による「天保の改革」が行われようとしていた頃。
疱瘡――天然痘が、
日本各地で猛威を振るっていた。
それを防ぐべく、
種痘を日本に定着させようと苦闘した
福井の町医者の物語。
史実に取材した吉村昭原作の映画化。
種痘の最大の問題は苗の維持、
というのは初めて知った。
紛れもない偉業だし、
歴史の勉強になる。が、
映画としては、気になる点が多い。
まず、予告の段階から、
「疱瘡」のアクセントが気になった。
放送や包装と違って「ほ」にアクセントがあるはず。
実際、新明解国語辞典ではそうなってる。
なのにこの映画では「そ」にアクセント。
アクセントに揺れはあるし、
地方によっても異なるが、
他の台詞はほとんど標準語のアクセントで、福井弁も全然ない。
(なぜか京都の医師の娘だけが京都弁だった――親はそうじゃないのに)
だからやっぱり、いい加減なんじゃないの、と思わざるを得ない。
そしてなぜか
主人公が夫妻そろって武道の達人なのだが、
これはエンタメのためにアクション要素を入れたかったんだろうね。
ま、いいけど。
最後は、祭のシーンで盛り上がる。
なんだか1960年代の娯楽時代劇か?っていうパターン。
そういやこの監督って、
黒澤明&市川崑の弟子なんだっけ。
やたら声を張って不自然な台詞の言い方をさせていたのは演出の問題だけど、
台詞の中身がやたら説明的なのは、
映画の最初の方とくに輪をかけて説明台詞が多いのは別として、
吉村昭の原作そのままだから。
説明的な台詞ばかりの小説も、どうよ、と思うけど、
時間を短縮すれば文脈も変わるだろうに、
単にツギハギしただけなので、さらにおかしなことに。
登場人物の考えが1分も経たずにコロッと変わったり。
酷かったのが、雪中の峠越え。
案内人は先にやっておいて同行させないなんて
雪降ったら道もわかんなくなるだろうに――
と思ったら、原作でもそうしてた。
吉村さんがトンチンカンなのか、
それとも本当に
主人公がそんなバカだったのか。
* * *
ともあれ、
脚本と演出が酷すぎて、
最後まで観るにはかなりの忍耐力を要した。
料理の仕方はもっといくらでもあっただろうものを、
こんな映画づくりしたらあかんでしょ。
人の評価は当てにならない
実話であり、吉村昭氏著、雪の花の実写化。
漢方医が西洋医学に興味を持ち始めた時代
感動の実話
天然痘は一回の流行で数万人が死んだとされる感染力の強い恐ろしい疫病、昔学校で習ったときは英国人の医師エドワード・ジェンナーが自身の息子を実験台に牛痘種療法を開発したおかげで人類は救われたとされていたが、実際は息子ではなく使用人の子供で、時の明治政府が教科書に乗せるために美談に仕立てたそうだった。映画を観た時は江戸時代後期だからジェンナーが治療法を発見する以前ではないかとフィクションに思えたので調べてみたら発見は1976年(寛政 8 年)でした、福井県の郷土歴史博物館の資料によれば主人公の医師笠原白翁(良策)は実在の人物で業績も映画の通り、実話であることを知り驚きました。
医は仁術にありと言いますが笠原白翁はまさに神の様な救世主、映画ですから脚色はあるのでしょう、特に終盤の妻の太鼓の演奏シーンは盛り上がりました、夫妻とも素晴らしい好人物、笠原を支援した藩主松平春嶽らも含めて昔の日本人も捨てたものじゃないと希望が持てました、まさに愛と感動の名作です。
美しい心を持った、信念の人
笠原良策(1809〜1880)
福井藩に実在した江戸末期の蘭方医だそうですが、
はじめて知りました。
天然痘に成す術のない町医師に限界を感じて、
種痘を長崎から京を経て、福井藩に運び
種痘場を開き天然痘と戦った。
《種痘》とは、天然痘の予防接種であり、
人類初のワクチンである、そうです。
(原作は八甲田山で有名な吉村昭の同名小説)
一口に種痘と言っても、タネ菌を子供に植え付け、それが
無事“植えついて“、さらにその種菌を、絶やさずまた
別の子供に接種する。
並大抵なことではありません。
特に冷蔵庫もない江戸時代のことです。
種菌を運ぶ後半はとても緊迫感溢れる場面が続出。
特に京都の種菌を福井藩の子供に植え付け、
帰り道は雪深い峠越え、史実では、
11月19日から11月25日まで峠越えでした。
実際に11月半ばなのに雪深く、峠は猛吹雪に遭い、
本当に奇跡の生還でした(子供連れですし・・・)
良くぞご無事に帰れたものです。
映画では、せっかく届いた種痘を、御殿医が、
誹謗中傷を広げたことで、
“種痘を受ける子供が居ない“
などの大ピンチに見舞われるのです。
コロナワクチンでも、温度管理や消費期限などの、
管理の難しさが多々あり、廃棄処分したり大変でしたね。
この天然痘の種痘も種菌を絶やさず、種痘の生産と管理に
大変な資金が必要だったのです。
☆☆☆
松坂桃李は意外にオデコさんなんですねー。
背の高さも時代劇で見ると中々の大男。
武芸にも長けており、黒澤明の「赤ひげ」の三船敏朗ばりの、
骨をへし折ったり、関節外し・・・と、めっちゃ強かったり、
奥さん(芳根京子)も、出来た妻で、太鼓まで披露。
芳根京子さんは「居眠り磐音」でも思われ人の花魁役でしたが、
今作は見事に奥様に昇格しています。
品格があり格調高い本格時代劇を堪能させて頂きました。
平和な作品
平和で温かい作品だった。自分としてはそれで良いと思うが、人によっては「盛り上がりに欠ける」と思うかもしれない。
こういう「難病を克服するために頑張った医師の話」だと、だいたい「師匠や治療法の発見に苦労する」「周囲の理解を得られず孤立」「協力者が亡くなり罪悪感に悩む」「医師自身が志半ばでその病気にかかって亡くなる」なんて話になりがちだし、そこが泣き所だったりする。
しかし本作では、誹謗はされるけど理解ある家族や仲間に支えられるし、藩の藩主や重臣も理解者。師匠は割と簡単に見つかり、その師匠は人格者。治療法は苦難の試行錯誤をする程もなく確立する。協力者は死にかけても結局亡くならない。医師本人も特に病気にならない。多少の困難はありつつも、割と順調に事が運ぶ。
それが「平和過ぎて盛り上がりに欠ける」という批評もあるかなと思うが、一方で「変に泣き所を作ろうとする必要って無いよね」とも思うのだ。特に史実ベースであればなおさら。泣き所があれば良作ということでもあるまい。
全編通して温かさと夫婦愛に溢れた作品だったので、作品を「難病と闘う医師の物語」というより、「難病と闘う医師を支えた妻の夫婦愛の物語」により大きく振った方が、作品の位置づけは明確になったかもしれない。
気持ちの良い理想的な日本人像が描かれた秀作でした
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが遅くなりました、スミマセン‥)
今作の映画『雪の花 ともに在りて』を大変面白く観ました。
ここには、かつてあった理想的な美しい日本人像が描かれていると思われました。
主人公・笠原良策(松坂桃李さん)は江戸時代の末期に、痘瘡(天然痘)の治療のために奔走し、ついに予防的な種痘(予防接種)に出会います。
現在のワクチンにつながる種痘の普及に、困難を超えて尽力した主人公・笠原良策は、日本の一般人々を感染症から守った始祖とも言えると思われました。
今作は、もちろん主人公・笠原良策に対決する悪人的な人物も出て来るのですが、すぐさま主人公・笠原良策に打ち負かされ、藩に成敗されたりと、全体に流れる基調としては、静謐で凛とした、かつてあった美しい日本人の理想の姿が描かれていたと思われます。
それは、対峙するのは、悪事を働く人間ではなく、病気を含めた大きな自然的なものだとの考えが、今作の根底に流れているのも理由と思われました。
もちろん、現実は人間の酷さが問題になる場合が多いのですが、人間の酷さを描いた作品が数多ある中で、かえって今作の映画『雪の花 ともに在りて』は、特異な作品として現在に光っていると思われました。
それぞれの俳優陣の皆さんの演技も、美しい日本の風景の中で、作品にリアリティの厚みを加えていたと僭越思われました。
かつては数多くの作品の中に宿っていたとも思われる、美しくも理想的な日本人像に懐かしさも感じながら、今作を大変面白く観ました。
(※今作の撮影監督の上田正治さんが今年の初めに亡くなられている事を知りました。
上田正治 撮影監督は黒澤組の生き残りの一人で、これまでも数多くの美しい撮影をして来られたと思われます。
今作の雄大で美しい日本の風景の映像も、上田 撮影監督の力も加わっていると思われました。
改めてご冥福をお祈り致します。)
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