愛に乱暴のレビュー・感想・評価
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小説と映画、それぞれに異なる魅力
原作は、2011年から12年にかけて新聞連載され13年に単行本化された吉田修一の同名長編小説。「おじいちゃん、死んじゃったって。」の森ガキ侑大監督と脚本・山﨑佐保子が再タッグで映画化した。この「愛に乱暴」をまず試写で鑑賞し、それから小説を読んだのだが、ストーリーと表現手法の両面で、小説と映画それぞれに異なる魅力を備えていることに感心させられる。
ストーリーに関して、340ページにも及ぶ原作を2時間弱にまとめるため登場人物と出来事の整理は当然ながら、映画版では主人公・桃子(江口のりこ)をより追い込んでいくエピソードがたたみかけるように続く(小説では実母などのわかりやすい支えがある)。大きな西瓜(桃子が腹に抱えた姿は妊婦のようにも見える)、義母から渡される大量の生魚などはヴィヴィッドなイメージを伴う映画オリジナルの小道具だ。桃子が購入するチェーンソーが、原作の電動式からエンジン駆動式に変更されたのも、爆音のインパクトを活かすための改変だろう。
小説から割愛された部分にももちろん面白い要素はたくさんあって、特筆したいのは離れの家にまつわる歴史。小説と映画のどちらでも非嫡出子(婚外子)が重要なポイントになっているが、小説では初瀬家の男に受け継がれた因縁として描かれ、それが離れの存在や、床下をめぐるエピソード、さらに不審火騒動にもつながってくる。未読の方のためここまでにとどめておくが、この物語のキャラクターたちをもっと知りたいと感じたなら、ぜひ小説も手に取っていただきたい。それぞれに異なる魅力があるという点に、きっと共感してもらえると思う。
人間、そして夫婦というミステリーが際立つ
この映画は初めから観客に包み隠さず全てを見せている様で、そうとは言えないところがあるので油断がならない。夫婦間に漂う不穏な空気。双方ともそれを幾らか感じているのだろうが、夫は話し合うどころか、妻と面と向かって言葉を交わすことも億劫と言わんばかり。その原因は何なのか。我々は二人を覆うモヤモヤの実態を突き止めることができないまま、幾重にも柱と梁が入り組んだ家庭生活という幻想を見つめ続ける。主演の江口のりこはこの曖昧で不可解な空気の中を、張り詰めた糸を途切れさせることなく泳ぐのが抜群にうまい。そして徐々に感情を露わにする領域でもなお、切実さと共になんとも言えないおかしみを醸し出す。対する夫役の小泉孝太郎の、外見からして従来のイメージとは全く違う、誰も見たことのない異様な存在感は何なのだろう。決して派手さはない作品ではあるが、そうであるがゆえに物語を貫く観察眼、ひいては人間という謎が力強く際立つ。
せつない
桃子が相手を想い、大切に接しようとしても、舐められてぞんざいに扱われていく、、可哀想で、せつなくて、、自分に重ね合わせて涙が出ました。
そうしてどんどんあることに執着していく姿に共感してしまいました。幸せになってね、桃子。
やり過ぎな点もあるが
ここまでは病人じゃないんだからやらないだろうと思うシーンがあったが
原作があるなら監督も仕方なかったのかなと。
そこを省くとインパクトなくなり面白みが減るのかな。
江口のりこさんは脇役の方だとずっと思っていたけど 主演でもじゅうぶん素晴らしかったです。
一個一個つぶされていく感じが何とも。
日常のストレスがじくじく沁みていく感じとと未来の可能性を一個ずつつぶされていく感じが巧み。小泉幸太郎の顔がシャワーのときまではっきり映らず、ホームセンターの店員さんの顔もはっきり映らないのは意図的なのかな。結構もやもやとしました。
床下のアレが何なのか結局わからなかったけど、まあ世の中わからないことだらけだからそういうもんだなあと思った。
「ありがとう」
*
江口のりこさんの怪演が観たくて鑑賞
「怪演」が目に付いたのは
そこだけ切り取って予告がつくられたから
ということらしい
あそこまで狂ってしまう人は
ごく僅かかもしれないが、居ると思う
あそこまで狂わなくても
桃子のようになってしまう人は、居る
僕は桃子を「おかしい」と思わなかった
そんな僕はおかしいんだろうか…?
*
ただ普通に、子供を産んで、育てたかった
夫と一緒に、育てたかった
それが叶わなかったのならせめて
愛している人からの「ありがとう」と
スキンシップがほしかった
ただそれだけあれば
桃子の心は穏やかになれたと思う
愛に貪欲になって、何が悪い。
*
丁寧な生活系の江口のりこさん
とても可愛らしかったです
かっちりとしたイメージが常にありますが
こんなふうにふわっとした雰囲気を
纏うこともできるんだなあ、と
俳優さんってやっぱりすごいなあ、と
完全にふわふわしないところも
桃子の役柄に合っててよかったです
江口さんにじわじわシンクロしていく自分
多くは語るまい
万人が見て、「面白い」という映画ではない
ご主人役の小泉さん、史上最低の旦那だが、彼がやると
違和感がないのが妙な納得感で笑えた
淡々と描かれる日常の中で、「これが唯一の原因だ」という不安、不快感が
ない、というか全部のシーンに少しずつすこしずつ織り込まれているダメージ原因が
観ている間はそのダメージには直接的には気づかず、ただじわじわと
疲労のように蓄積していくのだ、江口さんの感情にシンクロするように見ている
我々も・・・・
で、最後にそのダメージの「原因」にハッと気が付かされる
江口さんと一緒に、そうだ、物語の始まりから、ぞっと欠落していたある「言葉」
自分もいつでも江口さんになってしまうかもしれないし、小泉さんになっているかもしれない
気をつけて生きていこう
この「ある言葉」は常に大事にしていこう
江口のりこさん演技上手いなー、大好きになった! 数年前に舞台プラサ...
江口のりこさん演技上手いなー、大好きになった!
数年前に舞台プラサイト観に行ってその時も上手くて私の中でマークしてたんですが今回で確定!
お顔は地味目ですが、背がスラっとしてて作品の中でコロコロ表情が変わって天才的だと思いました。
旦那に優しく話しかける時やベッドで甘えたりする時はなんとも可愛らしくて。その後の浮気確定からの豹変した顔付きと態度は狂気漂う恐ろしい女、見事でした!
それでもって作品の八割は江口のりこにフォーカスしているのに飽きるどころかずっと釘付け!あり得ない!ホントに素晴らしい演技でした!
この作品を観て彼女のファンが増えるのは間違いないでしょうね!
鼻からスイカを…とか言うもんね。
離れで暮らすある夫婦。隣の母屋には夫の母親。何故か微妙に噛み合わないまるで表面上の家族。そして明かされる夫の秘密。“良き妻”として日常生活を送りながらも、不倫アカウントをチェックし、行方不明のピーちゃんを探し続ける妻桃子の暴走が加速してゆく。
欠けたティーカップ、謎の不倫アカウント、床下から聞こえる声の正体、ひとつひとつが後半にかけてよく効いてきて、なるほどなと思った。ただ近隣のゴミ置場で起こる連続不審火の意図が私にはよく分からなくて、これは桃子がやっていた全てが報われないんだよって事なんだとしたら、なんぼなんでも可哀想よと思ってしまった。
江口のりこの淡々とした中にある狂気を帯びた雰囲気がとても合っていたし、小泉孝太郎の演じるクズ男は本当にピッタリ過ぎて申し分ない。それにしてもあのスイカのシーンはめっちゃ怖かったな。床に叩きつけるんちゃうかとドキドキしました。
チェーンソー
日本の嫁あるあるてんこ盛りで、誰からも玄関マットのように扱われる桃子。
いつか訪れるだろう大展開を待ってたけど、それが「ありがとう」のひと言だというのは、カタルシスには欠けるがリアリティはある。
ただなぁ、せっかくチェーンソーがあるんだからさぁ…
けして乱暴などではない
私の人生に限って言えば
「理想」に対しての思いは「妥協」の連続である
とは言え相手と話すことなく私自身が相手と対峙することなく自分勝手に退く事の繰り返しで「妥協」と言えるのかどうかはわからない
そもそも理想など最初からなくてただ流れに身を任せて漂っているようなもので、そうするとこの物語での真守と大差ないのだと思う
相手のことを本気で考えてはいないのだ、自分さえ本音を押し殺していればそこそこ何とか乗り越えていける
そんな思いでここまで来てしまっている
自由への憧れは子供の頃からずっと持っていてそれは今でも変わらないのに本気で自分と向き合わなかったから今がここにあるのだと思う
今が良くないわけではない、好きなことがそこそこ出来て体もそこそこ元気で財布にも幾らかのお金がある
あまり欲張らなければきっとこれを幸せと呼べるのではないかとも思う
普通みたいに生きることを望んでいたわけじゃないけど何かになりたかったわけでもなくただ流れに任せて生きていたからそこそこの生活が出来ていと
見方によればそれはとてもラッキーで幸せに他ならないのではないだろうか
首輪を付けたままの捨て猫に哀れみよりも憧れがある
きっとそれは、とても贅沢なことなのだと思ってしまう。
怖いけど共感するところも多かった
江口のりこ演じる桃子から感じられる重量感ある苛立ちに既視感があるなと思い考えてみたら、泣きたいのに泣けないあの苦しみに似ていると思った。
微量ながら日々少しずつ溜まるストレス。
小さいからこそ発散ができず膨らみ続ける。
恐怖は身近に転がっているもの。
これって厄介で恐怖。
怖いと思いながらも、共感するところが多かった。
もっと違う江口のりこさんも
【愛に乱暴】
マイホームで夫と義母と暮らし一見幸せそうに見える妻が、日常に忍ぶ不快・不信・不安に心を削り取られて行く様を描く物語です。これまでも幾つもの作品が映画化されて来た吉田修一さん原作となると、際どい犯罪ものなのかなとの想像も膨らみます。そして、その妻を演じるのが今や絶好調の江口のりこさんです。
行方不明になったと描かれる猫って本当に居るの? 謎の放火の犯人は? SNSに流れる不気味な発信は誰から? 更に、姑との無言の刺し合い・投げ遣りな夫と、日々の生活に流れる不穏さを深く見せずにジワジワ締め付けます。どこか不機嫌そうに見える江口のりこさんは全ての場面で登場し、徐々に軌道を外れて行く様は面目躍如です。でも、吉田修一原作にしてはグサッとぶっ刺す衝撃が無くどこか物足りなく感じました。
本作では、我々が想像する江口さんらしさが、江口さんならではのふてぶてしさでぶちまけられます。でも、余計なお世話ですが、それでいいのかなとも思うのです。今年数々の映画に出演した江口さんは、どれも想像通りの江口さんばかりです。それは、彼女がそれだけの個性を発揮し、力もあるからなのでしょう。また、俳優さんにとってはそうしてオファーが続く事は有難い事なのかもしれません。しかし、江口さんはもっともっと色んな表現が出来る俳優さんに違いないので、もっともっと色んな面を見たいと思うのでした。
一見ありふれた家族の話にみえるが、、
話の聞かない夫、漠然と合わない姑
どこにでもある家族かと思いきや
もっと嫌な方向へ。
何で慰謝料踏んだくって離婚しないの?
と思っていたら、またもや嫌な方向へ。
原作未読ですが、
吉田修一らしい、はっきりしない結末。
小泉兄の役は社会的に普通の人だけにクズ感が気持ち悪い。
期待度○鑑賞後の満足度△ 題名に「愛」と有りながら、話の成り行きや主要な登場人物には全く「愛(というもの)」がない。確かに『愛(というもの)に(対して)乱暴』な話だわ。
《原作既読》①吉田修一の作品は大概好きだが本作(原作)はあまり面白くなかった。
感度が鈍くなったのかも知れないけれども、この小説及びその映画化である本作の結婚像・夫婦像はどうもピンと来ない(というか、こんな夫婦像を見せられてもどうでもいいわ、という気になる)。
②『湖の女たち』は吉田修一の小説としては生煮えだったけれども、その映画化作品は面白かった。
しかし今回は映画化作品も面白くない。
桃子の心理描写に集中したかったのだろうが、原作でもまだ魅了的な人物達やエピソードをバサッと切ってあるので話に膨らみがない。
と言って桃子の心理描写が上手くいっているかといえばそうでもない。
唯一、床下でマモルと姑の会話を聞いているシーンの表情は良かったが、総じて江口のりこの無駄使いである。
③マモルが別れたい理由が“一緒にいても楽しくないから“というのも分からないでもない。桃子もこの家に入る(結婚すると)うえで気まずいことがあったので良い嫁になろうという姿勢が見え見えだし、一人で何とか楽しい家庭にしようと空回りしている。
しかし、このマモルという男もどうしようもない男である。原作でも酷い男だったが、イヤになる度に逃げようとするするところ等、本来結婚には向かないのではと思う。
大体桃子にしても今の不倫相手にしてもこんな男のどこが良いのかと思う。
小泉孝太郎は適役好演と云うべきか。
姑も初めから桃子に対しては思うところもあったみたいで、最後吐き捨てるように「今さら(何よ!)」という台詞が怖い。
④
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