愛に乱暴のレビュー・感想・評価
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ひとつの絵画を観ている様な。
見えていないだけできっとどこかしらにある風景で、誰にでもある感情。
彼女が畳の下に埋めたもの。
人間の剥き出し。歪み。色々な角度で見え方は変わる。
次観たらまた感じ方は変わる。そんな作品。
「こんな作品です。」とはひとくくりにはできないかな。
でも私は作品の世界に引き込まれました。
小泉孝太郎の駄目夫役。この発明的な配役が猛烈に良い。
江口のり子
ぴーちゃん
ミステリアスな雰囲気に包まれる作品
献身的で“良い妻”
姑にも積極的にコミュニケーションを取り
ゴミ捨て場の清掃も自主的に行う
まるで完璧な主婦
しかし夫はそんな妻に無関心
それでも妻は毎日の勤めを果たしていく
夫の不倫が発覚
終始、妻が見ていたSNSは
実は自分の過去の投稿だった
まるで夫の不倫相手のアカウントかもと
思っていたが
心理的トリックにハメられた
つまり“妻”も
実は夫の“元不倫相手”だと言うことが判る
しかし再婚後流産し
そこからかなり精神的ダメージがあったのだろう
床下に埋められていたのは
我が子に着せるはずだったロンパースと靴下
それは
お菓子のカンカン詰めて
床下の土の中奥に埋めたのだ
きっと悲しみも悔しさも
全ての感情をそこに埋めたのだろう
実家に寄った時の
姪や甥に見せた“あの顔”が
彼女の本来の顔だったのでしょうか
あの時の笑顔はあのシーンしか見れない
クズ男は
一生クズ男
きっと彼女は
これからも大丈夫
きっと大丈夫
岩代太郎の
不穏でミステリアスな音楽が響く
江口さんの多彩なワンピースが映画の雰囲気の救い
力作だとは思う。思うが、、
どんな話か全く知らず、だけど怪しさはキャスティングから充分感じられ、期待はかなり高くしてしまったが、テーマと手法がちょっとあってないのかな。。
そして江口のりこは大好きなのだけど、この役はもっと凡庸なアイドルめいた人のほうがうってつけだったような気もする。
個人的には演出過多な印象。追い詰められていく江口のりこを淡々と追っていく前半部「いいわね、あなたにはたくさん選択肢があって」ひとことで全部を伝える構造はとてもいいのだけど、カメラが江口のりこに肉薄し過ぎてる感じがする。
この、世間ではまったく忘れられそうな主婦のため込んだため息の充満する危険な空気の話は、アケルマンのジャンヌディエルマンから『ワンダ』からアルトマンの『雨に濡れた舗道』とかでもいいのだけど、その系譜に連なるものだと思うけれど、それらの作品と違ってカメラが主演に肉薄し過ぎて狂気が伝わらなくなっている。物事を客観的に、冷静に突き放して観客もその想像合戦に参加させるのはとても強い演出力と観客を信じる力が必要なのだと思うけど、比較的サービス精神に溢れて動く江口を見せることに終始する。カメラがバックショットで江口のりこをずっと捉えていて、観客がそこに共感できれば、という作りなのだと思うけど、これは江口のりこの叫びを捉えようとするのならもうちょっと距離を離して観客が身を乗りだすような辛抱強さが必要だったのではないかと考えたり。出来事の展開と世界観はいいのだけど、、惜しい気がする。
健全な傲慢さが救いになることもあるはず
辻村深月さん原作の『傲慢と善良』の別視点とも思えるような物語。
ホテルのカフェで対面することになった不倫相手の馬場ふみかさん。
もし、不倫相手が馬場ふみかさんでなく、桃子から見て明らかに自分より容姿も劣り、職業やその他の属性においても、桃子の価値観においては〝桃子より下の人〟であったならこれほど心を乱されるようなことにはならなかったのではないか。
こんな下衆な男、こちらの方から離婚してやる。
と、割と単純に割り切れた気がする。
(と割り切れたなら、江口のりこさんの無敵な演技も、そもそもこの映画のような物語も必要なくなってしまうのだが…)
人が人を自分より下に見ることで得られる心の平安。
他者を下に見る、なんて発想は差別的であるとか傲慢であるという批判はその通りだが、人間心理としては、言い方を変えれば、人間がプライドを保つためには誰しもが心当たりのあることなのではないか。
国家や人民を守るための政治リーダーであったり、スポーツや芸術においてより秀でたパフォーマンスを発揮する。
そのような人たちの持つ崇高なプライドとは次元が違う品性に欠けるプライドではあるけれど。
決して人には言わないし、人を傷つけることもない秘かな傲慢さ(品性に欠けるプライド)であれば、いつも自分は敗者側に追い込まれていると社会を憎んだり、心がズタボロになるよりはずっと健全だと私は思います。
※桃子が不倫相手に決定的に負けた、と思わせられた原因に〝懐妊〟をあげるのは、なんとも言えない不快感を覚えます。
「分かり易いもの、言われないと気づかないもの」・・・狂気とエロス
両端が黒くつぶされる4:3の画面比率の映画でしたが、冒頭、何十年も使い倒されて燻んだトーンになっている古びた家屋における台所仕事を詳細に描写されたりする中で、まるで古いドキュメンタリー映画を観せられてる様な錯覚に陥りました。まあ、スマホ出てくるし、LINEっぽい描写もあるから現代の話に違いないのだけど。
今思えばこの段階で既にわたしは監督の術中にはまっていた訳なのですが、この作品において徐々に顕在化していく沢山の「狂気じみたもの」は、今、目の前で突発的、偶発的に生じたものではありません。
過去の長い長い年月を経てその狂気は徐々に醸成され、当人にとってはそれは当たり前の事象、下手すると世間的にもギリ許容されるんじゃないかと・・・いわば拡大解釈や誤認がすすんでしまっていることに、とても恐怖を感じました。
若干のパート勤めはあるがほとんど専業主婦である桃子を演じるのは演技派女優、個人的に大好きな江口のりこさんです。
年齢的に最後の妊活に興味があるが亭主は全く協力的でなく、むしろその亭主の浮気が疑われる最悪な状況に追い込まれ、精神的に不安定さが増し、徐々に言動の異常性が目立ち始める桃子。
しかし、亭主はじめ主要な登場人物のほとんどは様々な要因で「ナチュラルに狂人(笑)」でして、言われないと気づかないくらいの程度に常識人の姿に化けています。その化け物達に囲まれる中、桃子の分かり易い狂気が正当性を保ちつつ物語をひっぱっていくという稀有なパターンとなっています。
原作未読ですので、原作が素晴らしいのか脚本もしている監督さんの腕が立つのかよく分かりませんが、これだけ目を背けたくなる狂気をとっちらかしながら何やら爽やかな読後感さえある締め方にとても好感を持ちます。
あと、着目点に品が無くて申し訳ないですけど、ストーリーに必要な必然的なエロスも、狂気と同様、「分かり易いものと、言われないと気づかないもの」をしっかり提示していて素晴らしかったです。「言われないときづかないもの」に関して言及しますと「不倫相手の部屋での演出、演技指導?」とか、フェチ目線?ではもう完璧としか言い様がありません。やはり敏腕ですね、森ガキ 侑大監督は!
江口のりこさんの体当たりの演技はじめ、演者の皆さんがその演技に静かな狂気を含んでいて本当に素晴らしかったです。
ぜひご鑑賞ください!
江口のりことチェーンソー
チェーンソー買うことまずないね(追い詰められているんだなー)
江口のりこ主演作が続きますね。
今作は吉田修一の小説を映画化。
主人公の桃子が、現実を見ないようにしながら、鬱屈とした日々を過ごす話。
夫の不倫をメインに、義母との関係や仕事の問題など、満足のいかないストレスフルな日々。
桃子が徐々に壊れていくのだが、正常な範囲とでも言おうか、理性はあり自分をどうにか保とうとする。
首輪してるのに捨てられる猫の話は、指輪してるのに捨てられる桃子?揶揄してるのかと思った。
*以下、小説のネタバレ含みます。
映画化を知って読んだ原作では、夫・真守の不倫相手の日記がところどころ差し込まれるが、実はそれは桃子自身のものだと、中盤辺りからわかる。
夫の真守は不倫体質か。桃子も二番目の妻なのだった。
設定全く違うけど、映画ではそういう女性の心のつぶやきが、不倫相手のものと思われるSNSだった。
チェーンソーで穴あけた床下でベビー服を見つけるが、二人が住んでる離れは、真守のおじいさんの愛人が住んでた場所なんですよね、原作では。ベビー服はその愛人の準備してたものだったかな?記憶も曖昧。。映画は家族のことにほぼ触れてないし設定違うのでしょう、その辺りはわかりにくかった。
あと…最初の方の婦人科の場面で、カーテン開けたままの診察にかなり違和感。
それと…江口さんの初ヌード?見せる必要ありましたかね。個人的にはない方が良かった。
さらに…ホームセンターの李君が近所の子っていうのも映像ではわかりにくかった。
以上で星3つです。
風吹ジュンさんは流石、わかりあえない姑役がうまかったです。
「ありがとう」と言ってくれてありがとう
江口のりこはこの5ヶ月で3本目の主演映画公開です。で、この「愛に乱暴」は本当に彼女ばかりカメラは追い、彼女のいないシーン(もちろんいないカットはありますが)はありませんでした。まさに主演映画です。
冒頭から10分ほどで彼女の現状がわかります。夫との関係や義母との関係、以前勤めていた会社が主催する「手作り石鹸」の講師などですが、確かに彼女にとっては不満な生活かもしれませんが、「それなり」に充実しているとも言えます。義母との関係もいうほど悪くはないと思います。
ただ、夫が若い女と関係を持ち妊娠させてしまうようなクズです(爆)しかも、同じような理由で現在の嫁も元嫁と離婚したうえでの再婚です。徐々に壊れていくヒロインですが、その壊れていくさまが鬼気迫るものがあります。江口のりこの演技はさすがです。ただ、誰のためのサービスカットなのでしょう(笑)私は好きですが。
彼女が正気に戻るのは、得体のしれない中国人青年との初めての会話です。
「いつもゴミ収集所をきれいにしてくれてありがとう」
劇中、彼女は夫に「あなたはありがとうって言わないよね」と一言いいますが、スルーされてしまいます。観ている方も・・・私もよく妻に言われるセリフなのでスルーしがちですが、この他人からの感謝の言葉こそが彼女を正気に戻し、あくまでも想像ですが彼との離婚にも応じたのだと思います。
この女を怒らせてはならない。荒ぶる女神 江口のりこの姿を目に焼き付けろ。
フィルム撮影されている。冒頭から適度に荒れた画像で、主役初瀬桃子の姿が延々と映し出される。ゴミ出しに行く桃子、石鹸作りを教える桃子、買い物に行く桃子、料理をする桃子、猫を探す桃子。江口のりこが淡々と能面のようなポーカーフェイスで演じる。背景はぼかされ、カメラは微かに揺れ続け、不穏な雰囲気が醸し出されている。
そもそも原作者の吉田修一が意図している「愛」とは何か。それは一種の秩序のようなものである。夫も妻も、親も子も、それぞれの立ち位置を守りそこから踏み出さない。裏では背信行為があるかもしれないが相手には明かさない。そうすれば連帯感や信頼感が生まれてくる。愛というものはそういうものだと吉田は前提におく。そして、それぞれの立ち位置からはみ出してしまう行為を「乱暴」と捉える。
原作では、主役の桃子も含め、登場人物たちが多かれ少なかれ他人に対し乱暴であり、その結果として関係性が壊れていく姿が精緻に描かれている。また吉田の作品ではよくあるモチーフの被害者と加害者が入れ替わる局面も描かれる。
映画は、途中までは実に忠実に原作をなぞっている。細かい部分での省略や改変はあるものの。
ただ、決定的に原作と映画が違っているのは途中から初瀬桃子=江口のりこが暴走を始めるところにある。それが端的にあらわれているのは、桃子が不倫相手の部屋を訪ねるところ。映画では、桃子は大きなスイカを畑からもぎ取ってもっていく。この場面は原作にはない。私は、桃子の攻撃性、暴力性をより過激に描きたいという映画製作者の意図的改変だと考える。スイカのシーンをきっかけに桃子はチェーンソーを振り回し家を破壊しはじめる。結末部分も同様で、原作はやや丸く収まっているが、映画は桃子が全てを破壊し尽くした後のようにみえる。詳細な説明はないけれど。
そして、江口のりこという女優について。よく「狂気」の演技とか言うけれど、彼女の演じる役はどこが冷めていて狂っているようにはみえない。むしろ分かっている上での攻撃性や暴力性を表現できる得難い役者なのだと思う。破壊王と呼んであげてください。
下手なホラーよりも怖い
最初から漂う不穏な空気感
がとても良かった‼︎
中盤あたりから段々と壊れていく日常、桃子が凄かった‼︎
好きなシーンは桃子がだんだんとおかしくなっていったけど最後の最後で「ありがとう」と言われる所です‼︎桃子にちょっとだけど救いがきたように感じれてとても良かったです
あとは畳の下にあるものには驚きました‼︎
そしてなんといっても主演の江口のりこさんの演技‼︎本当に凄かったです‼︎
愛情のベクトルが一致していない
タイトルなし
江口のりこさん宛書かといった感。独壇場。原作読んでないのでわからないけど、床下の秘密にはお母さんも関与しているらしく、精神分析的には抑圧物の回帰か。最初からかなりおかしかったとすれば、流産から精神を病んでたし、もともと問題あったかもしれない。頭は良さげで、それなりに人にも優しく、仕事もきちんとする感は描けているとともに、もともと江口さんのキャラとしての、自分に対してどうでもいい感というか、距離感が出てた。ただし、映像において不気味さがずっと漂っていた。孝太郎とのやり取りは、単に無関心というより、統合失調症家族のそれみたい。風吹ジュンは最近いい人役が多すぎるけど、こんなに嫌な役も上手にできるのだと関心。猫を追っ払うシーンもいい。
女性の不幸はもっと内閉化するけど、こんなに攻撃的なのはスカッとする。と共に、やはりそれは伝統芸として狂気として表現される。孝太郎の反復と無神経さと裏腹の正直さも物語として見事である。風吹ジュンがやり直せるわよというシーン、妙に救いがある。
「江口のりこさん一番」
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