「押し殺してきた心の叫び」愛に乱暴 ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
押し殺してきた心の叫び
桃子は丁寧な暮らしを実践し、食事にも手を抜かず、普段から体に良いものを摂るように心がけている。服装も、麻や綿の天然素材中心で、シンプルだけどおしゃれです。あのエプロン素敵、私も欲しいですが、自分が買ったら汚したくないから使えないかも。これで家も綺麗なら、もう『クロワッサン』に載っていてもおかしくないです。
それでもなぜか母屋の姑はよそよそしく、たまにチクチクと嫌味を言い、夫の真守は話しかけてもいつも上の空。頑張りは空回りして、少しずつ追い詰められていく……
本作は、桃子に共感できる部分があるか、自業自得と受け取るかで好みが分かれそうです。
私は丁寧でもお洒落でもないし、不倫は許せませんが、本作をとても気に入りました。
猫のぴーちゃんは居なくなったのではなく、初めから居なかった。というか、桃子自身が傷ついた野良猫でした。自分の居場所を少しでも居心地よくしようと努力したのに、コツコツ築き上げたものは不安定であっけなく崩れようとしていました。
上質な小物たちは鎧のようなものです。「おかしくなった振りをしないと本当におかしくなりそうだから」というのは本音です。桃子の心は悲鳴を上げていました。「ちゃんと私を見て!」
結婚前に話せなかったあの事は、結婚できなくなるからというだけでなく、その事を口に出してしまうと、それが事実として確定して向き合わざるを得ないから、言い出せなかったというのもあったでしょう。姑が夫の遺品をなかなか捨てられなかったのと通じるところがあると感じました。
姑は、桃子の事が嫌いだったのですが、そんな桃子の辛さを最後は理解したのでしょう。
クズ夫のことは忘れ、姑とは和解したのだろうと、私は思います。
重たい内容でしたが、後味は悪くないです。
ていねいな暮らしは、妊活のためもあったのかもしれません。ラストで添加物もりもりそうなアイス食べてたのも、妊活諦めたから、と思いました。
私もこの映画好きです。
共感ありがとうございました。
「桃子自身が傷ついた野良猫」
素晴らしい表現ですね!まさにおっしゃる通りと思います。また姑と桃子の関係性に関しても全て同じように感じました。それにしてもゆり。さんの考察、ものすごく的確ですね。