「夫婦生活の「なにか」を授けてもらえるような、もらえないような」愛に乱暴 やあやあさんの映画レビュー(感想・評価)
夫婦生活の「なにか」を授けてもらえるような、もらえないような
何年振りかで夫としょーもない痴話げんかを繰り広げた翌日。
「既婚。子供なしの主婦」と、私と同じカテゴリと知り、なにかの知恵を授けてもらえるかしらなんて動機で、鑑賞。
いや、よくよく見ていたら、略奪婚がベースになっているあたりで、自分とは立場が違い過ぎるしそういうものではないらしい、と気づいたのですが。
終盤近くに真守が桃子に発するセリフ
「ナオは関係ない。もう桃子と一緒にいたくないんだ。一緒にいても楽しくないんだ。」
は、なんというか、目から鱗でした。
そうかぁ。こんなセリフを面と向かって言えちゃうあたり、この種の夫にとって楽しくないというのは妻をチェンジする正当な理由になるんだな。
ずっとずっと楽しませ続けなきゃ用済みなのね。
こんなセリフを聞くくらいなら
「ナオの方を好きになった」
と言われた方がまだマシかな、自分なら。
いや、やっぱりそれも嫌だな(笑)
個人的に夫婦喧嘩の後に見たから、感想が偏ってるかも。
何かしら知恵を授けてもらえるんじゃないかという冒頭の動機に関しては、おぼろげながら授けてもらえた気はします。
こういった波乱万丈人生は映画や小説で見るだけでおなかいっぱい。
自分は平凡でも夫と仲良く添い遂げるべく頑張ろう、と。
若いナオと対峙した時のセリフ
「あなたは選択肢がたくさんあっていいわね」
は、やるせなかったです。
昔はたくさん開いていたはずの未来への扉が、気づけば一つ一つ閉じられていた。
丁寧に生きてきたはずなのに、どこにも行き場がなくなってしまった。
それとの対比でしょうか、ラストでの風吹ジュンのセリフ
「やりなおせるわよ」が、救いに感じました。
メインテーマからは離れるんですが、真守ってちゃんとした会社勤めの人ですよね。
バツ2の揚げ句愛人が妊娠したから再々婚というのは一般社会ではかなり目立つし、男の人ってそういった社会的立場から自分を律していく面があると思う。
実際、不倫がモチーフの作品は古今東西山ほどあるけれど、愛人は愛人のままで終わることが多い。
子供が欲しいなら、愛人と不倫しつつも妻と妊活するというパターン。
この作品はある意味「江口のりこ物語」だから、彼女の心の襞にフォーカスしていて、それはとても見ごたえあったけれど、クズはクズなりに真守の人となりももうちょっと知りたかったです。
不倫するたびにいちいち律儀に(という言い方も語弊があるが)妻を取り換える心の動きは原作には描かれているのかしら。
あと、放火犯って誰だったの??