劇場公開日 2024年8月30日

「最初から「変な主婦」でしたがそれは江口のりこなので仕方ない」愛に乱暴 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5最初から「変な主婦」でしたがそれは江口のりこなので仕方ない

2024年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

見始めてまず気づくのが画角の狭さで35㎜フィルムのスタンダードサイズで撮影したというのだけれどデジタルシネマに慣れきっている身にしてみれば何故敢えていばらの道をと思うがメイキングを見ると現場の緊張感と映画愛が伝わってきて幸せ。さらにはステディカムを使っての1シーン1カット長回しが多用され被写界深度の浅いレンズで一寸先がボケボケの手元と表情を行きつ戻りつする演出はスリリング。「予算オーバーした場合のフィルム代は監督とカメラマンが自腹で払う」という条件でプロデューサーを説得したというのだから撮影の重森豊太郎には敬意を表する。役者もかなりの重圧だと思うけれど江口のりこは逆に「エンジンがかかった」そうで、意外な小泉孝太郎のキャスティングも見事はまったし、風吹ジュンにも今年度ベスト姑賞を与えよう。昨今取りざたされる「生産性が無いとされる女性」がテーマなのだが、とりたてて大きな事件が起こるでもない小さな家族の小さな世界の小さな物語。私見だけれど105分のシーン中に90分は江口のりこが出ていたと思われ彼女を愛でるための作品でもあり1映画の主人公登場時間割合はギネス認定されてしかるべし。「変人扱いしないでくれ」という一方で「おかしいフリしてあげてる」とも言う桃子は正気と狂気のはざまを演じる江口のりこそのものでどれだけ叫んでも必死に走ってもメーターを振り切ることは決して無い。クレジットで「カラス担当」という表記を初めて見た。

たあちゃん