「力作だとは思う。思うが、、」愛に乱暴 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
力作だとは思う。思うが、、
どんな話か全く知らず、だけど怪しさはキャスティングから充分感じられ、期待はかなり高くしてしまったが、テーマと手法がちょっとあってないのかな。。
そして江口のりこは大好きなのだけど、この役はもっと凡庸なアイドルめいた人のほうがうってつけだったような気もする。
個人的には演出過多な印象。追い詰められていく江口のりこを淡々と追っていく前半部「いいわね、あなたにはたくさん選択肢があって」ひとことで全部を伝える構造はとてもいいのだけど、カメラが江口のりこに肉薄し過ぎてる感じがする。
この、世間ではまったく忘れられそうな主婦のため込んだため息の充満する危険な空気の話は、アケルマンのジャンヌディエルマンから『ワンダ』からアルトマンの『雨に濡れた舗道』とかでもいいのだけど、その系譜に連なるものだと思うけれど、それらの作品と違ってカメラが主演に肉薄し過ぎて狂気が伝わらなくなっている。物事を客観的に、冷静に突き放して観客もその想像合戦に参加させるのはとても強い演出力と観客を信じる力が必要なのだと思うけど、比較的サービス精神に溢れて動く江口を見せることに終始する。カメラがバックショットで江口のりこをずっと捉えていて、観客がそこに共感できれば、という作りなのだと思うけど、これは江口のりこの叫びを捉えようとするのならもうちょっと距離を離して観客が身を乗りだすような辛抱強さが必要だったのではないかと考えたり。出来事の展開と世界観はいいのだけど、、惜しい気がする。
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