劇場公開日 2024年7月5日

「重たい言葉だけが空回りする ―― 正月に見る「価値」を模索するにはもってこいの作品!」先生の白い嘘 critique_0102さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0 重たい言葉だけが空回りする ―― 正月に見る「価値」を模索するにはもってこいの作品!

2026年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

正月映画には、少しばかりの希望と、少しばかりの我慢を持って臨みたいものだ!
しかし、本作に関して言えば、我慢だけが見事に残った。

映画.comの解説には、
男女間の性の格差を描いて反響を呼んだ鳥飼茜の同名漫画を実写映画化。自らの性に対して抱える矛盾した感情や、男女間に存在する性の格差に向き合う女性の姿を通して、人の根底にある醜さと美しさを描き出す。
とあった。

「男女間の性の格差」「人の根底にある醜さと美しさ」といった、いかにも重厚そうな言葉が並んでいる。
そうなのだろうか?

扱っている題材は確かにセンシティブだ。しかし、題材がセンシティブであることと、映画での表現が深いことは別である。

この映画はその区別を、最初から最後まで取り違えている。未成年の妄想めいた感情や衝動を、心理学や臨床の言葉でコーティングすれば「作品」になる、と本気で信じているような危うさがある。

問題を描くのではなく、問題を“持ち込む”だけ。整理も、咀嚼も、問い直しされていない。
その典型的な例が次のセリフだ。

「俺って生きる価値がない」

重たい言葉を登場人物に言わせれば、観客が勝手に深読みしてくれるだろう、という期待が透けて見える。
ちなみに演じている「健次郎」は悪くない。むしろ、この空虚な台詞群の中で浮かび上がってしまうほど、役に“はまって”いるのが皮肉だ。

奈緒の扱い(主人公の描き方)も不可解なままだ。
表情、人格、存在感まで含めて、あそこまで「作り変える」必要が本当にあったのだろうか。
特に、ホテルでの長広舌の直後にそれをやられると、演出の必然性よりも、作り手の自己満足が前面に出てしまう。
あの演説シーンは、高校生向けの保健体育の授業を延々と聞かされている感覚に近いものがある。

加えて、音楽(BGM)も珍妙だった。

なぜ、これほど真面目ぶった題材を、ここまで可笑しく演出できるのか。
緊張感を高めたいのか、皮肉を効かせたいのか、どちらなのか分からないまま、結果的に「なんかそのような」といった雰囲気に流され、映画のモチーフがわからぬまま崩れていってしまっている。

そして、ラストの「二年後」。
時間を飛ばせば、物語が前進したように見えると思ったのだろうか。厳しい言い方をすれば、積み重ねのない未来は、ただの逃げでしかない。

結局、この映画は
「重要なテーマを扱っている自分たち」に酔っているだけのように見えた。
性差別も、自己否定も、社会への問いも、どれ一つとして掘り下げられないまま、表面だけをなぞって終わる。

正月早々、「観ることの価値のない映画」に出会ってしまった気になってしまった。だからと言って、クローゼットに紐をかける(掛ける)ことなどしない。かける(賭ける)なら、この作品ではなく別の一本に賭けたかった。

critique_0102
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