「役割の自認は性的な魅力の終着駅にもなり得るが、その駅の先にはまだ線路が続いている」先生の白い嘘 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
役割の自認は性的な魅力の終着駅にもなり得るが、その駅の先にはまだ線路が続いている
2024.7.6 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(116分、R15+)
原作は鳥飼茜の同名漫画(講談社)
性的不平等に悩まされる女性教師を描いたヒューマンドラマ
監督は三木康一郎
脚本は安達奈緒子
物語の舞台は、日本のどこかの地方都市(ロケ地は富山県富山市及び黒部市)
桜丘高校の教師として働いている原美鈴(奈緒)は、ある悩みを抱えていた
それは、男女には性的な不平等があり、女性はいつもそれに犯され続けているというもので、その発端になったのはある男からの性暴力だった
ある日、いつもの居酒屋で親友の美奈子(三吉彩花)と待ち合わせをした美鈴は、そこで彼女が恋人の早藤(風間俊介)と婚約したと聞かされる
この早藤こそが美鈴の発端になった男で、その後も彼は幾度となく、体の関係を求めてきた
婚約が決まってからもそれは続き、美鈴の背徳的な観念を彼は理解しているようだった
そんな折、美鈴はクラス内で立ち上がったある噂によって、教え子の新妻(猪狩蒼弥)が孤立していることを知ってしまう
美鈴は新妻から事情を聞くことになるものの、彼は「噂である人妻との関係」を正直に認めてしまう
学校サイドとしては、彼が否定し、それを学校は信じるというスタンスで押し通すつもりだったが、その目論見は見事に瓦解してしまう
美鈴は動揺して洗いざらいをぶちまけることになり、新妻はそんな美鈴と距離を縮めていくことになるのである
映画は、映画内以外の事で盛り上がっていて、内容に関する評価というものが歪んでいるように思える
事の発端は監督の発言によるものだそうで、その影響かはわからないものの、映画のパンフレットは発売中止になっていた
気になるキャストがいても調べようがなく、一刻も早い出版をお願いしたい
物語は、性的な不平等を抱える美鈴と、それを利用している美奈子が対比になっていて、役割というものの言葉がそれを生み出していると感じた
美鈴は未婚で子どももおらず、経済的にも自立しているのだが、美奈子は結婚、出産を経て、女性だけが持つ役割というものを認識している
早藤が行っていたことを彼女が知ることになるのだが、その際に夫に浴びせる言葉は結構エグい
そこで彼が取る行動がまた衝撃的で、ここまでクズだとなかなか潔いなあと感じた
いずれにせよ、セックスが主題の映画なのに着衣で誤魔化したりするのも微妙で、そのあたりの表現をどうするかのために必要な人材がいたりもする
そう言ったケアを表現のために排除することになった経緯や心中というものはわからないのだが、それが原因でこの表現になっているのだとしたら、覚悟を決めて出演している女優に失礼なように思う
昨今ではコンプライアンスなどで色々と制約が厳しいこともあると思うが、それでも必要だから描写するということと戦えないのであれば、別の人材に話を振った方が良かったように思う
映画は、性的な描写は控えめ、暴力描写は過激、言葉の暴力に至っては強調という具合になっているので、そのバランスを考えると微妙な感じになっているように思えた