劇場公開日 2024年6月7日

「弟単独作」ドライブアウェイ・ドールズ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0弟単独作

2024年8月22日
PCから投稿

ジェラルディンヴィスワナサン見たさで。
タミル人の血が入っているそうだがアラブ世界の気配。お目目ぱっちりでぽちゃ。Melissa Barrera似の今世紀を勝ち抜ける濃厚めりはり顔だと思う。コメディに親近性があり目を見開くとそれだけで楽しかった。

加えてエレガントなマーガレットクアリーと白湯なビーニーフェルドスタインが出ていて、コーエン兄弟監督、と思いきや、兄弟ではなく弟イーサンだけでつくった映画とのこと。

コケているわけではないが、コーエン兄弟の歴々たる品質と比べると、それなりに評価はおとした。

イーサンコーエン監督は、ラスメイヤーのFaster, Pussycat! Kill! Kill!(1965)やジョンウォーターズなどのエクスプロイテーション映画からインスピレーションを得たと語っていて、ニッチとレトロとキッチュと太テンションなトーンで映画は進む。

批評家たちの評を簡単にまとめると、筋書きと演出は不安定だが、クアリーとヴィスワナサンがじょうずなので、両論相対するところに落ち着いた、という感じ。imdb5.5、RottenTomatoes63%と36%。

おおよその評価どおり、明らかに騒々しいエネルギーがあり、ふたり(クアリーとヴィスワナサン)は魅力的だが、正直さほど面白くはなかった。w

コーエン兄弟の特徴は常駐する恐怖感と、強烈な濃度のスリラーorコメディだが、ここでは濃度を性欲へ振っていて、ユーモアや不条理は子供っぽい。B級映画へのトリビュート色が強い映画だったように思う。

とはいえマーガレットクアリーの強テキサス訛りとふしだら演技は巧かった。ここのクアリーはワンスアポンアタイムインハリウッド(2019)で彼女が演じた明るく向こう見ずな蓮っ葉女を彷彿とさせる。愛らしく淫奔だが、ちっとも色気がなかった。w

追跡ロードトリップになっているが、スリラーが怖くないのでコメディもあまり跳ねない。盛ったセリフが多く、つねに跳ねようとするキャラクターだが、遊び心が脚本家の目当てよりも遊ばなかった。それでも役者たちはそれぞれの魅力を発揮するし、短尺も救いだった。

ジャームッシュのThe Dead Don't Die(2019)のレビューに「はじめてコケたジャームッシュの映画」と書いたが、この映画はあの脱力と似ている。The Dead Don't Dieはジャームッシュの空気感を知っているならそれなりに楽しめる。これも70年代辺りのB級映画の素養があれば楽しめたのだと思う。

兄ジョエルだけでつくったのがAppleTV+のThe Tragedy of Macbeth(2021)であり、弟イーサンだけでつくったのが本作ということになる。
かえりみて、片方がいないと片方がいないなりの映画になっていることは、興味深かった。たわむれに兄弟(コンビ)で映画をつくってきたわけではないことが解るからだ。

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津次郎