「予想外のおもしろさだった」ランド・オブ・バッド LukeRacewalkerさんの映画レビュー(感想・評価)
予想外のおもしろさだった
ラッセル・クロウのビヤ樽のような腹には驚いたが、まぁ一般的なアメリカ人中高年の立ち姿だと思えば。
フィリピンの奥地でイスラム過激派に武器を売るロシア系武器商人。これを内偵していたCIA工作員が囚われた。その救出に向かう米軍特殊部隊のチームに、歴戦の猛者に交じって「空軍野郎」とイジられるちょっとオタクな、実戦経験のないキニー軍曹がJTAC(統合末端攻撃統制官)として参加している。
JTACとは、特定の軍種に限定された所属ではなく、資格を持つ軍人のことを指す。この資格は、地上部隊の一員として、前線で航空機による爆撃や攻撃を正確に誘導し、味方への誤爆を防ぐ役割を担う。
特に現代戦では、戦闘機や爆撃機以前に大型ドローンが主要な役割を持っているが、ラッセル・クロウはまさにそのドローンの操縦桿をラスベガスの空軍基地の一角で握っているエディ大尉。
この南海のジャングルとラスベガスを結ぶやり取りが極めておもしろい。
絶対的な危機に陥っていく救出チームと、どこか危機感のない官僚的なラスベガスの上官。かつてそういう上官や組織と衝突したがために出世できていないエディは、相棒の女性軍曹とともに知恵を絞り、時に上官の命令を無視しながらキニーをはじめ救出チームを何とか助けようとする・・・。
非常に良くできた脚本である。
また、前線のチームが死に瀕していくギリギリの状況と、シフトを外されて何も知らないエディがビーガンの妻のためにのんびりとスーパーで買い物するシーンの重層的なプロットは、見事としか言いようがない。
そして、当初は「コイツ、一番最初に死んじゃうんじゃないか?」とさえ思えたキニーがどんどん逞しくなっていく。その見せ方が巧みである。
脇役フェチの小生が魅入られたのは、なんと言っても歴戦のベテラン、“シュガー“だ。最初はお約束通りにキニーを小僧扱いし、イジり、コケにするが、死地でもっとも頼りになる男であり、最後に生還への突破口を開いてくれる。
そのシュガーの象徴的なセリフがある。
「電池も切れて電波も入らなきゃ、最後は生身の人間の戦いだ」(要旨)
そしてストーリーはまさにその通りになる。
もちろん、最新の恐るべきリモート戦の裏側を垣間見られるのもおもしろい。
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ちなみに、実話として、アフガニスタンなどの山岳に潜むテロリストの拠点を攻撃していた米軍のドローン操縦基地はアラスカにあったようだが、ドローン操縦官たちにメンタル不調が多発したらしい。
サラリーマン然として朝クルマで基地に出勤し、TVゲームのようにディスプレイを見ながら敵を殲滅し、夕方またクルマを運転して帰宅し家族と幸せな夕食を共にする。
その繰り返しは、確かに兵士としての身の安全は保証されるが、やがてみずからの行為の異常さに無意識のうちに精神が蝕まれていった、ということらしい。